生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1122.【ハル視点】用意された場所

 案内された曲がりくねった小道の周りには、たくさんのリームの花が咲き誇っていた。

 うーん。珍しい花のはずなのにこれだけの量が一気に咲くとなると、庭師たちは何か画期的な新しい栽培方法を発見したのかもしれないな。むしろそうでなければ納得ができないぐらいの咲き方だ。

 うちの庭師たちは花にポーションを与えてみたり、魔石を砕いて土に埋めてみたりと、普通ではありえないような方法であれこれと栽培方法を改良しているからな。

 そのおかげで通常なら一つしか実のならない木に複数の実をつけさせたり、育て難いと言われていた野菜を育てられるようしたりと領としても恩恵が多い。

 それにうちの家族も、庭師の改良を楽しんでいるからな。外出先で手に入れたものを、改良に使ってくれとぽんっと庭師に差し出したりもしている。特にファーガス兄さんは、ダンジョン産の意味の分からない素材を、庭師に差し入れしていたりするんだよな。

 まあ俺もたまに差し入れしていたんだが。

 それにしても最近の発見の中では、一番すごい事かもしれないな。



 景色を眺めつつのんびりと進んでいくと、周囲を色とりどりの花々と大小さまざまな木々に囲まれた美しい庭園へと辿り着いた。

 ここ領主城の庭は、よほどの緊急時以外はいつでも常に綺麗に整えられている。だがそれを見慣れた俺でもつい驚いてしまうほどの、それは素晴らしい景色だった。

「こちらが、料理長と庭師が、最もお勧めしていた場所でございます」
「他の場所が良いとのご希望があれば、他にもいくつか候補を聞いておりますが…どうされますか?」

 メイドたちからの質問に、普段ならすぐに答えるだろうアキトとキースは、何も答えなかった。どうしたんだろう?と俺とジルさんはそっと視線を交わす。

 アキトはまじまじと周りの木々を観察しているし、キースも夢中で花を見つめていた。先に口を開いたのは、キースだった。

「わー!すごい!僕はここ、好きだよ!」

 無邪気に喜ぶ姿が、何とも可愛らしい。

 アキトはどうだろうと視線を向ければ、今度は白地に青い模様が入ったタイルが敷き詰められた床をじーっと見つめている。確かに繊細な描きこみで綺麗なタイルだとは思うが、それほど観察するようなものだろうか。

 次にアキトの視線は、青色の木製テーブルと四つの椅子で止まった。どうみても普通の庭用のテーブルセットだと思うんだが。

 でも、特に嫌そうというわけでは無いんだよな。俺にもよく分からない反応だが、ひとまずアキトに時間を与えるべく俺も感想を言っておこうか。

「ああ、俺も嫌いじゃないが…こんな場所、前からあったか?」

 思わずそう続けた俺に、ジルさんがすぐにいいえと首を振って答えてくれた。

「ここは私も初めて見ましたね。ただ庭で工事をしているという報告は五日ほど前から来ていましたから、おそらく最近になってからこっそりと作ったんでしょう。見事な場所ですね」

 工事は五日前からか。だがおそらく庭にこの場所を作る計画はもっと前からあったんだろうな。

 俺達を最初にここに呼んでくれたという事は、もしかしたらアキトと俺のために作られたものなのかもしれない。そのあたりは後で庭師に確認しよう。

 アキトは今度は何故か上を見上げている。

 いったい何があるんだと全員でアキトの視線を辿って上を見てみたが、そこにあるのは日差しを遮るために張られた日よけ布だけだった。

 とりあえず一通り観察はできたようだし、そろそろ声をかけてみるか。何を考えているのか、気になるしな。

「アキトは?ここ、気に入った?」

 控え目にそう声をかければ、アキトは慌てた様子で顔をあげた。その場にいた全員からじっと見つめられていた事に気づくと、ハッとした様子で口を開く。

「え、俺?うん。俺もすごく気に入ったよ」

 うん、これは嘘じゃないな。本当に気に入っているけど、何かが気になったという所だろうか。後で聞いてみようと思いながら、俺は笑顔で答えた。

「それは良かった―――みんな気に入ったようなので、ここで頼むよ」

 代表してそう声をかければ、メイドたちはかしこまりましたと流れるように礼をした。

「しばらくは周りの景色をご堪能ください」

 そう前置きをしたメイドたちは、てきぱきと食器を取り出して並べ始めた。
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