生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,158 / 1,561

1157.【ハル視点】気配探知

 俺が予想した三つの場所を、とりあえず順番に回ってみよう。三人で話し合ってそう決めた俺達は、まっすぐ領主城まで戻ってきた。

「最初はどこから行く?」
「どこから行く?」

 悪戯っぽく笑いながら語尾を真似したキースに、アキトは楽し気に声をあげて笑った。

 盗賊団に攫われるなんてとんでもない経験をした二人だが、少なくともそれを気にかけている様子は無いな。二人の笑顔が無くならなくて良かったとしみじみと感じつつ、俺はひとつの提案を口にした。

「ここから一番近いのは、会議室代わりの応接室なんだ。次がファーガス兄さんの執務室、一番遠いのが父さんの執務室だね」
「それじゃあ近い方から行こうか?」
「ああ、俺もそれが良いと思うよ」
「賛成ー!」

 そんなやりとりをしてから向かった応接室で、俺たちは最初から当たりを引いたようだ。



 辿り着いた応接室の前に、侍従は立っていなかった。

 アキトとキースはいないみたいだねと言っていたが、気配を探ってみれば中に人がいる事が分かる。侍従たちはどこかに待機しているか、それとも何か用事で席を外しているだけなんだろう。

「うん、中に人がいるね。この気配は…ファーガス兄さんとマティさん、それにウィル兄さんとジルさんだね」
「え、そこまで分かるんだ」

 アキトは驚いた様子でそう言うと、真剣な表情でドアの向こうの気配を探り始めた。すごい集中力だなと感心しながら眺めていると、キースもアキトの隣に並んで同じぐらい真剣な表情で気配探知を始めた。

 母さんに気配探知のコツを習ってから、二人ともぐんぐん上達しているからな。

「うーん、俺に分かるのは誰かいるなーぐらいの情報だけだよ」

 人数すらあやふやだと、アキトは悔しそうに呟いた。

「ううん、アキトくんは誰かいるって事が分かるんだから十分すごいよ!僕なんて、いるような気がするなーって雰囲気が分かるぐらいだよ」

 そう口にしたキースも、落ち込んだ様子でしょんぼりと肩を落としている。

「落ち込まないで。二人ともかなり上達はしてるよ。気配探知に向いてない人は、その雰囲気すら感じられないからね」

 これは決して気休めなんかじゃない。何も感じ取れない人は、どうやっても上達しないからな。

「そうかな?」
「そうなの?」
「二人に嘘はつかないよ。騎士でも向いていないと気配探知を諦める人も、普通にいるんだ」
「そうなんだ…?」
「へー僕、それは知らなかったよ」

 頑張らないとと張り切る二人に、さっきからドアの隙間からこちらを見ていたウィル兄さんが声をかけてきた。

「三人が来たなーと思ってジルと話してたのになかなか入って来ないから、待ちくたびれてこっちから開けちゃったよー?」

 悪戯っぽく笑いながらそう声をかけてきたのは、ウィル兄さんだ。ドアにもたれるようにして立つウィル兄さんの後ろから、ジルさんもこっそりと心配そうにこちらを覗いている。

「すまない。アキトとキースと話していたんだ」
「謝らなくて良いんだけどねーちなみにその会話も聞いちゃったよ」
「あの…アキトさん、キースくん。気配探知というのは、段階的に徐々に成長するものなんです。だからお二人はそのまま訓練を続けていけば、大丈夫ですよ。きっといつかハルさんのようにできる日が来ますからね」

 ちなみに私も上達するまでは、かなりの時間がかかりましたからね。ジルさんは遠い目をしながらも、アキトとキースに優しくそう声をかけてくれた。

 俺がこれ以上あれこれと言葉を重ねるよりも、ジルさんが言ってくれた方が説得力があるな。アキトとキースもジルさんの言葉なら信じられると思ったのか、ホッとした様子で笑顔を浮かべた。

「うん!ありがとう、ジルさん」
「ジルさん、励ましてくれてありがとうございます」

 これからも頑張りますと答えたアキトと、絶対に諦めないよと伝えたキースに、ジルさんはふわりと優しい笑みを見せている。

 もしかしてこれは妬いたとウィル兄が騒ぐやつかと少しだけ心配になったが、俺の予想に反してウィル兄は幸せそうに呟いた。

「あーアキトくんとキースに優しいジルも良いなーその優しい笑みがたまらないんだよねー」
「そういうのは良いので、ほら中に入りますよ」
「はーい!」

 ニコニコ笑顔でジルさんの後を追ったウィル兄に続いて、俺達も部屋の中へと入っていく。

「アキトくん、キース、ハルも、おはよう」
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「おはよう、ファーガス兄さん」
「おはよー!」

 ファーガス兄さんとマチルダさんは挨拶を済ませると、ちゃんと眠れたかとか、食事はしたのかとか色々と二人に尋ね始めた。

 たぶんこれは、盗賊に攫われたという事実が、二人の心の傷になっていないかを探っているんだろうな。

 そう分析しながら、俺は笑顔で答える二人の姿を眺めていた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。