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1156.【ハル視点】休日の過ごし方
騎士団本部の広間に残っていたこの七人は、急に今日の仕事は休みだと言われたらしい。休み自体はもちろん嬉しいが、急な予定変更にこれから何をするかと悩んでいる所だったそうだ。
アキトは説明を聞くなりすこし不思議そうに、侍従をじっと見つめた。
ああ、たしかに俺達がここに来た時、侍従は周りの世話を焼きながらきびきび動いていたな。侍従本人も自覚はあったのか、アキトの視線に笑って答えた。
「あれは仕事ではなく、そうですね…ただの趣味です」
「え、さっきから世話焼いてくれてたのって、趣味だったのか?」
驚いた様子の衛兵の言葉に、侍従は笑って頷いた。
「ええ、ついついお世話をしたくなるんですよね」
「いや、俺達は助かってるから良いんだけど…疲れないのか?」
「むしろ何もするなと言われた方が確実に疲れますね!」
侍従はにっこりと笑顔を浮かべて、そう断言した。
本人が良いなら問題は無い…のか?これは執事長のボルトに報告しておいた方が良い話だろうか?そんな事を考えていると、アキトが口を開いた。
「あの…という事は…ここにいない他の人たちは、もう仕事に行ったって事なんですか?」
恐る恐ると言った様子のアキトからの質問に、皆を代表して侍従が答えた。
「いえ、仕事に戻った人も何人かはいますが、それ以外は目的を決めて移動していきましたね」
「…目的を決めて…?」
どういう意味だろうとアキトとキースが揃って首を傾げれば、侍従の話を静かに聞いていた騎士が口を開いた。
「えーと、例えば休みだって決まるなり、それなら訓練だーって全力で走り出した騎士たちの集団がいました」
自分も誘われたが暑苦しいやりとりが面倒で断ったと、その騎士は続けた。
誘ってもらったのにひどい言い方だと思うかもしれないが、訓練が大好きな一部の騎士の熱量は尋常じゃないからな。その気持ちは、俺にもよく分かる。
「あいつらは本当に暑苦しいからな」
他の騎士たちも、うんうんと頷いている。
「あ、でも俺達は別に訓練が嫌いなわけじゃないんですよ」
心配そうに付け加えられた騎士の言葉に、アキトは体格を見れば訓練が嫌いじゃない事は分かりますと冷静にそう返した。
ホッとした様子の騎士達をちらりと見てから、今度は侍従が口を開いた。
「私たち使用人は、まずは自分の担当している部門の手が足りてるかを確認に行く者が多かったですね」
ああ、使用人たちならやりそうだな。急に自分たちが休みになった事で、職場の手が足りないのではと心配になるんだろう。仕事熱心な人が多い部門だからな。
「手が足りていれば、それぞれが街に出て買い物や食事を楽しむと思います」
そう続いた侍従の言葉に、それは大丈夫なのか?とアキトは心配そうな表情を見せた。確かに今の言い方だと、手が足りていなければ仕事に戻るように思えるな。
俺はそっとアキトの耳元に顔を寄せて囁いた。
「大丈夫。探索隊に行ってた事は分かってるからきっとみんなに休まされるよ」
いやきっとどころでは無いか。絶対に休まされるの間違いかもしれない。
もし手が足りていなかったとしても、他の使用人たちは絶対にそれを悟らせないように振る舞うだろう。ただ人手が足りていても仕事をしたいと主張する人も、中にはいるかもしれない。
だがそんな使用人も、おそらくアキトとキースが気にするからと言われて無理やりにでも休まされるだろう。
「だから心配しなくて大丈夫だよ」
「そっか。ありがと、ハル」
「どういたしまして」
「俺達衛兵は、えーと…その…ですね」
衛兵はそこで言葉につまった。
ああ、さすがにこの流れで酒盛りに行ったとは言い難いんだろう。俺は言い淀む衛兵に、苦笑しながらも頷いた。
「俺の師匠もいたし、あれだけベテランの衛兵が揃っていたんだ…今はまず間違いなく酒盛りだろう?」
