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1116.【ハル視点】ライとカーゼ
予定を変更して向かった父さんの執務室の前には、まるで門番のように体格の良い二人の侍従が並んで立っていた。
この二人の名前はカーゼとライ。たくさんいる父さん付きの侍従たちの中の二人だ。
カーゼもライも性格は穏やかだし、強さだけならボルト程ではないんだが、こうして改めて見ると二人ともなかなか威圧感のある見た目だな。
反応が気になってこっそりと視線を向けてみたが、アキトは笑顔のままだった。
ああ、そうか。そういえばこいつらは昨日の夕食会で、肉料理と魚料理についてで大論争を引き起こしていた二人だな。
「一番美味いのは魚料理だ」
「いや、肉料理だろう」
「中でも白身の魚に薄く粉をまぶしてから焼いたやつが一番美味いんだよ。今日だとガシウのソテーがラスさんの料理の中でも最高の出来だったぞ」
「それを言うなら今日のウカの厚切りステーキだろ?あれはまた食べたいと夢に出るかもしれないと思うぐらい美味しかった」
そんなやりとりから始まった二人の言い合いが、どんどん白熱していったんだよな。しかも二人とも自分が持つ料理の知識や語彙力の全てを使って主張するせいで、周りもどんどん巻き込まれていった。
「俺はどちらかというと肉料理が良いな。力が出る」
「私は魚料理の方がご馳走だと思います」
そんな風に周りまで参加し始めて、それはもう盛り上がった。
肉料理も魚料理も両方好きなアキトは議論には不参加だったが、俺は肉料理の方に参加した。うっかり本気になって参加してしまったんだが、空気を読んだ父が魚料理の方に参加したから均衡は取れていたな。
どっちも譲らずにこれはもう収拾がつかないんじゃないかと思ったが、最終的にはラスの一言で収まった。
「どっちの料理にも一切手は抜いてない。どっちも美味いから食べてみろ」
そう言い放ったラスが、肉料理好きなライの前に魚料理を、魚料理好きなカーゼの前に肉料理を出したんだ。
二人が確かにこれも美味いなと感想を言って落ち着いた時には、さすがラスだとその場にいた全員が褒め称えた。
きっとあのやり取りを見ていたから、アキトもライとカーゼに苦手意識が無いんだろうな。
近づいていくアキトと俺に気が付くと、二人は柔らかい笑顔で口を開いた。
「「おはようございます」」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
「お二人は…領主様にご用でしょうか?今はこちらにはご不在なのですが…」
申し訳なさそうにそう教えてくれた二人に、俺はいや違うよと首を振って答えた。
「さっきたまたま出逢ったメイドから探索隊が帰ってきたと聞いたんだ。詳細を聞きたくてボルトに会いに来たんだが…」
「ああ、そうでしたか」
ボルトはここにいるかな?と一応確認のために続けた俺に、カーゼとライはホッとした様子ですぐにはいと頷いた。
「執事長なら中におりますので、どうぞお入りください」
無駄足にならなくて良かったと笑みを浮かべた二人は、わざわざドアまで開けてくれた。俺達は二人に礼を言ってから、執務室の中へと足を踏み入れた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
部屋に入ると両手に書類を抱えたボルトが、流れるような礼と共にそう声をかけてくれた。来るのを予想していたって顔だな。
「おはよう、ボルト」
「ボルトさん、おはようございます」
俺達が何の用でここに来たのかを説明するよりも前に、ボルトは笑顔で続けた。
「探索隊が帰って来たと聞いて、詳細を確認しに来られたんでしょうか?」
「ああ、そうだ。廊下で服を抱えたメイドとすれ違ってな」
「そうでしたか」
ボルトはこちらへどうぞと部屋の窓際にあるテーブルへと、俺達を案内した。勧められるままに揃って腰を下ろせば、それでは報告をしましょうとすぐさま口を開いた。
「本日の明け方に、キース様とアキト様の探索隊、及び牙蛇盗賊団の殲滅隊のみなさまが帰還されました」
「こちらの被害は無かったと聞いたが…」
こちらからそう尋ねれば、ボルトはすぐさま口を開いた。
「はい。大きな怪我を負った者はおりません。狭い場所での戦闘だったためかすり傷程度のものはおりましたが、そちらもキース様とアキト様が気にされるかとポーションで回復済みです」
一息に的確な説明をしてみせたボルトは、安心してくださいねと言いたげな視線をアキトに向けている。これは多分俺達が来る前から、俺じゃなくアキトへの説明の仕方を考えていた感じだな。
もちろんそれに関して文句は無いんだが。
かすり傷も治してあるという辺りに、アキトとキースの性格を良く分かっているなと感心してしまったぐらいだ。
「そうか、それは良かった。捕虜は?」
「捕虜もしっかりと確保されていましたよ。それにあれこれと盗難品も回収して来てくださったので…今は商業ギルドの鑑定魔法士が来て鑑定中です」
