生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1152.感謝を伝えたいツアー

 探索隊参加者さんたちに感謝の気持ちを伝えたい俺達のツアーは、それから数日をかけて行われる事になった。

「おはよう、キースくん!」
「アキトくん、ハル兄!おはよう」

 今日も二人と一緒で嬉しいと、キースくんは朝からニコニコ笑顔でご機嫌だ。うん、今日もキースくんは可愛いな。

 今日の俺達のツアーに参加するのは、当然だけど絶対参加の俺とキースくん、そして案内役をしようかと立候補してくれたハルも一緒だよ。

 俺はリストにある人の名前と顔が全く一致しないし、キースくんも何人かは分かる人もいるけど知らない名前もいっぱいあるってそう言ってたからね。

 ハルが来てくれたのは、正直すごく助かった。

 ちなみにあの参加者リストの名前にチェックを入れてくれる係も、ずっとハルがやってくれてたよ。

 ハルに見せて貰ったあのリストには、俺達が想像していたよりもずっとたくさんの名前がずらっと並んでいたんだ。だから、さすがに全員を回るのは、そう簡単には終わらないだろうなとは思ってたんだよ。

 でも正直想像以上に大変そうだなって、お礼を言って回り始めた時に思ったよね。

「今の時間なら使用人の多くが、その部屋にいると思います」

 そう教えてもらって向かった待機部屋には、使用人さんはたくさんいたんだけど、参加してくれていた人は一人しかいなかったんだ。

 他の人はそれぞれ自分の仕事をしているから、どこにいるかまでは使用人仲間でも把握してないらしい。急用なら魔道具を使って呼び出せますよって言われたけど、お礼を言うのに呼びつけるのもなってなって断ったんだ。

 いや、とりあえず一人は増えて良かった――と、そう考えないと駄目かな。

「次は…そうだな。騎士団本部に行ってみようか」
「そうだねーそうしよ!」
「えっと…それじゃあこっち?」
「ああ。アキトの言った廊下であってるよ」
「アキトくん、すごいね!」
「ありがとう」

 わいわいとそんな事を話しながら騎士団本部を目指していると、不意にハルがクリース!と声をあげた。

 クリースって誰?と思わず視線を向ければ、ちょうど裏廊下に入ろうとしていた使用人さんがぴたりと足を止めていた。

「何かご用でしょうか?」

 ハルが声をかけて呼び止めてくれたのは、侍従さんだった。

「あ、探索隊に参加してくれてた人ですよね?」
「…はい、たしかに参加はさせて頂きましたが…」

 困惑顔の侍従さんに、俺とキースくんは二人揃ってお礼の言葉を伝えた。お気になさらずと言いつつも、俺達とハルの顔をちらりと見たその侍従さんはどういたしましてと笑って答えてくれた。

 とりあえずこれで使用人さん二人には、お礼が言えたって事だ。

 もしかしたらこれは幸先が良いかもと向かった騎士団本部では、ちょうど会議と訓練中とかで参加者の人には誰にも会えなかったよ。

 ここでも『会議にも訓練にもあなた方ならご参加して頂けますよ』とそう言ってもらったけど、断って帰ってきた。

「空ぶりか…」
「でも会議と訓練に入っていくのは違う気がするんだよね」
「うん、邪魔は良く無いよね」

 気持ちを切り替えて今度は門近くにある衛兵詰め所にもお礼を言いに行ってみたんだけど、そっちもまさかの全員が不在という事態だった。

「わざわざ来て頂いたのは…お礼の件ですよね?」

 そう俺達に尋ねてくれたのは、一番最初に挨拶した七人のうちの一人――お酒が苦手だという若い衛兵さんだった。

「ああ、そうなんだが…その顔は、不在なんだな」
「はい。その…昨日は思いっきり飲んで食べて楽しんだから、今日は思いっきり体を動かしたいなと…」

 そう言ってベテラン衛兵さんたちは、揃って街道の巡回に出てしまっているらしい。二日酔いで動けないとかじゃなくて、体を動かしたいってなるんだ。すごい人たちだな。

「足を運んで頂いたのに、申し訳ありません」

 そう呟いた衛兵さんも、もちろんそのベテラン衛兵さんたちも何も悪くない。

「いやいや、急に来たのは俺達だ」
「そうですよー約束していたわけじゃないんですから」
「僕もそれはしかたないと思うよ」

 誰も悪くないからと、三人がかりで必死で宥めたよね。



 そんな感じの初日だったから、挨拶できた人はまさかの二人だけ。

 これは長丁場になるだろうなと覚悟してたんだけど、二日目からは一気に様子が変わったんだ。

 というのも、既にお礼を受け取ってくれた人達が、俺とキースくんがお礼を直接言いたいと参加者を探して回っているらしいって噂をわざと周りに広めてくれたみたいなんだ。

 だから途中からは『探索隊に参加してましたー騎士団所属、誰誰です』と名乗ってくれる人とかも現れたりしたよ。

 あ、ちなみに『ここにいるこいつも、探索隊に参加してましたよー』なんて、周りの人が教えてくれるっていうパターンもあったね。

 そのおかげで想像していたよりもずっと早く、お礼を伝えようツアーは無事に終了したんだ。
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