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1130.自己紹介と涙
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「俺の名前はアキト。トライプールの冒険者で、ハルの伴侶候補で、そして馬を見るのが大好きな人間です」
にっこり笑顔を意識しながらこちらも自己紹介をとそう答えれば、ギュームさんはふるふると震えながら、みるみるまた涙目になってしまった。
え。今の俺の発言、何かまずかった?
思わずバッとハルを見れば、ハルは笑いながらゆるりと首を振っている。
えっと、その首振りと表情は、俺が泣かせたわけじゃないよーって意味――だよね?そっと首を傾げながらじっと見つめれば、ハルはクスリと笑ってから口を開いた。
「ギューム、どうしてそんなに涙目なんだ?」
あ、この質問は俺のためだな。ハルが本当に疑問に思ってるとかじゃなくて、俺に聞かせるためにわざわざ口に出してそう尋ねてくれたんだ。
ありがとうと視線だけでハルにお礼を伝えれば、ハルも視線だけでどういたしましてと返してくれた。
尋ねられたギュームさんはというと、相変わらずうっすらと涙目のままだったけど嬉しそうに微笑みながら答えてくれた。
「お叱りを受ける、または処罰を受ける覚悟までしていたのに、あっさり許して頂けた上に、きちんと自己紹介を返してまで頂けるなんてっ…!」
私はとても嬉しいですと、ギュームさんはそう続けた。
「しかもウマが好きなんて!なんて素晴らしい!ウマは本当に素敵な生き物ですからね!まず見た目の美しさも良いんですが、私は何と言っても、あの力強さが好きなんです。後はやっぱり走る姿の美しさが素晴らしいと思います!」
馬の良さについて熱く語り始めたギュームさんに、ハルは苦笑しながらこちらをちらりと見た。
とりあえず涙目の理由は分かっただろう?と言いたげな視線に、俺はこくりと頷いた。
涙目になったのは、ただ俺が自己紹介を返したのに感動したからだったって事だよね。あ、いや馬が好きなんだって事に感動したのかな。
「アキト様は、馬のどんな所が好きですか」
「えっと、俺も馬の走る姿は好きですね。後は目が優しい所も好きです」
「目が優しい!それが言える人は相当のウマ好きですよ!」
ワクワクした様子に変わったギュームさんはまだまだ馬について語り合いたいようだったけれど、ハルが止めに入った。
「ギューム、そこまでにしよう。アキトもウマ好き仲間が欲しいと言っていたから、その話は後日改めてゆっくりして欲しい」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、本当だ」
ハルの答えを聞くなりサッとこちらを見たギュームさんに、俺は即座にこくりと頷いた。だって馬の話しをできる相手、俺も欲しかったからね。色んな事を教えてもらいたい。
「最高です!いつなら予定が空くか、確認してきますから、しばらくお待ち下さいっ!」
そう言うなり、ギュームさんは勢いよく駆けていってしまった。
なかなかに賑やかな人だ。遠ざかっていく背中を見つめていると、ハルが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あー…アキト、何というか…すまない」
「あのね、ギュームはね、取り乱した時はいつもこんな感じだよ。後、ウマへの気持ちを語り出した時も」
キースくんも、すこし困り顔で笑いながらそう教えてくれた。
「別に大丈夫だよ。馬の話しは、俺も出来たら嬉しいし…」
そう答えれば、別に示し合わせたわけでも無いのに二人は揃って声を重ねて続けた。
「「でも普段のギュームはもう少ししっかりしてるからね」」
あまりにも息が合った二人がかりのフォローの言葉に、ちょっと笑いそうになっちゃったよ。さすが仲良し兄弟だね。
今はここにいないとは言え、さすがにギュームさんに失礼だから何とかぐっと堪えたけどね。
「重ね重ね失礼をしてしまって…すみません…でした」
しばらくしてから手帳らしき物を片手に歩いて戻ってきたギュームさんは、まるで別人のように恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
「すみません、取り乱してしまった時と、ウマ関係だとすこし暴走する癖がありまして…」
頬を赤くしながらも、ギュームさんは俺に向かってそう説明をしてくれた。今はすごく恥ずかしそうだ。穴があったら入りたいって顔をしてる。
さっきは取り乱してたからあんな風になってたけど、普段は落ち着いた人なんだな。ハルは真面目な人だって言ってたし、ここはひとつ、何も見なかった事にしよう。
「いえ、気にしないでください」
「次にお会いできたら、お詫びと自己紹介をしないとと思っていましたから…つい…」
「ギューム、それはもう良いよ」
「そうそう、アキトくんは怒ってないからね」
ハルとキースくんの声かけで、ギュームさんははいとひとつ頷いてくれた。
「そういえば、あなた方は何かご用があってこちらに来られたんですか?」
今になって気づいたと言いたげなギュームさんの質問に、ハルは笑って答えた。
「昨日二人の恩人…いや恩ウマか?の世話を頼んだだろう?」
「はい。丁重にお世話をさせて頂きました」
「アキトとキースがその子に会いたいというから、こちらへ来たんだ」
「なるほど。そうでしたか、ではすぐにご案内しますね」
ニコニコ笑顔になったギュームさんは、あの子は賢い子ですねぇと嬉しそうに続けた。
にっこり笑顔を意識しながらこちらも自己紹介をとそう答えれば、ギュームさんはふるふると震えながら、みるみるまた涙目になってしまった。
え。今の俺の発言、何かまずかった?
