1,141 / 1,561
1140.【ハル視点】謝罪の内容は
アキトに向かって深々と頭を下げたまま、ギュームは一切動かなくなってしまった。
うーん、ここまで必死になって謝罪しなければいけないようなひどい事を、ギュームがしたとは――どう考えても思えないな。
ギュームはウマの事に関してだけは少し――いや、かなり賑やかな人だが、それ以外は基本的に真面目で優しい人だ。ウマの話で盛り上がればアキトと仲良くなるかもなと思っていたぐらいなんだが、何故謝罪から始まったんだ。
昨日アキトとギュームが話したのは、シュリのために魔力をあげて欲しいと言いに来た時ぐらいだよな。
あの時は俺も近くにいたが、特に問題になるような会話は無かったと思うんだが…そう考えながら俺はそっとアキトに視線を向けた。
うん。どうやら、アキト本人も一体何について謝られているのかが全く分からないようだ。どんな会話をしたっけと言いたげに、目をうろうろと彷徨わせている。
キースはというと、大きく目を見開いたまま固まっていた。まあいきなり現れて全力で謝罪をし始めたら、それは驚くよな。
許してもらえるまでは頭をあげないつもりなのか、ギュームはまだ動く気配すらない。
うん、ここは俺が何とかするしかないなと、俺は苦笑しながらギュームに声をかけた。
「ギューム、まずは頭を上げてくれ」
「いえ、しかし…」
「上げてくれ。アキトが困っている」
俺がそう言った瞬間、バッと顔をあげたギュームとアキトの視線がかち合った。
「申し訳ありませんっ!」
「いえ…えっと…今のは、何の謝罪なんでしょうか?俺には思い当る事が無いんですが」
表情は困り顔だったが優しい声で尋ねたアキトに、ギュームは悔やんでいるとすぐに分かる表情でそっと口を開いた。
「アキト様、困らせてしまって申し訳ありません」
「いえ」
「さきほどの謝罪は昨日の夕食会の事なんです。夕食会できちんと名乗る事もせずにいたのは、決してアキト様を軽んじているからでは無いんですっ!申し訳ありませんでした」
一息で続けられた説明に、俺はなるほどとひとつ頷いた。
そこまで深刻に考えなくても、アキトは名乗られたかどうかなんて一々考えないだろう。だがただそれだけの事で、軽視されたと騒ぐ人も世の中には存在する。
心配になったんだろうなと思った俺と違い、アキトはそれであんなに謝ったのと驚いた表情のままだった。
「あんな失態をしてしまうとは自分でも思っておらず…申し訳」
「ギューム!」
「はい」
まだまだ続きそうな言葉を、俺は慌てて遮った。
「挨拶をしていないと、後になってから気づいたんだな?」
「はい。夜になって自室に帰ってから名乗っていない事に気が付きました」
宥めながらひとつずつ順番に聞き出していけば、どうやら伴侶である庭師のペスカから、アキト様にご挨拶出来て良かったなと言われたようだ。
ぺスカはただアキトとギュームが喋っている所を見たから、ついに名乗れたんだなと思っての言葉だったらしい。だがギュームは、そのやりとりでシュリの食事の事を気にしていたせいで名乗ってすらいなかった事に気がついたと。
それは、ぺスカも驚いただろうな。
「すぐに謝りに行きたいと言ったんですが、その方が迷惑だと言われまして…」
迷惑だとまでは言わないが、昨夜部屋まで来ていたら明日で良かったのにとは思っただろうな。
そんな事で?という顔をしているアキトに、俺は苦笑しながら声をかけた。
「アキト、ごめん。すっごく真面目な人なんだ」
でも悪い人じゃないよと視線で告げれば、アキトは分かってるとすぐに頷いた。
「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっ!ウマの事になるとつい暴走するのが私の悪い所なんです!」
「ギューム、そこまで心配しなくても大丈夫。アキトは全く気にしていないよ。俺もギュームがアキトを軽んじているとは思っていない」
ウマの事になると暴走するって所は否定しないけどな。
「…アキト様、今のハロルド様のお言葉を信じさせて頂いてもよろしいですか?」
ギュームは俺の言葉をただそのまま信じるわけではなく、きちんとアキトにもそう確認の声をかけた。そんな事をさらりとしておいて、アキトを軽んじてるなんて俺が思うわけが無いんだよな。
「はい。俺はむしろ馬の事を親身になって考えてくれる人なんだなーって好感を抱いていましたから、謝られた理由も分からなかったぐらいなので」
本当にお気になさらずとアキトが続ければ、ギュームはウルウルと涙ぐんだ。
「……良かった…本当に良かった…寛大なアキト様とハロルド様に心からの感謝を!」
許してもらえたと涙目で大喜びしているギュームに、俺は控え目に声をかけた。
「…ところで、ギューム」
「はい、ハロルド様、何でしょうか?」
「とりあえずいますぐに自己紹介をしておいたらどうだろう?」
さっきから俺が名前で呼んでいるから、アキトももちろん、もうギュームの名前は知っている。
だが、ここで自己紹介をしておいて貰わないと、またどこかでいきなり謝罪を受ける事になりそうだからな。
「し、失礼しましたっ!私はギューム。ウマを心から敬愛し、ウマに少しでも快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事です」
