1,103 / 1,561
1102.メイドさんの情報
手を繋いだまま自分たちの部屋を出て、二人でゆっくりと長い廊下を歩いて行く。
「とりあえず、まずは応接室に行ってみようか」
「うん、そうだね」
そんな会話をしながらのんびりと歩いていると、角を曲がった所で何かを両手に抱えたメイドさんと出くわした。あ、昨日の食事会で、楽器を弾いて聞かせてくれたメイドさんの一人だ。
メイドさんは驚いた様子で一瞬だけ目を大きくしたけれど、次の瞬間にはさっと立ち止まって俺達に笑みを向けた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
爽やかな笑顔での挨拶に、俺とハルもにっこりと笑顔で答える。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶を済ませた所で、ハルはメイドさんが手に抱えていたものをちらりと見た。それだけの仕草で、メイドさんはハッとした様子で口を開いた。
「失礼しました。執事長ボルトからこちらを通る許可は得ておりますが…今は表の廊下の方が早く着きますので」
「いや、それは別に問題は無いし責めるつもりも無いんだが…単純に荷物を持って表を歩くのは珍しいから、何かあったのかな?と思っただけだよ」
メイドさんを安心させるような優しい声で、ハルはそう尋ねた。
ああ、そうか。そういえば表の廊下では、荷物を持った使用人さんとはすれ違った事が無いな。逆にハルの早朝訓練を見に行く時に通った裏の廊下では、荷物を抱えた使用人さんもたくさん見た気がする。
そっか、普段は表と裏でそうやって使いわけてるんだなーと納得していると、メイドさんが口を開いた。
「盗賊団のアジトに向かっていた方たちが、本日の明け方に帰って来られたんです。現在は所属・身分を問わず、全員の方に騎士団本部で休んで頂いています」
こちらは皆様の衣服を用意したものなんですと、メイドさんは控え目にそう教えてくれた。
え、探索隊のみんな、もう帰って来てるんだ。盗賊団のアジトに向かうって言ってたから、てっきりもっと時間がかかるのかと思ってた。
当たり前だけど、盗賊団と戦闘になったって事――だよね。全員無事なのかがすごく気になるけど、今はハルとメイドさんが話してるからな。いきなり会話に割り込んで邪魔をするのも嫌だし。
俺が聞くタイミングを伺っている間に、真剣な表情のハルがメイドさんに尋ねた。
「そうなのか。思ったよりも早かったな。こちらに被害があったという報告は?」
さすが、ハル。こんな時も頼りになるね。
今一番気になる事を、聞いてくれてありがとう。そう心の中だけでハルに感謝しながら、俺は静かにメイドさんの返答を待った。
「いえ、こちらには目立った被害は無かったと聞いています」
そっか、目立った被害は無かったんだ。それは本当に良かった。
もしかしたら回復ポーションを使うとかはしたのかもしれないけど、少なくとも全員今は元気だって事だよね。俺とキースくんのために志願してくれた人たちだから、心配だったんだよね。
思わずふーっと安堵の息を吐いたら、俺とハルの動きがぴったり重なったよね。ハルもやっぱりずっとみんなの事を心配してたんだな。
そんな俺達を微笑ましそうに見つめていたメイドさんは、優しい声で続けた。
「詳しくお知らせしたい所なんですが、私もあまり詳細までは聞けていないんです。今の時間なら領主様の執務室に執事長が詰めている筈ですので、詳細についてはそちらで聞いて頂けると助かります」
知らないんですで終わらせずに、執事長が知ってるからという情報と、さらに居場所まで教えてくれるこのメイドさんは仕事のできる人だな。
いや、まあここの使用人さんに、仕事ができない人なんていないのかもしれないけど。
「分かった。教えてくれてありがとう」
「情報、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」
すっと見惚れるほどの綺麗な礼をしてくれたメイドさんを見送った後、俺とハルは二人で顔を見合わせた。
「アキト、これからどうしよっか?」
言葉は質問だけど、俺の答えはある程度分かってるって顔だね。
「俺は予定変更してケイリーさんの執務室に向かいたいんだけど、ハルは?」
「うん、俺も同じ意見だよ。被害がないって聞いても、やっぱり気にはなるからね」
「それじゃあお腹は空いてるけど、まずは執務室だね」
「ああ、そうしよう」
どうせ今の状況で、のんびり朝食を楽しむなんてできないだろうし。
