1,102 / 1,561
1101.朝の時間
しばらくクスクスと笑い合った後、ハルはふと笑顔を消すとそーっと手を伸ばしてきた。
ん?なんだろうと思いながらもその手の行く先をじっと見つめていると、ハルの手は俺の頬をするりと撫でた。
「アキトは…ちゃんとここにいるよね?」
まるで確かめるように何度も何度も優しく頬を撫でられながら、俺はこくりと頷いた。
「うん、ちゃんとここにいるよ」
「…そっか。夢じゃなくて、本当に良かった」
くしゃりと笑いながらポツリと告げられた切なげなその言葉に、たまらない気持ちになった。
本当にいっぱいいっぱい心配させちゃったんだな。あの時もう少し早く扉の罠に気付けてたらと、思わずにはいられない。
「うん、夢なんかじゃないよ。ちゃんとハルが助けに来てくれたでしょ?」
「うーん、助けに行ったというよりも、迎えに行っただけって感じだったけどね…」
苦笑しながら脱出も移動も皆で出来てたんだしと続けたハルの言葉に、俺はふるふると左右に首を振った。
たしかに盗賊団のアジトから抜け出せたのはシュリくんのおかげだし、その後の森の中の移動ではキースくんがその豊富な知識を使って案内をしてくれた。
盗賊団のアジトからの脱出にしては、目立った問題も無かった。でもさ、やっぱりずっと不安はあったんだよね。
いざとなったら人が相手でも戦う覚悟っていうのは決めてはいたけど、それでもどこかで緊張はしてた。
ハルが迎えに来てくれたって分かったあの時の、あの安心感はすごかった。もう大丈夫だって素直にそう思ったからね。
「ハルがわざわざ迎えに来てくれて、俺はすごく嬉しかったよ?」
「…そう?」
「うん。すっごく緊張してたし不安もあったけど、ハルの顔を見たらもう大丈夫だって思えたからね」
「…それなら迎えに行けて良かったな」
やっとふわりといつも通りの優しい笑みを浮かべてくれたハルの頭を優しく撫でていると、不意に大きなお腹の音が部屋の中に響いた。
これは俺のお腹の音じゃなくて、ハルのお腹の音だ。
「…う…ごめん」
しょんぼりとしたハルの謝罪に、俺は笑いながら答えた。
「いやいや、別に謝る必要はないよー長い間寝たし、お腹空いたよね」
「あー…出来る事ならこのままアキトと二度寝したかったんだけどな…」
絶対に幸せな時間だったのにと寂し気につぶやいたハルに、俺は笑顔で答えた。
「一緒にご飯食べてから、二人でのんびりすれば良いんじゃない?」
「うん、それもそうだね」
「じゃあ起きよっか」
ひょいっとベッドから起き上がってから振り返ると、ハルはまだベッドに転がったまま悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。やっぱり二度寝がしたいなーと言いながら、名残惜しそうにベッドに寝転がっている。
「ほら、起きてー」
そう声をかければしぶしぶ伸ばされたハルの手をくいっと引っ張って、何とかベッドから立ち上がらせる。
こういうのって、いつもならどちらかというと俺がされる側だからかなり珍しい事だ。
でもハルになら、こうやって甘えられるのも嬉しいんだよね。
何とかその場に立ち上がってくれたハルに良い子と声をかけてから、俺は自分とハルの全身にささっと浄化魔法をかけた。
昨日も部屋に戻ってくるなり浄化魔法はかけたんだけどね。これはもうすっかり習慣になってるからいつもの事だ。
いやいやながらも用意をされてるって様子なのに、律儀に今日もありがとうとお礼を言ってくれるハルの矛盾した行動にちょっとだけ笑ってしまった。
全身を浄化魔法で綺麗にしたら、次はぴょこっとはねている寝ぐせのついたハルの髪の毛に取り掛かる。とはいっても魔導収納鞄から取り出した愛用のブラシで、優しく優しく撫でつけていくだけなんだけど。そこまで頑固な寝ぐせじゃなかったのか、すぐにいつものハルの髪型に戻った。
「よし、髪の毛も終わったよー」
そう声をかければ、ハルは嬉しそうな笑顔でニコニコと俺を見つめていた。世話をやかれて嬉しいって思ってる顔だね。まあそんな事を考えてる俺も、たぶんお世話をさせてもらえて嬉しいーって顔をしてるんだと思うけど。
「うん、今日も格好良いよ、ハル」
「それはありがとう」
ふふと笑ったハルは、今度は俺の番だねと言いながら丁寧に俺の髪の毛を梳かしてくれた。
二人で揃ってパジャマ代わりの服から私服へと着替れば、これで部屋から出る準備は万端だ。
「よし、それじゃあ行こっか」
「うん、行こう」
さっと片手を差し出せば、嬉しそうにはにかんだハルの手がきゅっと握り返してくれた。
