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1129.ギュームさん
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いったい何の話しなんだろう。
不思議に思いながらも必死になって、この青年とした会話を思い出してみる。
うーん、でも会話と言ってもなぁ。本当にシュリくんの事しか、話してないんだよね。
シュリくんの活躍した話に目を輝かせていたのと、シュリくんのごはんの心配をしてくれていた印象がすごく強い。
二人で直接会話をしたのなんて、それこそシュリくんに魔力をあげてくれませんかってわざわざお願いされた時ぐらいだ。もしかして…これ?って事すらかけらも思いつかないんだけど、どうしよう。
かといって何の話しかも分からないのに、迂闊に返事もできないよね。謝罪されてる理由も分からないのに気にしないで下さいとかは、さすがに言えない。
でも目の前の男性は、まだ顔をあげる気配すら無い。
すっかり困り果てていると、ハルが苦笑しながら男性に声をかけてくれた。さすがハル、こういう時もすっごく頼りになる。
「ギューム、まずは頭を上げてくれ」
「いえ、しかし…」
「上げてくれ。アキトが困っている」
ハルがそう言った瞬間、バッと顔をあげた男性とぱちりと視線が合った。
「申し訳ありませんっ!」
「いえ…えっと…今のは、何の謝罪なんでしょうか?俺には思い当る事が無いんですが」
とりあえず理由を知りたいとそう尋ねてみれば、男性は悔やんでいると言いたげな表情でそっと口を開いた。
「アキト様、困らせてしまって申し訳ありません」
「いえ」
「さきほどの謝罪は昨日の夕食会の事なんです。夕食会できちんと名乗る事もせずにいたのは、決してアキト様を軽んじているからでは無いんですっ!申し訳ありませんでした」
えっと…これって名乗らなくてごめんねって話し?それであんなに謝ったの?
慌てる男性を宥めたハルが上手に聞き出してくれた所によると、夜になって自室に帰ってから名乗っていない事に気が付いたらしい。
旦那さんが同じく使用人をしているそうで、その旦那さんからアキト様にご挨拶出来て良かったなって言われたんだって。
旦那さんは別に他意は無く、ただ俺と喋っている所を見たからついに名乗れたんだなと思っていたらしい。
そこで馬の…というかシュリくんの食事の事を気にしていたせいで、俺に名乗ってすらいなかった事に気がついたんだって。
「アキト、ごめん。すっごく真面目な人なんだ」
うん、そうだろうね。真面目な人じゃなかったら、こんなに気にしてわざわざ謝罪しに来たりしないと思うよ。
「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっ!ウマの事になるとつい暴走するのが私の悪い所なんです!」
「ギューム、そこまで心配しなくても大丈夫。アキトは全く気にしていないよ」
俺もギュームがアキトを軽んじているとは思っていないと、ハルははっきりとそう続けた。
「…アキト様、今のハロルド様のお言葉を信じさせて頂いてもよろしいですか?」
念には念をと確認するギュームさんに、うん真面目だと思いながら、俺は口を開いた。
「はい。俺はむしろ馬の事を親身になって考えてくれる人なんだなーって好感を抱いていましたから、謝られた理由も分からなかったぐらいなので」
本当にお気になさらずと続ければ、ギュームさんはウルウルと涙ぐんだ。
「……良かった…本当に良かった…寛大なアキト様とハロルド様に心からの感謝を!」
許してもらえたと涙目で大喜びしてくれてるんだけど、俺は元々怒ってなかったからね。
「…ところで、ギューム」
「はい、ハロルド様、何でしょうか?」
「とりあえずいますぐに自己紹介をしておいたらどうだろう?」
あ、そっか。ハルがギュームさんって呼んでたから、もう知ったつもりでいたけどまだ自己紹介はしてもらってないな。
「し、失礼しましたっ!私はギューム。ウマを心から敬愛し、ウマに少しでも快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事です」
心から愛してるんじゃなくて、心から敬愛してるんだ。そこに尊敬があるんだね。あとお世話係というよりも、快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事なのか。
