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1115.【ハル視点】メイドと遭遇
手を繋いだまま自分たちの部屋を出た俺達は、二人でゆっくりと長い廊下を歩き出した。空腹ではあるんだが、別にこの後にずらせない予定があるわけでもないからな。
すこしでも長くアキトと手を繋いでいたいからとは、さすがに言葉にはできないな。
「とりあえず、まずは応接室に行ってみようか」
「うん、そうだね」
そんな会話をしながらのんびりと歩いていると、角を曲がった所で何かを両手に抱えた一人のメイドと出くわした。昨日の食事会でアキトに楽器を弾いて聞かせていた、メイドのトルーサだな。
トルーサは驚いた様子で一瞬だけ目を大きく見開いたが、次の瞬間にはさっと立ち止まって俺達に笑みを向けてきた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
爽やかな笑顔での挨拶に、アキトと俺もにっこりと笑顔で答える。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶を済ませた所で、俺はメイドが手に抱えているものをちらりと見た。それだけの仕草で、メイドはハッとした様子で口を開いた。
「失礼しました。執事長ボルトからこちらを通る許可は得ておりますが…今は表の廊下の方が早く着きますので」
「いや、それは別に問題は無いし責めるつもりも無いんだが…」
うちのメイドが何の理由も無く、表の廊下を使って荷物を移動させる事はないと俺は知っているからな。もし許可が無かったとしても、咎めるつもりはかけらも無い。
「単純に荷物を持って表を歩くのは珍しいから、何かあったのかな?と思っただけだよ」
安心させるために優しい声を意識しながら、俺はそう言葉を続けた。
「盗賊団のアジトに向かっていた方たちが、本日の明け方に帰って来られたんです。現在は所属・身分を問わず、全員の方に騎士団本部で休んで頂いています」
こちらは皆様の衣服を用意したものなんですと、メイドのトルーサは控え目にそう教えてくれた。
そうか、もう帰ってきたのか。
あまりに早い探索隊改め殲滅隊の帰還にアキトは驚いているようだが、俺はこうなるかもなとは薄々感じていた。
あのままの勢いで怒りをぶつけにいったなら、盗賊団のアジトでもそう苦戦しないだろうとは予想ができていたからな。ただ、そう考えていた俺でも驚いてしまうぐらいには、想像以上に早かったわけだが。
そうだ。トルーサが知っているかどうかは賭けだが、ひとまずアキトが一番気になるだろう事だけでも聞いてみるか。
「そうなのか。思ったよりも早かったな。こちらに被害があったという報告は?」
「いえ、こちらには目立った被害は無かったと聞いています」
すぐにそう答えてくれたトルーサのおかげで、どうやらアキトの不安も軽減されたようだ。少しだけ笑みが戻ってきている。
良かった。
盗賊ごときを相手にして、命にかかわるような怪我はきっとしない。そう思えるぐらい強いメンバーしかいなかったとはいえ、そこに魔物の襲撃でもあれば話しが変わってくるからな。
思わずふーっと安堵の息を吐いたら、アキトと俺の動きがぴったりと重なった。
そんな俺達を微笑ましそうに見つめていたメイドのトルーサは、優しい声で続けた。
「詳しくお知らせしたい所なんですが、私もあまり詳細までは聞けていないんです。今の時間なら領主様の執務室に執事長が詰めている筈ですので、詳細についてはそちらで聞いて頂けると助かります」
知らないんですで終わらせずに、執事長が知ってるからという情報と、さらに居場所まで教えてくれるあたり、さすがトルーサだな。次期メイド長に推薦したいと、現メイド長から言われるだけの事はある。
「分かった。教えてくれてありがとう」
「情報、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」
丁寧な礼をして速足で去っていくトルーサを見送った後、アキトと俺は二人で顔を見合わせた。
「アキト、これからどうしよっか?」
まあ答えは分かっているんだけどな。ここで被害が無いなら先にご飯食べよーなんて言うアキトは、想像もできないし。
「俺は予定変更してケイリーさんの執務室に向かいたいんだけど、ハルは?」
そう言いつつ、アキトは少しだけ心配そうに俺の腹をちらりと見た。お腹減ってるけど大丈夫かなとか思われてるんだろうな。あの時腹の音を鳴らしてしまったばっかりに。
俺はあえて視線になど全く気づいていませんという顔をして、笑顔で答えた。
「うん、俺も同じ意見だよ。被害がないって聞いても、やっぱり気にはなるからね」
「それじゃあお腹は空いてるけど、まずは執務室だね」
