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1157.【ハル視点】気配探知
俺が予想した三つの場所を、とりあえず順番に回ってみよう。三人で話し合ってそう決めた俺達は、まっすぐ領主城まで戻ってきた。
「最初はどこから行く?」
「どこから行く?」
悪戯っぽく笑いながら語尾を真似したキースに、アキトは楽し気に声をあげて笑った。
盗賊団に攫われるなんてとんでもない経験をした二人だが、少なくともそれを気にかけている様子は無いな。二人の笑顔が無くならなくて良かったとしみじみと感じつつ、俺はひとつの提案を口にした。
「ここから一番近いのは、会議室代わりの応接室なんだ。次がファーガス兄さんの執務室、一番遠いのが父さんの執務室だね」
「それじゃあ近い方から行こうか?」
「ああ、俺もそれが良いと思うよ」
「賛成ー!」
そんなやりとりをしてから向かった応接室で、俺たちは最初から当たりを引いたようだ。
辿り着いた応接室の前に、侍従は立っていなかった。
アキトとキースはいないみたいだねと言っていたが、気配を探ってみれば中に人がいる事が分かる。侍従たちはどこかに待機しているか、それとも何か用事で席を外しているだけなんだろう。
「うん、中に人がいるね。この気配は…ファーガス兄さんとマティさん、それにウィル兄さんとジルさんだね」
「え、そこまで分かるんだ」
アキトは驚いた様子でそう言うと、真剣な表情でドアの向こうの気配を探り始めた。すごい集中力だなと感心しながら眺めていると、キースもアキトの隣に並んで同じぐらい真剣な表情で気配探知を始めた。
母さんに気配探知のコツを習ってから、二人ともぐんぐん上達しているからな。
「うーん、俺に分かるのは誰かいるなーぐらいの情報だけだよ」
人数すらあやふやだと、アキトは悔しそうに呟いた。
「ううん、アキトくんは誰かいるって事が分かるんだから十分すごいよ!僕なんて、いるような気がするなーって雰囲気が分かるぐらいだよ」
そう口にしたキースも、落ち込んだ様子でしょんぼりと肩を落としている。
「落ち込まないで。二人ともかなり上達はしてるよ。気配探知に向いてない人は、その雰囲気すら感じられないからね」
これは決して気休めなんかじゃない。何も感じ取れない人は、どうやっても上達しないからな。
「そうかな?」
「そうなの?」
「二人に嘘はつかないよ。騎士でも向いていないと気配探知を諦める人も、普通にいるんだ」
「そうなんだ…?」
「へー僕、それは知らなかったよ」
頑張らないとと張り切る二人に、さっきからドアの隙間からこちらを見ていたウィル兄さんが声をかけてきた。
「三人が来たなーと思ってジルと話してたのになかなか入って来ないから、待ちくたびれてこっちから開けちゃったよー?」
悪戯っぽく笑いながらそう声をかけてきたのは、ウィル兄さんだ。ドアにもたれるようにして立つウィル兄さんの後ろから、ジルさんもこっそりと心配そうにこちらを覗いている。
「すまない。アキトとキースと話していたんだ」
「謝らなくて良いんだけどねーちなみにその会話も聞いちゃったよ」
「あの…アキトさん、キースくん。気配探知というのは、段階的に徐々に成長するものなんです。だからお二人はそのまま訓練を続けていけば、大丈夫ですよ。きっといつかハルさんのようにできる日が来ますからね」
ちなみに私も上達するまでは、かなりの時間がかかりましたからね。ジルさんは遠い目をしながらも、アキトとキースに優しくそう声をかけてくれた。
俺がこれ以上あれこれと言葉を重ねるよりも、ジルさんが言ってくれた方が説得力があるな。アキトとキースもジルさんの言葉なら信じられると思ったのか、ホッとした様子で笑顔を浮かべた。
「うん!ありがとう、ジルさん」
「ジルさん、励ましてくれてありがとうございます」
これからも頑張りますと答えたアキトと、絶対に諦めないよと伝えたキースに、ジルさんはふわりと優しい笑みを見せている。
もしかしてこれは妬いたとウィル兄が騒ぐやつかと少しだけ心配になったが、俺の予想に反してウィル兄は幸せそうに呟いた。
「あーアキトくんとキースに優しいジルも良いなーその優しい笑みがたまらないんだよねー」
「そういうのは良いので、ほら中に入りますよ」
「はーい!」
ニコニコ笑顔でジルさんの後を追ったウィル兄に続いて、俺達も部屋の中へと入っていく。
「アキトくん、キース、ハルも、おはよう」
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「おはよう、ファーガス兄さん」
「おはよー!」
ファーガス兄さんとマチルダさんは挨拶を済ませると、ちゃんと眠れたかとか、食事はしたのかとか色々と二人に尋ね始めた。
たぶんこれは、盗賊に攫われたという事実が、二人の心の傷になっていないかを探っているんだろうな。