思わずバッとハルを見れば、ハルは笑いながらゆるりと首を振っている。
えっと、その首振りと表情は、俺が泣かせたわけじゃないよーって意味――だよね?そっと首を傾げながらじっと見つめれば、ハルはクスリと笑ってから口を開いた。
「ギューム、どうしてそんなに涙目なんだ?」
あ、この質問は俺のためだな。ハルが本当に疑問に思ってるとかじゃなくて、俺に聞かせるためにわざわざ口に出してそう尋ねてくれたんだ。
ありがとうと視線だけでハルにお礼を伝えれば、ハルも視線だけでどういたしましてと返してくれた。
尋ねられたギュームさんはというと、相変わらずうっすらと涙目のままだったけど嬉しそうに微笑みながら答えてくれた。
「お叱りを受ける、または処罰を受ける覚悟までしていたのに、あっさり許して頂けた上に、きちんと自己紹介を返してまで頂けるなんてっ…!」
私はとても嬉しいですと、ギュームさんはそう続けた。
「しかもウマが好きなんて!なんて素晴らしい!ウマは本当に素敵な生き物ですからね!まず見た目の美しさも良いんですが、私は何と言っても、あの力強さが好きなんです。後はやっぱり走る姿の美しさが素晴らしいと思います!」
馬の良さについて熱く語り始めたギュームさんに、ハルは苦笑しながらこちらをちらりと見た。
とりあえず涙目の理由は分かっただろう?と言いたげな視線に、俺はこくりと頷いた。
涙目になったのは、ただ俺が自己紹介を返したのに感動したからだったって事だよね。あ、いや馬が好きなんだって事に感動したのかな。
「アキト様は、馬のどんな所が好きですか」
「えっと、俺も馬の走る姿は好きですね。後は目が優しい所も好きです」
「目が優しい!それが言える人は相当のウマ好きですよ!」
ワクワクした様子に変わったギュームさんはまだまだ馬について語り合いたいようだったけれど、ハルが止めに入った。
「ギューム、そこまでにしよう。アキトもウマ好き仲間が欲しいと言っていたから、その話は後日改めてゆっくりして欲しい」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、本当だ」
ハルの答えを聞くなりサッとこちらを見たギュームさんに、俺は即座にこくりと頷いた。だって馬の話しをできる相手、俺も欲しかったからね。色んな事を教えてもらいたい。
「最高です!いつなら予定が空くか、確認してきますから、しばらくお待ち下さいっ!」
そう言うなり、ギュームさんは勢いよく駆けていってしまった。
なかなかに賑やかな人だ。遠ざかっていく背中を見つめていると、ハルが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あー…アキト、何というか…すまない」
「あのね、ギュームはね、取り乱した時はいつもこんな感じだよ。後、ウマへの気持ちを語り出した時も」
キースくんも、すこし困り顔で笑いながらそう教えてくれた。
「別に大丈夫だよ。馬の話しは、俺も出来たら嬉しいし…」
そう答えれば、別に示し合わせたわけでも無いのに二人は揃って声を重ねて続けた。
「「でも普段のギュームはもう少ししっかりしてるからね」」
あまりにも息が合った二人がかりのフォローの言葉に、ちょっと笑いそうになっちゃったよ。さすが仲良し兄弟だね。
今はここにいないとは言え、さすがにギュームさんに失礼だから何とかぐっと堪えたけどね。
「重ね重ね失礼をしてしまって…すみません…でした」
しばらくしてから手帳らしき物を片手に歩いて戻ってきたギュームさんは、まるで別人のように恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
「すみません、取り乱してしまった時と、ウマ関係だとすこし暴走する癖がありまして…」
頬を赤くしながらも、ギュームさんは俺に向かってそう説明をしてくれた。今はすごく恥ずかしそうだ。穴があったら入りたいって顔をしてる。
さっきは取り乱してたからあんな風になってたけど、普段は落ち着いた人なんだな。ハルは真面目な人だって言ってたし、ここはひとつ、何も見なかった事にしよう。
「いえ、気にしないでください」
「次にお会いできたら、お詫びと自己紹介をしないとと思っていましたから…つい…」
「ギューム、それはもう良いよ」
「そうそう、アキトくんは怒ってないからね」
ハルとキースくんの声かけで、ギュームさんははいとひとつ頷いてくれた。
「そういえば、あなた方は何かご用があってこちらに来られたんですか?」
今になって気づいたと言いたげなギュームさんの質問に、ハルは笑って答えた。
「昨日二人の恩人…いや恩ウマか?の世話を頼んだだろう?」
「はい。丁重にお世話をさせて頂きました」
「アキトとキースがその子に会いたいというから、こちらへ来たんだ」
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