「…はい。元気いっぱいで今日の酒はきっとうまいと飛び出していきましたね」
「ウェルマ市場の奥にあるあそこだろうな…」
師匠とベテラン衛兵が贔屓にしている店と言えば、ウェルマ市場の奥にあるルトーブという店だ。
食べ物も酒も文句なしにうまい良い店なんだが、あそこに行くと必ずベテラン衛兵の誰かに会うからな。アキトと一緒には、まだ行っていない。
「ええ、俺は酒が苦手なので…不参加になりました」
懸命な判断だな。あの人たちは酔うと更に遠慮が無くなるから。そんな事を考えつつ衛兵の肩に手を置けば、分かってくれますかと言いたげな目で見つめられた。
ああ、気持ちは分かるぞ。
もうしばらくここにいるという七人にアキトとキースが手を振り、俺達は次の場所を目指す事になった。
「ハル兄、次はどこに行くの?」
キースに期待に満ちた目で見あげられると、期待に答えないとと思うな。俺はんーと考えてから口を開いた。
「そうだな。次は兄さんたちがいるだろう、領主城の方へ戻ろうか?」
「うん!」
「アキトも良いか?」
「もちろん!ただ…領主城のどこに行けば良いのかな?」
「そうだなー俺の予想が正しければ、父さんの執務室に集まっているか、もしくはファーガス兄さんの執務室、それか会議室代わりに使っている応接室のどこかだろう」
仕事に戻っていたり、街中に出ている人を探すのは大変そうだからねと、俺はそう続けた。
まあ行先がはっきりと分かっているやつらもいるわけだが。訓練のために騎士団本部の訓練場に向かった騎士たちと、ルトーブという店で飲み会中の衛兵たちだ。
「訓練場には行かないの?」
アキトからは不思議そうにそう尋ねられたが、俺はいやとすぐに首を振った。
「訓練の邪魔はしたくないから」
いや、すまない。これは嘘だ。
訓練場に行けばきっと歓迎はされるし、邪魔者扱いなんてされないだろう。
だがまず間違いなく、俺は訓練に強制参加させられる。そうなったらアキトとキースは、二人だけで続きを回ると言いかねないからな。
それでは困るから、今は訓練場には近づかないつもりだ。
アキトは説明を聞くなりすこし不思議そうに、侍従をじっと見つめた。
ああ、たしかに俺達がここに来た時、侍従は周りの世話を焼きながらきびきび動いていたな。侍従本人も自覚はあったのか、アキトの視線に笑って答えた。
「あれは仕事ではなく、そうですね…ただの趣味です」
「え、さっきから世話焼いてくれてたのって、趣味だったのか?」
驚いた様子の衛兵の言葉に、侍従は笑って頷いた。
「ええ、ついついお世話をしたくなるんですよね」
「いや、俺達は助かってるから良いんだけど…疲れないのか?」
「むしろ何もするなと言われた方が確実に疲れますね!」
侍従はにっこりと笑顔を浮かべて、そう断言した。
本人が良いなら問題は無い…のか?これは執事長のボルトに報告しておいた方が良い話だろうか?そんな事を考えていると、アキトが口を開いた。
「あの…という事は…ここにいない他の人たちは、もう仕事に行ったって事なんですか?」
恐る恐ると言った様子のアキトからの質問に、皆を代表して侍従が答えた。
「いえ、仕事に戻った人も何人かはいますが、それ以外は目的を決めて移動していきましたね」
「…目的を決めて…?」
どういう意味だろうとアキトとキースが揃って首を傾げれば、侍従の話を静かに聞いていた騎士が口を開いた。
「えーと、例えば休みだって決まるなり、それなら訓練だーって全力で走り出した騎士たちの集団がいました」
自分も誘われたが暑苦しいやりとりが面倒で断ったと、その騎士は続けた。
誘ってもらったのにひどい言い方だと思うかもしれないが、訓練が大好きな一部の騎士の熱量は尋常じゃないからな。その気持ちは、俺にもよく分かる。
「あいつらは本当に暑苦しいからな」
他の騎士たちも、うんうんと頷いている。
「あ、でも俺達は別に訓練が嫌いなわけじゃないんですよ」