父さんはそちらの鑑定に立ち会うために不在になっているんだと、ボルトはさらりとそう続けた。
この二人の名前はカーゼとライ。たくさんいる父さん付きの侍従たちの中の二人だ。
カーゼもライも性格は穏やかだし、強さだけならボルト程ではないんだが、こうして改めて見ると二人ともなかなか威圧感のある見た目だな。
反応が気になってこっそりと視線を向けてみたが、アキトは笑顔のままだった。
ああ、そうか。そういえばこいつらは昨日の夕食会で、肉料理と魚料理についてで大論争を引き起こしていた二人だな。
「一番美味いのは魚料理だ」
「いや、肉料理だろう」
「中でも白身の魚に薄く粉をまぶしてから焼いたやつが一番美味いんだよ。今日だとガシウのソテーがラスさんの料理の中でも最高の出来だったぞ」
「それを言うなら今日のウカの厚切りステーキだろ?あれはまた食べたいと夢に出るかもしれないと思うぐらい美味しかった」
そんなやりとりから始まった二人の言い合いが、どんどん白熱していったんだよな。しかも二人とも自分が持つ料理の知識や語彙力の全てを使って主張するせいで、周りもどんどん巻き込まれていった。
「俺はどちらかというと肉料理が良いな。力が出る」
「私は魚料理の方がご馳走だと思います」
そんな風に周りまで参加し始めて、それはもう盛り上がった。
肉料理も魚料理も両方好きなアキトは議論には不参加だったが、俺は肉料理の方に参加した。うっかり本気になって参加してしまったんだが、空気を読んだ父が魚料理の方に参加したから均衡は取れていたな。
どっちも譲らずにこれはもう収拾がつかないんじゃないかと思ったが、最終的にはラスの一言で収まった。
「どっちの料理にも一切手は抜いてない。どっちも美味いから食べてみろ」
そう言い放ったラスが、肉料理好きなライの前に魚料理を、魚料理好きなカーゼの前に肉料理を出したんだ。
二人が確かにこれも美味いなと感想を言って落ち着いた時には、さすがラスだとその場にいた全員が褒め称えた。
きっとあのやり取りを見ていたから、アキトもライとカーゼに苦手意識が無いんだろうな。
近づいていくアキトと俺に気が付くと、二人は柔らかい笑顔で口を開いた。
「「おはようございます」」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
「お二人は…領主様にご用でしょうか?今はこちらにはご不在なのですが…」
申し訳なさそうにそう教えてくれた二人に、俺はいや違うよと首を振って答えた。
「さっきたまたま出逢ったメイドから探索隊が帰ってきたと聞いたんだ。詳細を聞きたくてボルトに会いに来たんだが…」
「ああ、そうでしたか」
ボルトはここにいるかな?と一応確認のために続けた俺に、カーゼとライはホッとした様子ですぐにはいと頷いた。
「執事長なら中におりますので、どうぞお入りください」
無駄足にならなくて良かったと笑みを浮かべた二人は、わざわざドアまで開けてくれた。俺達は二人に礼を言ってから、執務室の中へと足を踏み入れた。
「ハロルド様、アキト様、おはようございます」
部屋に入ると両手に書類を抱えたボルトが、流れるような礼と共にそう声をかけてくれた。来るのを予想していたって顔だな。
「おはよう、ボルト」
「ボルトさん、おはようございます」
俺達が何の用でここに来たのかを説明するよりも前に、ボルトは笑顔で続けた。
「探索隊が帰って来たと聞いて、詳細を確認しに来られたんでしょうか?」
「ああ、そうだ。廊下で服を抱えたメイドとすれ違ってな」
「そうでしたか」
ボルトはこちらへどうぞと部屋の窓際にあるテーブルへと、俺達を案内した。勧められるままに揃って腰を下ろせば、それでは報告をしましょうとすぐさま口を開いた。
「本日の明け方に、キース様とアキト様の探索隊、及び牙蛇盗賊団の殲滅隊のみなさまが帰還されました」
「こちらの被害は無かったと聞いたが…」
こちらからそう尋ねれば、ボルトはすぐさま口を開いた。
「はい。大きな怪我を負った者はおりません。狭い場所での戦闘だったためかすり傷程度のものはおりましたが、そちらもキース様とアキト様が気にされるかとポーションで回復済みです」
一息に的確な説明をしてみせたボルトは、安心してくださいねと言いたげな視線をアキトに向けている。これは多分俺達が来る前から、俺じゃなくアキトへの説明の仕方を考えていた感じだな。
もちろんそれに関して文句は無いんだが。
かすり傷も治してあるという辺りに、アキトとキースの性格を良く分かっているなと感心してしまったぐらいだ。
「そうか、それは良かった。捕虜は?」
「捕虜もしっかりと確保されていましたよ。それにあれこれと盗難品も回収して来てくださったので…今は商業ギルドの鑑定魔法士が来て鑑定中です」
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