生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1145.【ハル視点】つがい

 たとえ自分の魔力を吸収してもらえなくても、ひだまりのような魔力とウマから評価されるというのは、ギュームにとってきっとすごく特別で嬉しい事なんだろう。

 一瞬だけ泣き出しそうな顔をしたギュームは、まるでごまかすかのようにニコニコと満面の笑みを浮かべた。

 そこをわざわざ泣いているのか?と指摘するほど、俺も馬鹿じゃない。

 シュリから認められて良かったなと思いながら、俺はギュームの潤んだ目から視線を反らした。

 俺達とギューム、シュリの話が落ち着くと、アキトはシュリに向かってそっと口を開いた。このタイミングで声をかけるって事は、きっとずっと聞きたい事があったんだろう。

「ね、シュリくん、お腹空いてない?俺の魔力食べる?もし食べるならすぐに用意するけど…」

 ああ、やっぱりアキトが気にしていたのはその話か。

 ラスの作ってくれた料理を外で食べてる時から、もしかしたら気にしているんじゃないかとは思っていた。何といっても今はアキトだけが、シュリの食事の用意をできるという状況だからな。

 俺達だけがお腹いっぱい食べちゃったとか、寝坊しちゃったとか色々と考えているだろうなとは想像がついていた。

 だからこそ食事の後で、俺から厩舎に行かないかと誘うつもりだったわけだが。

「んーとねー…まだ、おなかがすいてるってほどじゃないかな。あとすうじつはがまんできるよ。でももしアキトがいいなら…ちょっとほしいかなってかんじなんだけど…」

 途中で言葉につっかえながらも控え目にそう自分の希望を口にしたシュリは、何故かそこでアキトではなく俺に向かって口を開いた。

「でもアキトはつかれてないのかな?」

 どうして俺に聞くんだろうと驚いてしまったのは、一瞬だけだった。あまりにもシュリの目が、まっすぐに俺の目を見つめてきていたからな。これは真剣に答えるべき質問だと背筋を伸ばしてから答える。

「ぐっすりと眠ったし今は疲れてはいないと思うよ」
「ほんとに?」
「ああ、本当だ」
「そっか」

 まるで俺の答えを噛み締めるように、シュリはぽつりとそう呟いた。

「ね、シュリくん、今のって、なんで俺じゃなくてハルに聞いたの?」

 不思議そうに尋ねたアキトに、シュリは悩みながらも答えた。

「んー…アキトはねーもしまりょくがなくなりそうなときでも、ぼくのためならとか…むりしそうだから?」

 あーうん。シュリはアキトをよく分かっているな。

「え、そんな事ないよ。ねぇ?」

 否定してくれるよね?と言いたげなアキトの視線を受けた俺とキースは、思わず二人で顔を見合わせた。

 視線だけでどう思う?とお互いの意見を探り合って、二人揃ってコクリと頷く。

「いや、アキトはやるかも」
「うん、アキトくんはやりそう」

 どうやらキースも、俺とシュリと同じ意見みたいだな。

「さすがに魔力枯渇の怖さは散々ハルから聞かされてるし、経験した事もあるんだから!そんなことしないよ…?」

 信じて欲しいとアキトは真剣にそう続けたが、俺とキースはゆっくりと首を振った。

 確かにもしここが採取地や野外などの直接的な危険がある場所だとしたら、アキトが魔力枯渇するまで動く事は無いだろう。さすがにそのあたりの危険性は、アキトもよくよく理解していると思う。

 だが、今いる場所はあくまでも領都の中だ。しかも領主城と騎士団本部の近くで、採取地のような危険はかなり少ない場所だ。

 そこの前提が変わってしまえば、アキトは俺とキースがいるから大丈夫だろうと全ての魔力を差し出しかねない。

 優しいアキトは素晴らしいと思う反面、無理をするのはやめて欲しいとも思うんだよな。俺は複雑な心境をごまかすように、シュリに声をかけた。
 
「さっきの質問はそういう意味だったんだな、シュリ」
「うん」
「アキトは魔力量がかなり多いんだ。だから、シュリが食べる量ぐらいなら、毎日の回復量で自然と補えるよ。魔法を使った時でも常に余力があるぐらいだからね」

 まっすぐに目を見つめながらはっきりとそう伝えれば、シュリはホッとした様子を見せた。アキトが無理をしているかもしれないと、本当に心から心配してくれていたんだろうな。賢い上に、優しい子だ。

「そっかーよかった。アキトのつがいのハルがそういうなら、ほんとのことだね」

 負担にならないなら魔力を食べさせて欲しいなーと、シュリは改めて可愛いおねだりをアキトにしている。

 それにしても、アキトのつがいのハル…か。

「…つがい…」

 中々よい響きだと思わずそう呟けば、シュリは不思議そうに首を傾げた。

「あれ、うまでいうつがいが、にんげんのはんりょでしょう?」
「あー…うん、合ってるな。そうかシュリから見たら俺はアキトのつがいなんだな」

 アキトの隣にいて当たり前の存在だと認められたような気分で、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。

「よし、それじゃあ早速魔力練るよー」

 アキトは明るい声でそうシュリに声をかけているが、耳も頬も真っ赤だった。

 ふふ。アキトもつがいと言われて、照れくさいけど嬉しいと――そう感じてくれているらしい。

「おねがいしまーす」
「まかせて」
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