生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,160 / 1,561

1159.【ハル視点】噂の出所

 探索隊参加者たちに感謝の気持ちを伝えたいというアキトとキースの願いは、それから数日をかけて叶えられる事になった。

「おはよう、キースくん!」
「アキトくん、ハル兄!おはよう」

 今日も二人と一緒で嬉しいと、キースは朝からニコニコと明るい笑顔でご機嫌だ。うん、今日もキースは可愛いし、そんなキースに嬉しそうに笑っているアキトも可愛い。

 今日の二人の日程に参加するのは、当然だが絶対に参加するアキトとキース、そして案内役をしようかと立候補した俺も一緒だ。

 さすがにあんな事があった後で、二人だけで行動して良いよと送り出してあげられるほど俺の心は強くなかった。

 せめて一緒にいたいと思っての立候補だったわけだが、俺の参加は嬉しそうな二人分の笑顔と共に好意的に受け入れられた。

 アキトは当然だがリストにある人の名前と、その人の顔が一致しない。その上キースもも何人かは分かるが、知らない名前もたくさんあるという状態らしい。

 もし探索隊の結成の時に挨拶をして回っていなければ、俺も一致しない人が何人かはいたかもなと思う顔ぶれだったから無理も無いんだが。

 無事に案内役という役目を貰えた俺は、今日も二人と一緒に領主城内を歩いている。

 

「今の時間なら使用人の多くが、その部屋にいると思います」

 そう教えてくれたのは、初日に挨拶をした七人のなかにいた侍従だった。偶然すれ違った俺達の会話から、これから感謝の言葉を言って回る気なんだと気づいて声をかけてくれたようだ。

 それならまずはそこに向かおうかと顔を出してみた待機部屋には、使用人たちはたしかにたくさんいた。だがあの探索隊に参加していた人は、一人しかいなかった。

 いきなり前触れもなく待機部屋に現れた俺達に驚いただろうに、使用人たちは優しく親身になってアキトとキースの話を聞いてくれた。こういう時にうちの使用人はすごいと思うんだよな。

 今も行先を聞いたアキトに、それぞれが自分の仕事をしているから、どこにいるかまでは使用人仲間でも把握していないんだと困り顔で説明している。急用なら魔道具を使って呼び出せますよと言われたようだが、アキトとキースは大丈夫ですと断っている。

 お礼を言うのに呼びつけるのはとか考えているんだろうな。

「次は…そうだな。騎士団本部に行ってみようか」
「そうだねーそうしよ!」
「えっと…それじゃあこっち?」

 アキトは少し不安そうにしながらも、そっと廊下を指差した。きちんと城の中でも道順を覚えようとしているんだよな。

「ああ。アキトの言った廊下であってるよ」
「アキトくん、すごいね!」
「ありがとう」

 わいわいとそんな事を話しながら騎士団本部を目指していると、裏廊下に入ろうとしている侍従の姿が目に止まった。

 あれは…。そう思った俺は咄嗟に口を開いた。

「クリース!」

 俺の声が聞こえたのか、クリースはぴたりとその場で足を止めてくれた。

「何かご用でしょうか?」
「あ、探索隊に参加してくれてた人ですよね?」
「…はい、たしかに参加はさせて頂きましたが…」

 困惑顔のクリースに、アキトとキースは二人揃って感謝の言葉を伝えた。最初はさすがに戸惑った様子だったが、クリースはあっさりと二人の礼の言葉を受け入れた。さすがクリースは空気を読むのが上手いな。

 これで二人は終わったなと思いながら向かった騎士団本部では、ちょうど会議と訓練中だと言われ誰にも会えなかった。

 ここでも『会議にも訓練にもあなた方ならご参加して頂けますよ』とそう言ってはもらったんだが、アキトとキースはそれもあっさりと断った。二人がそうすると決めたなら、俺も文句を言うつもりは無い。

「空ぶりか…」
「でも会議と訓練に入っていくのは違う気がするんだよね」
「うん、邪魔は良く無いよね」

 二人らしいなと感心しながら今度は門近くにある衛兵詰め所にも行ってみたが、そちらもまさかの全員が不在という事態だった。

「わざわざ来て頂いたのは…お礼の件ですよね?」

 そう俺達に尋ねてくれたのは、一番最初に挨拶した七人のうちの一人――お酒が苦手だという若い衛兵だった。

「ああ、そうなんだが…その顔は、不在なんだな」
「はい。その…昨日は思いっきり飲んで食べて楽しんだから、今日は思いっきり体を動かしたいなと…」

 そう言ってベテラン衛兵たちは、揃って街道の巡回に出てしまっているらしい。あの人たちらしいなと俺はむしろ笑ってしまった。

「足を運んで頂いたのに、申し訳ありません」

 申し訳なさそうにそう呟いた若い衛兵も、もちろん巡回に出ているベテラン衛兵たちも何も悪くない。三人がかりで必死で宥めたが、あれはなかなかに大変な作業だった。



 結果として、初日に感謝の言葉を伝える事ができた人は、まさかの二人だけだった。つまりまだ十三人にしか言えてないのか。

 これはかなりの長期戦になるだろうな。そう思って覚悟はしていたんだが、二日目からは一気に様子が変わった。

 というのも、既にお礼を受け取った人達が、アキトとキースがお礼を直接言いたいと参加者を探して回っているらしいという噂をわざと周りに広めてくれたようだ。

 うーん、これは多分ジルさんとウィル兄、あとは待機部屋にいた使用人たちの働きかな。俺としては助かるし、アキトとキースも噂なら仕方ないと割り切ったようだ。

 『探索隊に参加してましたー騎士団所属、誰誰です』と名乗りをする参加者や、『ここにいるこいつも、探索隊に参加してましたよー』と周りの人から告げられるようになった。

 そうこうしているうちに、あっという間にリストの名前にずらりと〇が並ぶ事になった。

 噂のおかげで、思ったよりも早く片付いたな。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。