生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,125 / 1,561

1124.好物

「ジルさん、まかせてもらったとは言え、相談もせずに勝手に給仕を下がらせてすみません」

 向かい側に座っているジルさんにハルは申し訳なさそうにそう声をかけたけど、ジルさんはふふと嬉しそうに笑ってから答えた。

「いえ、私たちだけで食事を楽しむと言うのも楽しそうです。メイドたちの給仕無しで庭で食事をしたと知ったら、ウィルには羨ましがられるかもしれませんが…」

 あーうん。何それ楽しそう!俺もそこにいたかったなーって羨ましがるウィルさんの姿が、簡単に想像できちゃったな。

「あの、すみません。ハルは俺が給仕に慣れてないからって気を使ってくれたんです」
「ああ、そうなんですか。別に謝る必要はありませんよ」

 給仕がいない食事にも私は慣れていますからねと、ジルさんはさらりと笑って答えてくれた。騎士団で動いている時は、誰も給仕なんてしないからと言われれば確かにそうなんだろうな。

「キースも、すまないな」

 今度はハルはキースくんに向かってそう声をかけた。

「ううん。僕はメイドさんたちがいて給仕をしてもらっても特に何も思わないけど―――でも、アキトくんが苦手な事を黙って我慢してるのは、嫌だな」

 真剣な目をしてまっすぐに俺の目を見ながらそう言ってくれるキースくんに、俺はすぐに笑顔で答えた。

「ありがとう、キースくん」
「ううん。でも――もしそういうのがあったら、今度はこっそり教えてね」
「うん、分かった。約束する」

 はっきりと約束すると口にすれば、キースくんは嬉しそうにまたニコニコ笑顔に戻った。

「さて、話しも終わった事ですし、庭園を眺めながらの食事会を楽しみましょうか」

 ジルさんの言葉に皆で笑って頷き合ってから、俺達は揃ってもう一度豪華な料理へと視線を向けた。

 うん、やっぱりどれもすっごく美味しそうだ。いつもの料理よりも、食べやすく小ぶりにしてくれているものが多い感じがする。普段ならそのままの料理が小さな串に刺さってたりね。

 大きなお皿に乗せられているけど、まるでお弁当のおかずみたいな雰囲気のものまである。

「食べやすそうな料理が多いですね」
「確かにそうですね」
「外で食べる用に、色々考えてくれたんだろうな」

 ラスはそういう気配りが自然とできる人だからと、ジルさんとハルが自然にラスさんを褒め始めた。確かにラスさんはすごい人だよね。

 思わずうんうんと頷いていると、料理を見ていたキースくんが、すこし大きな声をあげた。

「あ!スープのなかの一種類は、ヌキプルのスープだ!」

 キースくんが大好物のヌキプルを使ったスープに、気づいた声だった。

「ああ、ヌキプルのスープか」
「たしかにこれは美味しそうですね―――そういえば、アキトさんはヌキプルの実物は見れたんですか?」
「はい!見ました!」

 陽の光を反射して輝いて見える、あのすっごく派手なゲーミング野菜――だよね。市場でみかけたあの野菜は一度見たら忘れられないぐらいのインパクトがあったから、すぐに頭の中で名前と見た目が一致したよ。

 いやでもあの野菜のおかげでケンと友達になれたんだから、ヌキプルには感謝しないといけないかな。

「それは良かった。アキトさんの感想はいかがでしたか?」
「えっと、すっごく派手だなと思いました」
「あれキラキラで面白いよねー」

 頭の中で思い浮かべているのか、キースくんも楽しそうな表情を浮かべている。

「うん、たしかに面白かったねー」

 ニコニコと笑い合っていると、ハルがアキトと声をかけてきた。

「ん?」
「ほら、ハーレを使った料理もあるよ」
「あ、本当だ!ハーレ!」

 俺が好きな茄子に似たハーレは、どんな料理にも合う野菜だ。だからラスさんの料理にも、比較的よく使われている食材だと思う。

 でも今日のハーレの料理は、俺も初めて見るものだ。ハーレを薄切りにして、肉と野菜が入った具材をぐるりと巻いて焼き上げられている。上にかかってるのは、何のソースだろう。

「わー美味しそう!」
「ね、とりあえず食べよう」

 ハルはそう言うと、笑顔でいただきますと声をあげた。すかさずジルさんとキースくんもいただきますと続けてくれた。

 普通にみんないただきますって言ってくれるんだ。

 じわじわと湧いてくる嬉しさのせいですこしだけ出遅れてしまったけど、俺も笑顔でいただきますと声をあげた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。