そう分析しながら、俺は笑顔で答える二人の姿を眺めていた。
「最初はどこから行く?」
「どこから行く?」
悪戯っぽく笑いながら語尾を真似したキースに、アキトは楽し気に声をあげて笑った。
盗賊団に攫われるなんてとんでもない経験をした二人だが、少なくともそれを気にかけている様子は無いな。二人の笑顔が無くならなくて良かったとしみじみと感じつつ、俺はひとつの提案を口にした。
「ここから一番近いのは、会議室代わりの応接室なんだ。次がファーガス兄さんの執務室、一番遠いのが父さんの執務室だね」
「それじゃあ近い方から行こうか?」
「ああ、俺もそれが良いと思うよ」
「賛成ー!」
そんなやりとりをしてから向かった応接室で、俺たちは最初から当たりを引いたようだ。
辿り着いた応接室の前に、侍従は立っていなかった。
アキトとキースはいないみたいだねと言っていたが、気配を探ってみれば中に人がいる事が分かる。侍従たちはどこかに待機しているか、それとも何か用事で席を外しているだけなんだろう。
「うん、中に人がいるね。この気配は…ファーガス兄さんとマティさん、それにウィル兄さんとジルさんだね」
「え、そこまで分かるんだ」
アキトは驚いた様子でそう言うと、真剣な表情でドアの向こうの気配を探り始めた。すごい集中力だなと感心しながら眺めていると、キースもアキトの隣に並んで同じぐらい真剣な表情で気配探知を始めた。
母さんに気配探知のコツを習ってから、二人ともぐんぐん上達しているからな。
「うーん、俺に分かるのは誰かいるなーぐらいの情報だけだよ」
人数すらあやふやだと、アキトは悔しそうに呟いた。
「ううん、アキトくんは誰かいるって事が分かるんだから十分すごいよ!僕なんて、いるような気がするなーって雰囲気が分かるぐらいだよ」
そう口にしたキースも、落ち込んだ様子でしょんぼりと肩を落としている。
「落ち込まないで。二人ともかなり上達はしてるよ。気配探知に向いてない人は、その雰囲気すら感じられないからね」
これは決して気休めなんかじゃない。何も感じ取れない人は、どうやっても上達しないからな。
「そうかな?」
「そうなの?」
「二人に嘘はつかないよ。騎士でも向いていないと気配探知を諦める人も、普通にいるんだ」
「そうなんだ…?」
「へー僕、それは知らなかったよ」
頑張らないとと張り切る二人に、さっきからドアの隙間からこちらを見ていたウィル兄さんが声をかけてきた。
「三人が来たなーと思ってジルと話してたのになかなか入って来ないから、待ちくたびれてこっちから開けちゃったよー?」
悪戯っぽく笑いながらそう声をかけてきたのは、ウィル兄さんだ。ドアにもたれるようにして立つウィル兄さんの後ろから、ジルさんもこっそりと心配そうにこちらを覗いている。
「すまない。アキトとキースと話していたんだ」
「謝らなくて良いんだけどねーちなみにその会話も聞いちゃったよ」
「あの…アキトさん、キースくん。気配探知というのは、段階的に徐々に成長するものなんです。だからお二人はそのまま訓練を続けていけば、大丈夫ですよ。きっといつかハルさんのようにできる日が来ますからね」
ちなみに私も上達するまでは、かなりの時間がかかりましたからね。ジルさんは遠い目をしながらも、アキトとキースに優しくそう声をかけてくれた。
俺がこれ以上あれこれと言葉を重ねるよりも、ジルさんが言ってくれた方が説得力があるな。アキトとキースもジルさんの言葉なら信じられると思ったのか、ホッとした様子で笑顔を浮かべた。
「うん!ありがとう、ジルさん」
「ジルさん、励ましてくれてありがとうございます」
これからも頑張りますと答えたアキトと、絶対に諦めないよと伝えたキースに、ジルさんはふわりと優しい笑みを見せている。
もしかしてこれは妬いたとウィル兄が騒ぐやつかと少しだけ心配になったが、俺の予想に反してウィル兄は幸せそうに呟いた。
「あーアキトくんとキースに優しいジルも良いなーその優しい笑みがたまらないんだよねー」
「そういうのは良いので、ほら中に入りますよ」
「はーい!」
ニコニコ笑顔でジルさんの後を追ったウィル兄に続いて、俺達も部屋の中へと入っていく。
「アキトくん、キース、ハルも、おはよう」
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「おはよう、ファーガス兄さん」
「おはよー!」
ファーガス兄さんとマチルダさんは挨拶を済ませると、ちゃんと眠れたかとか、食事はしたのかとか色々と二人に尋ね始めた。
たぶんこれは、盗賊に攫われたという事実が、二人の心の傷になっていないかを探っているんだろうな。
そう分析しながら、俺は笑顔で答える二人の姿を眺めていた。
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