何ともギュームらしい挨拶だな。
うーん、ここまで必死になって謝罪しなければいけないようなひどい事を、ギュームがしたとは――どう考えても思えないな。
ギュームはウマの事に関してだけは少し――いや、かなり賑やかな人だが、それ以外は基本的に真面目で優しい人だ。ウマの話で盛り上がればアキトと仲良くなるかもなと思っていたぐらいなんだが、何故謝罪から始まったんだ。
昨日アキトとギュームが話したのは、シュリのために魔力をあげて欲しいと言いに来た時ぐらいだよな。
あの時は俺も近くにいたが、特に問題になるような会話は無かったと思うんだが…そう考えながら俺はそっとアキトに視線を向けた。
うん。どうやら、アキト本人も一体何について謝られているのかが全く分からないようだ。どんな会話をしたっけと言いたげに、目をうろうろと彷徨わせている。
キースはというと、大きく目を見開いたまま固まっていた。まあいきなり現れて全力で謝罪をし始めたら、それは驚くよな。
許してもらえるまでは頭をあげないつもりなのか、ギュームはまだ動く気配すらない。
うん、ここは俺が何とかするしかないなと、俺は苦笑しながらギュームに声をかけた。
「ギューム、まずは頭を上げてくれ」
「いえ、しかし…」
「上げてくれ。アキトが困っている」
俺がそう言った瞬間、バッと顔をあげたギュームとアキトの視線がかち合った。
「申し訳ありませんっ!」
「いえ…えっと…今のは、何の謝罪なんでしょうか?俺には思い当る事が無いんですが」
表情は困り顔だったが優しい声で尋ねたアキトに、ギュームは悔やんでいるとすぐに分かる表情でそっと口を開いた。
「アキト様、困らせてしまって申し訳ありません」
「いえ」
「さきほどの謝罪は昨日の夕食会の事なんです。夕食会できちんと名乗る事もせずにいたのは、決してアキト様を軽んじているからでは無いんですっ!申し訳ありませんでした」
一息で続けられた説明に、俺はなるほどとひとつ頷いた。
そこまで深刻に考えなくても、アキトは名乗られたかどうかなんて一々考えないだろう。だがただそれだけの事で、軽視されたと騒ぐ人も世の中には存在する。
心配になったんだろうなと思った俺と違い、アキトはそれであんなに謝ったのと驚いた表情のままだった。
「あんな失態をしてしまうとは自分でも思っておらず…申し訳」
「ギューム!」
「はい」
まだまだ続きそうな言葉を、俺は慌てて遮った。
「挨拶をしていないと、後になってから気づいたんだな?」
「はい。夜になって自室に帰ってから名乗っていない事に気が付きました」
宥めながらひとつずつ順番に聞き出していけば、どうやら伴侶である庭師のペスカから、アキト様にご挨拶出来て良かったなと言われたようだ。
ぺスカはただアキトとギュームが喋っている所を見たから、ついに名乗れたんだなと思っての言葉だったらしい。だがギュームは、そのやりとりでシュリの食事の事を気にしていたせいで名乗ってすらいなかった事に気がついたと。
それは、ぺスカも驚いただろうな。
「すぐに謝りに行きたいと言ったんですが、その方が迷惑だと言われまして…」
迷惑だとまでは言わないが、昨夜部屋まで来ていたら明日で良かったのにとは思っただろうな。
そんな事で?という顔をしているアキトに、俺は苦笑しながら声をかけた。
「アキト、ごめん。すっごく真面目な人なんだ」
でも悪い人じゃないよと視線で告げれば、アキトは分かってるとすぐに頷いた。
「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっ!ウマの事になるとつい暴走するのが私の悪い所なんです!」
「ギューム、そこまで心配しなくても大丈夫。アキトは全く気にしていないよ。俺もギュームがアキトを軽んじているとは思っていない」
ウマの事になると暴走するって所は否定しないけどな。
「…アキト様、今のハロルド様のお言葉を信じさせて頂いてもよろしいですか?」
ギュームは俺の言葉をただそのまま信じるわけではなく、きちんとアキトにもそう確認の声をかけた。そんな事をさらりとしておいて、アキトを軽んじてるなんて俺が思うわけが無いんだよな。
「はい。俺はむしろ馬の事を親身になって考えてくれる人なんだなーって好感を抱いていましたから、謝られた理由も分からなかったぐらいなので」
本当にお気になさらずとアキトが続ければ、ギュームはウルウルと涙ぐんだ。
「……良かった…本当に良かった…寛大なアキト様とハロルド様に心からの感謝を!」
許してもらえたと涙目で大喜びしているギュームに、俺は控え目に声をかけた。
「…ところで、ギューム」
「はい、ハロルド様、何でしょうか?」
「とりあえずいますぐに自己紹介をしておいたらどうだろう?」
さっきから俺が名前で呼んでいるから、アキトももちろん、もうギュームの名前は知っている。
だが、ここで自己紹介をしておいて貰わないと、またどこかでいきなり謝罪を受ける事になりそうだからな。
「し、失礼しましたっ!私はギューム。ウマを心から敬愛し、ウマに少しでも快適に過ごしてもらえるようにするのが仕事です」
何ともギュームらしい挨拶だな。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。