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1143.【ハル視点】タユ
シュリとそれぞれが挨拶を交わし終わった頃、アキトが口を開いた。
「おはようございます、タユさん」
緊張した様子のアキトがそう声をかけた相手は、俺が乗せてもらっていたあのタユというウマだ。
タユはじっとアキトを見つめてから、すっと立ち上がった。そのままスタスタと近づいてくると、すりっとアキトの顔に優しく頭をすり寄せる。
突然距離を詰められたわけだが、アキトは嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべている。
うん、アキトなら、喜ぶよな。
「おお、タユが人に懐くのはちょっと珍しいですよ」
「ああ、前にも言ったが、アキトはとにかくウマに好かれるんだよ…妬けるんだが…」
だがタユの視線は、アキトを可愛いと思っていそうなものだからまだ耐えられた。もしかしたらタユの母性本能とやらは、アキトも対象なのかもしれないな。
そんな事を考えつつ、俺もタユにおはようと声をかけてみた。タユはすこし呆れた顔をしながらも、俺の肩にこつんと軽く頭を当てにきた。
私相手に妬いてる場合かと、軽く叱られたような気がするな。
「きみはタユさんっていうんだね、僕はキースっていうんだよ。よろしくねー」
俺達のやりとりを見ていたキースは、ニコニコ笑顔を浮かべてタユにそう声をかけた。途端にタユは撫でても良いよと、キースに向かって頭を差し出している。
うん、どうやらキースもタユの可愛いの対象みたいだな。安心して交流を見守っていると、ギュームがすこし予想外の事を口にした。
「キース様もかなり気に入られていますし、それにハロルド様も気に入られていますね」
「え?俺もか…?」
アキトとキースが好かれているのはよく分かるが、俺は違うだろう。首を傾げながら、俺はギュームにそう尋ねた。
「いえいえ、タユは気に入らない人はそもそも一切相手にしませんから」
ニコッと笑顔でそう断言したギュームは、馬の世話をする使用人の中にすら無視される人もいますよとさらりと続けた。
「そう…なのか」
癖が無くて誰でも乗せてくれるウマだと聞いていたから、てっきり人の好き嫌いも少ないウマなんだと思い込んでいた。
「その方も馬が好きなら…落ち込んでないですか?」
そこでその使用人の心配をする所が、アキトだなと思う。そういう優しい所に、何度も惚れ直してしまうんだよな。
「いえ、むしろいつかタユに認められてみせると、毎日声をかけてますよ」
そうか。気に入られていないと分かっているのに、積極的に毎日声かけをしてるのか。それは決して楽な事ではないだろうに。
「そうか、頑張ってくれと伝えてくれ」
思わずそう声をかければ、ギュームはきっと本人に伝えますと笑顔で答えた。
「ああ、すみませんでした。立ち話になってしまって…」
そう切り出したギュームは、部屋の隅にあった木箱からいそいそと椅子を取り出した。あの木箱も魔導収納だったのか。これはさすがに俺も知らなかったな。
椅子を手に動き出したギュームは、シュリの向かい側に三脚の椅子を並べた。
「どうぞみなさん、お座りください」
さらりと言ったギュームに、アキトはえっと驚いた様子を見せた。うん、そうなるよな。
「ギューム、自分の椅子も出せ」
「いえ、それは…」
使用人として同意できないと言いたげな視線を無視して、俺は続けた。
「アキトが気にするからな。俺もさすがに一人だけ立たせておくのも気になる」
「僕も嫌だなー一緒に座って話そうよ」
秘密を守る仲間でしょうと首を傾げたキースの援護は、見事なものだった。
「…それでは」
取り出した椅子にきちんと座ったのを確認してから、俺はシュリに声をかけた。
「それにしてもシュリ、ギュームに声をかけたんだな」
「うん、ギュームいいひとだよ」
「ああ、シュリが誰かに話しかけるとしたら、きっとギュームだろうなとは思っていたんだが…」
「そうなの?」
シュリは首を傾げながら、そう尋ねてきた。
俺の家族以外でとなると、やっぱりうちの関係者の中ではギュームが一番可能性があると思っていたんだよな。この領の中でも、誰よりもウマに真摯に向き合っている人だから。
「だが想像以上に早かったなと思ってな。何か理由でもあるのか?」
「あのね、からだをふいてくれたぬのが、すっごくやわらかかったの」
「布が…?」
もっとこう――こういう所で信頼しようと思ったとか、何なら野生の勘でとか、そういう答えが返ってくると思っていた。
あまりに予想外の答えに、アキトと俺、キースは揃って首を傾げてしまった。
「ふつううまにはつかわない、じょうとうなぬのだったんだよ」
「…そ、そうなのか」
とりあえず頷いて受け入れれば、シュリは僕だけじゃなくてタユにも使ってたからお客さんだからとかの理由じゃないと思うんだと続けた。