ん?なんだろうと思いながらもその手の行く先をじっと見つめていると、ハルの手は俺の頬をするりと撫でた。
「アキトは…ちゃんとここにいるよね?」
まるで確かめるように何度も何度も優しく頬を撫でられながら、俺はこくりと頷いた。
「うん、ちゃんとここにいるよ」
「…そっか。夢じゃなくて、本当に良かった」
くしゃりと笑いながらポツリと告げられた切なげなその言葉に、たまらない気持ちになった。
本当にいっぱいいっぱい心配させちゃったんだな。あの時もう少し早く扉の罠に気付けてたらと、思わずにはいられない。
「うん、夢なんかじゃないよ。ちゃんとハルが助けに来てくれたでしょ?」
「うーん、助けに行ったというよりも、迎えに行っただけって感じだったけどね…」
苦笑しながら脱出も移動も皆で出来てたんだしと続けたハルの言葉に、俺はふるふると左右に首を振った。
たしかに盗賊団のアジトから抜け出せたのはシュリくんのおかげだし、その後の森の中の移動ではキースくんがその豊富な知識を使って案内をしてくれた。
盗賊団のアジトからの脱出にしては、目立った問題も無かった。でもさ、やっぱりずっと不安はあったんだよね。
いざとなったら人が相手でも戦う覚悟っていうのは決めてはいたけど、それでもどこかで緊張はしてた。
ハルが迎えに来てくれたって分かったあの時の、あの安心感はすごかった。もう大丈夫だって素直にそう思ったからね。
「ハルがわざわざ迎えに来てくれて、俺はすごく嬉しかったよ?」
「…そう?」
「うん。すっごく緊張してたし不安もあったけど、ハルの顔を見たらもう大丈夫だって思えたからね」
「…それなら迎えに行けて良かったな」
やっとふわりといつも通りの優しい笑みを浮かべてくれたハルの頭を優しく撫でていると、不意に大きなお腹の音が部屋の中に響いた。
これは俺のお腹の音じゃなくて、ハルのお腹の音だ。
「…う…ごめん」
しょんぼりとしたハルの謝罪に、俺は笑いながら答えた。
「いやいや、別に謝る必要はないよー長い間寝たし、お腹空いたよね」
「あー…出来る事ならこのままアキトと二度寝したかったんだけどな…」
絶対に幸せな時間だったのにと寂し気につぶやいたハルに、俺は笑顔で答えた。
「一緒にご飯食べてから、二人でのんびりすれば良いんじゃない?」
「うん、それもそうだね」
「じゃあ起きよっか」
ひょいっとベッドから起き上がってから振り返ると、ハルはまだベッドに転がったまま悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。やっぱり二度寝がしたいなーと言いながら、名残惜しそうにベッドに寝転がっている。
「ほら、起きてー」
そう声をかければしぶしぶ伸ばされたハルの手をくいっと引っ張って、何とかベッドから立ち上がらせる。
こういうのって、いつもならどちらかというと俺がされる側だからかなり珍しい事だ。
でもハルになら、こうやって甘えられるのも嬉しいんだよね。
何とかその場に立ち上がってくれたハルに良い子と声をかけてから、俺は自分とハルの全身にささっと浄化魔法をかけた。
昨日も部屋に戻ってくるなり浄化魔法はかけたんだけどね。これはもうすっかり習慣になってるからいつもの事だ。
いやいやながらも用意をされてるって様子なのに、律儀に今日もありがとうとお礼を言ってくれるハルの矛盾した行動にちょっとだけ笑ってしまった。
全身を浄化魔法で綺麗にしたら、次はぴょこっとはねている寝ぐせのついたハルの髪の毛に取り掛かる。とはいっても魔導収納鞄から取り出した愛用のブラシで、優しく優しく撫でつけていくだけなんだけど。そこまで頑固な寝ぐせじゃなかったのか、すぐにいつものハルの髪型に戻った。
「よし、髪の毛も終わったよー」
そう声をかければ、ハルは嬉しそうな笑顔でニコニコと俺を見つめていた。世話をやかれて嬉しいって思ってる顔だね。まあそんな事を考えてる俺も、たぶんお世話をさせてもらえて嬉しいーって顔をしてるんだと思うけど。
「うん、今日も格好良いよ、ハル」
「それはありがとう」
ふふと笑ったハルは、今度は俺の番だねと言いながら丁寧に俺の髪の毛を梳かしてくれた。
二人で揃ってパジャマ代わりの服から私服へと着替れば、これで部屋から出る準備は万端だ。
「よし、それじゃあ行こっか」
「うん、行こう」
さっと片手を差し出せば、嬉しそうにはにかんだハルの手がきゅっと握り返してくれた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。