アキトは自分もお腹は空いてるけど、という言い方で話してくれるんだな。こういう所にまで気づかいが詰まっているんだなと感心しながら、俺は口を開いた。
「ああ、そうしよう」
すこしでも長くアキトと手を繋いでいたいからとは、さすがに言葉にはできないな。
「とりあえず、まずは応接室に行ってみようか」
「うん、そうだね」
そんな会話をしながらのんびりと歩いていると、角を曲がった所で何かを両手に抱えた一人のメイドと出くわした。昨日の食事会でアキトに楽器を弾いて聞かせていた、メイドのトルーサだな。
トルーサは驚いた様子で一瞬だけ目を大きく見開いたが、次の瞬間にはさっと立ち止まって俺達に笑みを向けてきた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
爽やかな笑顔での挨拶に、アキトと俺もにっこりと笑顔で答える。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶を済ませた所で、俺はメイドが手に抱えているものをちらりと見た。それだけの仕草で、メイドはハッとした様子で口を開いた。
「失礼しました。執事長ボルトからこちらを通る許可は得ておりますが…今は表の廊下の方が早く着きますので」
「いや、それは別に問題は無いし責めるつもりも無いんだが…」
うちのメイドが何の理由も無く、表の廊下を使って荷物を移動させる事はないと俺は知っているからな。もし許可が無かったとしても、咎めるつもりはかけらも無い。
「単純に荷物を持って表を歩くのは珍しいから、何かあったのかな?と思っただけだよ」
安心させるために優しい声を意識しながら、俺はそう言葉を続けた。
「盗賊団のアジトに向かっていた方たちが、本日の明け方に帰って来られたんです。現在は所属・身分を問わず、全員の方に騎士団本部で休んで頂いています」
こちらは皆様の衣服を用意したものなんですと、メイドのトルーサは控え目にそう教えてくれた。
そうか、もう帰ってきたのか。
あまりに早い探索隊改め殲滅隊の帰還にアキトは驚いているようだが、俺はこうなるかもなとは薄々感じていた。
あのままの勢いで怒りをぶつけにいったなら、盗賊団のアジトでもそう苦戦しないだろうとは予想ができていたからな。ただ、そう考えていた俺でも驚いてしまうぐらいには、想像以上に早かったわけだが。
そうだ。トルーサが知っているかどうかは賭けだが、ひとまずアキトが一番気になるだろう事だけでも聞いてみるか。
「そうなのか。思ったよりも早かったな。こちらに被害があったという報告は?」
「いえ、こちらには目立った被害は無かったと聞いています」
すぐにそう答えてくれたトルーサのおかげで、どうやらアキトの不安も軽減されたようだ。少しだけ笑みが戻ってきている。
良かった。
盗賊ごときを相手にして、命にかかわるような怪我はきっとしない。そう思えるぐらい強いメンバーしかいなかったとはいえ、そこに魔物の襲撃でもあれば話しが変わってくるからな。
思わずふーっと安堵の息を吐いたら、アキトと俺の動きがぴったりと重なった。
そんな俺達を微笑ましそうに見つめていたメイドのトルーサは、優しい声で続けた。
「詳しくお知らせしたい所なんですが、私もあまり詳細までは聞けていないんです。今の時間なら領主様の執務室に執事長が詰めている筈ですので、詳細についてはそちらで聞いて頂けると助かります」
知らないんですで終わらせずに、執事長が知ってるからという情報と、さらに居場所まで教えてくれるあたり、さすがトルーサだな。次期メイド長に推薦したいと、現メイド長から言われるだけの事はある。
「分かった。教えてくれてありがとう」
「情報、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」
丁寧な礼をして速足で去っていくトルーサを見送った後、アキトと俺は二人で顔を見合わせた。
「アキト、これからどうしよっか?」
まあ答えは分かっているんだけどな。ここで被害が無いなら先にご飯食べよーなんて言うアキトは、想像もできないし。
「俺は予定変更してケイリーさんの執務室に向かいたいんだけど、ハルは?」
そう言いつつ、アキトは少しだけ心配そうに俺の腹をちらりと見た。お腹減ってるけど大丈夫かなとか思われてるんだろうな。あの時腹の音を鳴らしてしまったばっかりに。
俺はあえて視線になど全く気づいていませんという顔をして、笑顔で答えた。
「うん、俺も同じ意見だよ。被害がないって聞いても、やっぱり気にはなるからね」
「それじゃあお腹は空いてるけど、まずは執務室だね」
アキトは自分もお腹は空いてるけど、という言い方で話してくれるんだな。こういう所にまで気づかいが詰まっているんだなと感心しながら、俺は口を開いた。
「ああ、そうしよう」
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