まあそうだろうな。どのウマにも全力で向き合うのがギュームだ。
「おはようございます、タユさん」
緊張した様子のアキトがそう声をかけた相手は、俺が乗せてもらっていたあのタユというウマだ。
タユはじっとアキトを見つめてから、すっと立ち上がった。そのままスタスタと近づいてくると、すりっとアキトの顔に優しく頭をすり寄せる。
突然距離を詰められたわけだが、アキトは嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべている。
うん、アキトなら、喜ぶよな。
「おお、タユが人に懐くのはちょっと珍しいですよ」
「ああ、前にも言ったが、アキトはとにかくウマに好かれるんだよ…妬けるんだが…」
だがタユの視線は、アキトを可愛いと思っていそうなものだからまだ耐えられた。もしかしたらタユの母性本能とやらは、アキトも対象なのかもしれないな。
そんな事を考えつつ、俺もタユにおはようと声をかけてみた。タユはすこし呆れた顔をしながらも、俺の肩にこつんと軽く頭を当てにきた。
私相手に妬いてる場合かと、軽く叱られたような気がするな。
「きみはタユさんっていうんだね、僕はキースっていうんだよ。よろしくねー」
俺達のやりとりを見ていたキースは、ニコニコ笑顔を浮かべてタユにそう声をかけた。途端にタユは撫でても良いよと、キースに向かって頭を差し出している。
うん、どうやらキースもタユの可愛いの対象みたいだな。安心して交流を見守っていると、ギュームがすこし予想外の事を口にした。
「キース様もかなり気に入られていますし、それにハロルド様も気に入られていますね」
「え?俺もか…?」
アキトとキースが好かれているのはよく分かるが、俺は違うだろう。首を傾げながら、俺はギュームにそう尋ねた。
「いえいえ、タユは気に入らない人はそもそも一切相手にしませんから」
ニコッと笑顔でそう断言したギュームは、馬の世話をする使用人の中にすら無視される人もいますよとさらりと続けた。
「そう…なのか」
癖が無くて誰でも乗せてくれるウマだと聞いていたから、てっきり人の好き嫌いも少ないウマなんだと思い込んでいた。
「その方も馬が好きなら…落ち込んでないですか?」
そこでその使用人の心配をする所が、アキトだなと思う。そういう優しい所に、何度も惚れ直してしまうんだよな。
「いえ、むしろいつかタユに認められてみせると、毎日声をかけてますよ」
そうか。気に入られていないと分かっているのに、積極的に毎日声かけをしてるのか。それは決して楽な事ではないだろうに。
「そうか、頑張ってくれと伝えてくれ」
思わずそう声をかければ、ギュームはきっと本人に伝えますと笑顔で答えた。
「ああ、すみませんでした。立ち話になってしまって…」
そう切り出したギュームは、部屋の隅にあった木箱からいそいそと椅子を取り出した。あの木箱も魔導収納だったのか。これはさすがに俺も知らなかったな。
椅子を手に動き出したギュームは、シュリの向かい側に三脚の椅子を並べた。
「どうぞみなさん、お座りください」
さらりと言ったギュームに、アキトはえっと驚いた様子を見せた。うん、そうなるよな。
「ギューム、自分の椅子も出せ」
「いえ、それは…」
使用人として同意できないと言いたげな視線を無視して、俺は続けた。
「アキトが気にするからな。俺もさすがに一人だけ立たせておくのも気になる」
「僕も嫌だなー一緒に座って話そうよ」
秘密を守る仲間でしょうと首を傾げたキースの援護は、見事なものだった。
「…それでは」
取り出した椅子にきちんと座ったのを確認してから、俺はシュリに声をかけた。
「それにしてもシュリ、ギュームに声をかけたんだな」
「うん、ギュームいいひとだよ」
「ああ、シュリが誰かに話しかけるとしたら、きっとギュームだろうなとは思っていたんだが…」
「そうなの?」
シュリは首を傾げながら、そう尋ねてきた。
俺の家族以外でとなると、やっぱりうちの関係者の中ではギュームが一番可能性があると思っていたんだよな。この領の中でも、誰よりもウマに真摯に向き合っている人だから。
「だが想像以上に早かったなと思ってな。何か理由でもあるのか?」
「あのね、からだをふいてくれたぬのが、すっごくやわらかかったの」
「布が…?」
もっとこう――こういう所で信頼しようと思ったとか、何なら野生の勘でとか、そういう答えが返ってくると思っていた。
あまりに予想外の答えに、アキトと俺、キースは揃って首を傾げてしまった。
「ふつううまにはつかわない、じょうとうなぬのだったんだよ」
「…そ、そうなのか」
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まあそうだろうな。どのウマにも全力で向き合うのがギュームだ。
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