生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1103.執務室

 予定を変更して向かったケイリーさんの執務室の前には、まるで門番のように体格の良い二人の侍従さんが並んで立っていた。

 俺でも分かるぐらいに明らかに強そうなその侍従さんたちは、遠くから見ただけでも圧倒的な存在感を放っている。

 もし二人の事を何も知らなかったら、ちょっとは怯んでいたかもしれないぐらいの迫力だな。まあ昨日の使用人さんたちとの食事会のおかげで、俺も全然怯まずに済んだんだけどね。

 実はこの二人、昨日の食事会の最中にそれぞれの好物である肉料理と魚料理について、真っ向から意見を交わしていた人たちなんだよね。

 それぞれが肉料理と魚料理の良さを、語彙力をフル活用して主張し合うのがすっごく面白かったから印象に残ってるんだ。その主張っていうのも喧嘩?とか揉めてるのかな?とか思うような雰囲気じゃなくて、お互いに説得してやるって言葉を駆使して議論してるって感じだった。

 なかなか白熱したその会話を聞いてるうちに、周りの人たちも俺はどちらかというと肉料理が…とか、私は魚料理の方が…とか便乗し始めたりしてね。それはもう盛り上がったんだ。

 ちなみに両方好きな俺は議論には不参加だったけど、ハルは嬉しそうにいそいそと肉料理の方に参加してたよ。ハルは肉料理大好きだから、そうすると思ってた。

 これはもう収拾がつかないんじゃないかなーと思ったけど、最終的にはラスさんの一言が決め手になったんだ。

「どっちの料理にも一切手は抜いてない。どっちも美味いから食べてみろ」

 そう言い放ったラスさんが、肉料理好きな侍従さんの前に魚料理を、魚料理好きな侍従さんの前に肉料理を出したんだ。

 二人が確かにこれも美味いなと感想を言って落ち着いた時には、さすがラスさんだってその場にいた全員が褒め称えたよね

 そんな経緯があったから、見た目に反してっていうと失礼かもしれないけど、俺の中では魚料理と肉料理が好きな面白い人たちってイメージが定着してる。

 笑顔で近づいていく俺とハルに気が付くと、二人は柔らかい笑顔で口を開いた。

「「おはようございます」」
「ああ、おはよう」

 ハルが答える横から、俺も挨拶を返す。

「おはようございます」
「お二人は…領主様にご用でしょうか?今はこちらにはご不在なのですが…」

 申し訳なさそうにそう教えてくれた侍従さんの言葉に、ハルはいいやと首を振った。

「さっきたまたま出逢ったメイドから探索隊が帰ってきたと聞いたんだ。詳細を聞きたくてボルトに会いに来たんだが…」
「ああ、そうでしたか」

 ボルトはここにいるかな?と続けたハルに二人はホッとした様子ですぐにはいと頷いてくれた。

「執事長なら中におりますので、どうぞお入りください」

 笑顔を見せてくれた侍従さんがわざわざドアまで開けてくれたのにお礼を言ってから、俺とハルは執務室の中へと足を踏み入れた。



「ハロルド様、アキト様、おはようございます」

 部屋に入ると両手に書類を抱えたボルトさんは、流れるような礼と共にそう声をかけてくれた。

「おはよう、ボルト」
「ボルトさん、おはようございます」

 俺達が何の用事で来たのかを説明するよりも前に、ボルトさんはにっこりと笑顔で続けた。

「探索隊が帰って来たと聞いて、詳細を確認しに来られたんでしょうか?」
「ああ、そうだ。廊下で服を抱えたメイドとすれ違ってな」
「そうでしたか」

 ボルトさんはこちらへどうぞと部屋の窓際にあるテーブルへと、俺達を案内してくれた。勧められるままに腰を下ろせば、それでは報告をしましょうとすぐに口を開いた。

「本日の明け方に、キース様とアキト様の探索隊、及び牙蛇盗賊団の殲滅隊のみなさまが帰還されました」

 俺達の探索隊はともかく、牙蛇盗賊団の殲滅隊って改めて聞くとかなりすごい言葉だよね。

「こちらの被害は無かったと聞いたが…」
「はい。大きな怪我を負った者はおりません。狭い場所での戦闘だったためかすり傷程度のものはおりましたが、そちらもキース様とアキト様が気にされるかとポーションで回復済みです」

 安心してくださいねと言いたげなボルトさんの言葉に、俺はふうと息を吐いた。

「そうか、それは良かった。捕虜は?」
「捕虜もしっかりと確保されていましたよ。それにあれこれと盗難品も回収して来てくださったので…今は商業ギルドの鑑定魔法士が来て鑑定中です」

 なんでもケイリーさんは、そちらの鑑定に立ち会うために不在になっているらしい。
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