生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1102.メイドさんの情報

 手を繋いだまま自分たちの部屋を出て、二人でゆっくりと長い廊下を歩いて行く。

「とりあえず、まずは応接室に行ってみようか」
「うん、そうだね」

 そんな会話をしながらのんびりと歩いていると、角を曲がった所で何かを両手に抱えたメイドさんと出くわした。あ、昨日の食事会で、楽器を弾いて聞かせてくれたメイドさんの一人だ。

 メイドさんは驚いた様子で一瞬だけ目を大きくしたけれど、次の瞬間にはさっと立ち止まって俺達に笑みを向けた。

「ハロルド様、アキト様、おはようございます」

 爽やかな笑顔での挨拶に、俺とハルもにっこりと笑顔で答える。

「おはよう」
「おはようございます」

 挨拶を済ませた所で、ハルはメイドさんが手に抱えていたものをちらりと見た。それだけの仕草で、メイドさんはハッとした様子で口を開いた。

「失礼しました。執事長ボルトからこちらを通る許可は得ておりますが…今は表の廊下の方が早く着きますので」
「いや、それは別に問題は無いし責めるつもりも無いんだが…単純に荷物を持って表を歩くのは珍しいから、何かあったのかな?と思っただけだよ」

 メイドさんを安心させるような優しい声で、ハルはそう尋ねた。

 ああ、そうか。そういえば表の廊下では、荷物を持った使用人さんとはすれ違った事が無いな。逆にハルの早朝訓練を見に行く時に通った裏の廊下では、荷物を抱えた使用人さんもたくさん見た気がする。

 そっか、普段は表と裏でそうやって使いわけてるんだなーと納得していると、メイドさんが口を開いた。

「盗賊団のアジトに向かっていた方たちが、本日の明け方に帰って来られたんです。現在は所属・身分を問わず、全員の方に騎士団本部で休んで頂いています」

 こちらは皆様の衣服を用意したものなんですと、メイドさんは控え目にそう教えてくれた。

 え、探索隊のみんな、もう帰って来てるんだ。盗賊団のアジトに向かうって言ってたから、てっきりもっと時間がかかるのかと思ってた。

 当たり前だけど、盗賊団と戦闘になったって事――だよね。全員無事なのかがすごく気になるけど、今はハルとメイドさんが話してるからな。いきなり会話に割り込んで邪魔をするのも嫌だし。

 俺が聞くタイミングを伺っている間に、真剣な表情のハルがメイドさんに尋ねた。

「そうなのか。思ったよりも早かったな。こちらに被害があったという報告は?」

 さすが、ハル。こんな時も頼りになるね。

 今一番気になる事を、聞いてくれてありがとう。そう心の中だけでハルに感謝しながら、俺は静かにメイドさんの返答を待った。

「いえ、こちらには目立った被害は無かったと聞いています」

 そっか、目立った被害は無かったんだ。それは本当に良かった。

 もしかしたら回復ポーションを使うとかはしたのかもしれないけど、少なくとも全員今は元気だって事だよね。俺とキースくんのために志願してくれた人たちだから、心配だったんだよね。

 思わずふーっと安堵の息を吐いたら、俺とハルの動きがぴったり重なったよね。ハルもやっぱりずっとみんなの事を心配してたんだな。

 そんな俺達を微笑ましそうに見つめていたメイドさんは、優しい声で続けた。

「詳しくお知らせしたい所なんですが、私もあまり詳細までは聞けていないんです。今の時間なら領主様の執務室に執事長が詰めている筈ですので、詳細についてはそちらで聞いて頂けると助かります」

 知らないんですで終わらせずに、執事長が知ってるからという情報と、さらに居場所まで教えてくれるこのメイドさんは仕事のできる人だな。

 いや、まあここの使用人さんに、仕事ができない人なんていないのかもしれないけど。

「分かった。教えてくれてありがとう」
「情報、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」

 すっと見惚れるほどの綺麗な礼をしてくれたメイドさんを見送った後、俺とハルは二人で顔を見合わせた。

「アキト、これからどうしよっか?」

 言葉は質問だけど、俺の答えはある程度分かってるって顔だね。

「俺は予定変更してケイリーさんの執務室に向かいたいんだけど、ハルは?」
「うん、俺も同じ意見だよ。被害がないって聞いても、やっぱり気にはなるからね」
「それじゃあお腹は空いてるけど、まずは執務室だね」
「ああ、そうしよう」

 どうせ今の状況で、のんびり朝食を楽しむなんてできないだろうし。
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