うん、ギュームさんの馬への考え方、俺は好きだな。馬好き仲間としてぜひ仲良くしてもらいたい。
不思議に思いながらも必死になって、この青年とした会話を思い出してみる。
うーん、でも会話と言ってもなぁ。本当にシュリくんの事しか、話してないんだよね。
シュリくんの活躍した話に目を輝かせていたのと、シュリくんのごはんの心配をしてくれていた印象がすごく強い。
二人で直接会話をしたのなんて、それこそシュリくんに魔力をあげてくれませんかってわざわざお願いされた時ぐらいだ。もしかして…これ?って事すらかけらも思いつかないんだけど、どうしよう。
かといって何の話しかも分からないのに、迂闊に返事もできないよね。謝罪されてる理由も分からないのに気にしないで下さいとかは、さすがに言えない。
でも目の前の男性は、まだ顔をあげる気配すら無い。
すっかり困り果てていると、ハルが苦笑しながら男性に声をかけてくれた。さすがハル、こういう時もすっごく頼りになる。
「ギューム、まずは頭を上げてくれ」
「いえ、しかし…」
「上げてくれ。アキトが困っている」
ハルがそう言った瞬間、バッと顔をあげた男性とぱちりと視線が合った。
「申し訳ありませんっ!」
「いえ…えっと…今のは、何の謝罪なんでしょうか?俺には思い当る事が無いんですが」
とりあえず理由を知りたいとそう尋ねてみれば、男性は悔やんでいると言いたげな表情でそっと口を開いた。
「アキト様、困らせてしまって申し訳ありません」
「いえ」
「さきほどの謝罪は昨日の夕食会の事なんです。夕食会できちんと名乗る事もせずにいたのは、決してアキト様を軽んじているからでは無いんですっ!申し訳ありませんでした」
えっと…これって名乗らなくてごめんねって話し?それであんなに謝ったの?
慌てる男性を宥めたハルが上手に聞き出してくれた所によると、夜になって自室に帰ってから名乗っていない事に気が付いたらしい。
旦那さんが同じく使用人をしているそうで、その旦那さんからアキト様にご挨拶出来て良かったなって言われたんだって。
旦那さんは別に他意は無く、ただ俺と喋っている所を見たからついに名乗れたんだなと思っていたらしい。
そこで馬の…というかシュリくんの食事の事を気にしていたせいで、俺に名乗ってすらいなかった事に気がついたんだって。
「アキト、ごめん。すっごく真面目な人なんだ」
うん、そうだろうね。真面目な人じゃなかったら、こんなに気にしてわざわざ謝罪しに来たりしないと思うよ。
「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっ!ウマの事になるとつい暴走するのが私の悪い所なんです!」
「ギューム、そこまで心配しなくても大丈夫。アキトは全く気にしていないよ」
俺もギュームがアキトを軽んじているとは思っていないと、ハルははっきりとそう続けた。
「…アキト様、今のハロルド様のお言葉を信じさせて頂いてもよろしいですか?」
念には念をと確認するギュームさんに、うん真面目だと思いながら、俺は口を開いた。
「はい。俺はむしろ馬の事を親身になって考えてくれる人なんだなーって好感を抱いていましたから、謝られた理由も分からなかったぐらいなので」
本当にお気になさらずと続ければ、ギュームさんはウルウルと涙ぐんだ。
「……良かった…本当に良かった…寛大なアキト様とハロルド様に心からの感謝を!」
許してもらえたと涙目で大喜びしてくれてるんだけど、俺は元々怒ってなかったからね。
「…ところで、ギューム」
「はい、ハロルド様、何でしょうか?」
「とりあえずいますぐに自己紹介をしておいたらどうだろう?」
あ、そっか。ハルがギュームさんって呼んでたから、もう知ったつもりでいたけどまだ自己紹介はしてもらってないな。
「し、失礼しましたっ!私はギューム。ウマを心から敬愛し、ウマに少しでも快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事です」
心から愛してるんじゃなくて、心から敬愛してるんだ。そこに尊敬があるんだね。あとお世話係というよりも、快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事なのか。
うん、ギュームさんの馬への考え方、俺は好きだな。馬好き仲間としてぜひ仲良くしてもらいたい。
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