心配そうに付け加えられた騎士の言葉に、アキトは体格を見れば訓練が嫌いじゃない事は分かりますと冷静にそう返した。
ホッとした様子の騎士達をちらりと見てから、今度は侍従が口を開いた。
「私たち使用人は、まずは自分の担当している部門の手が足りてるかを確認に行く者が多かったですね」
ああ、使用人たちならやりそうだな。急に自分たちが休みになった事で、職場の手が足りないのではと心配になるんだろう。仕事熱心な人が多い部門だからな。
「手が足りていれば、それぞれが街に出て買い物や食事を楽しむと思います」
そう続いた侍従の言葉に、それは大丈夫なのか?とアキトは心配そうな表情を見せた。確かに今の言い方だと、手が足りていなければ仕事に戻るように思えるな。
俺はそっとアキトの耳元に顔を寄せて囁いた。
「大丈夫。探索隊に行ってた事は分かってるからきっとみんなに休まされるよ」
いやきっとどころでは無いか。絶対に休まされるの間違いかもしれない。
もし手が足りていなかったとしても、他の使用人たちは絶対にそれを悟らせないように振る舞うだろう。ただ人手が足りていても仕事をしたいと主張する人も、中にはいるかもしれない。
だがそんな使用人も、おそらくアキトとキースが気にするからと言われて無理やりにでも休まされるだろう。
「だから心配しなくて大丈夫だよ」
「そっか。ありがと、ハル」
「どういたしまして」
「俺達衛兵は、えーと…その…ですね」
衛兵はそこで言葉につまった。
ああ、さすがにこの流れで酒盛りに行ったとは言い難いんだろう。俺は言い淀む衛兵に、苦笑しながらも頷いた。
「俺の師匠もいたし、あれだけベテランの衛兵が揃っていたんだ…今はまず間違いなく酒盛りだろう?」
「…はい。元気いっぱいで今日の酒はきっとうまいと飛び出していきましたね」
「ウェルマ市場の奥にあるあそこだろうな…」
師匠とベテラン衛兵が贔屓にしている店と言えば、ウェルマ市場の奥にあるルトーブという店だ。
食べ物も酒も文句なしにうまい良い店なんだが、あそこに行くと必ずベテラン衛兵の誰かに会うからな。アキトと一緒には、まだ行っていない。
「ええ、俺は酒が苦手なので…不参加になりました」
懸命な判断だな。あの人たちは酔うと更に遠慮が無くなるから。そんな事を考えつつ衛兵の肩に手を置けば、分かってくれますかと言いたげな目で見つめられた。
ああ、気持ちは分かるぞ。
もうしばらくここにいるという七人にアキトとキースが手を振り、俺達は次の場所を目指す事になった。
「ハル兄、次はどこに行くの?」
キースに期待に満ちた目で見あげられると、期待に答えないとと思うな。俺はんーと考えてから口を開いた。
「そうだな。次は兄さんたちがいるだろう、領主城の方へ戻ろうか?」
「うん!」
「アキトも良いか?」
「もちろん!ただ…領主城のどこに行けば良いのかな?」
「そうだなー俺の予想が正しければ、父さんの執務室に集まっているか、もしくはファーガス兄さんの執務室、それか会議室代わりに使っている応接室のどこかだろう」
仕事に戻っていたり、街中に出ている人を探すのは大変そうだからねと、俺はそう続けた。
まあ行先がはっきりと分かっているやつらもいるわけだが。訓練のために騎士団本部の訓練場に向かった騎士たちと、ルトーブという店で飲み会中の衛兵たちだ。
「訓練場には行かないの?」
アキトからは不思議そうにそう尋ねられたが、俺はいやとすぐに首を振った。
「訓練の邪魔はしたくないから」
いや、すまない。これは嘘だ。
訓練場に行けばきっと歓迎はされるし、邪魔者扱いなんてされないだろう。
だがまず間違いなく、俺は訓練に強制参加させられる。そうなったらアキトとキースは、二人だけで続きを回ると言いかねないからな。
それでは困るから、今は訓練場には近づかないつもりだ。
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