「とりあえず、まずは応接室に行ってみようか」
「うん、そうだね」
そんな会話をしながらのんびりと歩いていると、角を曲がった所で何かを両手に抱えたメイドさんと出くわした。あ、昨日の食事会で、楽器を弾いて聞かせてくれたメイドさんの一人だ。
メイドさんは驚いた様子で一瞬だけ目を大きくしたけれど、次の瞬間にはさっと立ち止まって俺達に笑みを向けた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
爽やかな笑顔での挨拶に、俺とハルもにっこりと笑顔で答える。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶を済ませた所で、ハルはメイドさんが手に抱えていたものをちらりと見た。それだけの仕草で、メイドさんはハッとした様子で口を開いた。
「失礼しました。執事長ボルトからこちらを通る許可は得ておりますが…今は表の廊下の方が早く着きますので」
「いや、それは別に問題は無いし責めるつもりも無いんだが…単純に荷物を持って表を歩くのは珍しいから、何かあったのかな?と思っただけだよ」
メイドさんを安心させるような優しい声で、ハルはそう尋ねた。
ああ、そうか。そういえば表の廊下では、荷物を持った使用人さんとはすれ違った事が無いな。逆にハルの早朝訓練を見に行く時に通った裏の廊下では、荷物を抱えた使用人さんもたくさん見た気がする。
そっか、普段は表と裏でそうやって使いわけてるんだなーと納得していると、メイドさんが口を開いた。
「盗賊団のアジトに向かっていた方たちが、本日の明け方に帰って来られたんです。現在は所属・身分を問わず、全員の方に騎士団本部で休んで頂いています」
こちらは皆様の衣服を用意したものなんですと、メイドさんは控え目にそう教えてくれた。
え、探索隊のみんな、もう帰って来てるんだ。盗賊団のアジトに向かうって言ってたから、てっきりもっと時間がかかるのかと思ってた。
当たり前だけど、盗賊団と戦闘になったって事――だよね。全員無事なのかがすごく気になるけど、今はハルとメイドさんが話してるからな。いきなり会話に割り込んで邪魔をするのも嫌だし。
俺が聞くタイミングを伺っている間に、真剣な表情のハルがメイドさんに尋ねた。
「そうなのか。思ったよりも早かったな。こちらに被害があったという報告は?」
さすが、ハル。こんな時も頼りになるね。
今一番気になる事を、聞いてくれてありがとう。そう心の中だけでハルに感謝しながら、俺は静かにメイドさんの返答を待った。
「いえ、こちらには目立った被害は無かったと聞いています」
そっか、目立った被害は無かったんだ。それは本当に良かった。
もしかしたら回復ポーションを使うとかはしたのかもしれないけど、少なくとも全員今は元気だって事だよね。俺とキースくんのために志願してくれた人たちだから、心配だったんだよね。
思わずふーっと安堵の息を吐いたら、俺とハルの動きがぴったり重なったよね。ハルもやっぱりずっとみんなの事を心配してたんだな。
そんな俺達を微笑ましそうに見つめていたメイドさんは、優しい声で続けた。
「詳しくお知らせしたい所なんですが、私もあまり詳細までは聞けていないんです。今の時間なら領主様の執務室に執事長が詰めている筈ですので、詳細についてはそちらで聞いて頂けると助かります」
知らないんですで終わらせずに、執事長が知ってるからという情報と、さらに居場所まで教えてくれるこのメイドさんは仕事のできる人だな。
いや、まあここの使用人さんに、仕事ができない人なんていないのかもしれないけど。
「分かった。教えてくれてありがとう」
「情報、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」
すっと見惚れるほどの綺麗な礼をしてくれたメイドさんを見送った後、俺とハルは二人で顔を見合わせた。
「アキト、これからどうしよっか?」
言葉は質問だけど、俺の答えはある程度分かってるって顔だね。
「俺は予定変更してケイリーさんの執務室に向かいたいんだけど、ハルは?」
「うん、俺も同じ意見だよ。被害がないって聞いても、やっぱり気にはなるからね」
「それじゃあお腹は空いてるけど、まずは執務室だね」
「ああ、そうしよう」
どうせ今の状況で、のんびり朝食を楽しむなんてできないだろうし。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。