生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1161.気づかい

 俺を背中に乗せたタユさんは、一歩ずつまるで何かを確かめるようにゆっくりと運動場のような周回コースを歩きだした。

 ただそれだけの動きなのに、俺は既にワクワクが止まらなくなった。

 速度だけで言うなら、自分で歩いた方がよっぽど早いってぐらいゆっくりめのスピードなんだけどね。でも視点がいつもよりも高いからか、すごく遠くまで綺麗に景色が見渡せるんだ。

 ここの周回コースの周りにも、厩舎の周りと同じく馬が好きだっていう果物の木とかがずらりと並んでるんだよね。

 これはきっと休憩とかの時に馬が楽しめるようにって、ギュームさんが植えたんだと思うんだけど。その木になっているカラフルな果物が、景色のアクセントになっていてなかなかに華やかだ。

 俺とタユさんは、ゆっくりとコースを一周してスタート地点まで戻ってきた。

 スタート地点ではまだ馬に乗らずに俺たちの様子を見守ってくれていたハルとキースくん、そしてギュームさんの三人とシュリくん、イワンさん、フェレさんの三頭の馬が出迎えてくれた。

「おかえり、アキト、タユ」
「ハル、ただいま」

 俺達が話し始めると、タユさんはぴたりとその場で立ち止まってくれた。すごい。タユさんが優しい。

「アキトくん、ちゃんと乗れてるね!」

 キースくんからは、初めての一人乗りなのにすごいよって満面の笑みで褒めてもらっちゃったよ。でもこれは、さすがにありがとうとは言い難いな。

「いや、すごいのはタユさんだよ」

 だって俺、本当に何一つ指示とか出してないからね。ただ乗ってるだけっていう状態でこれだから、すごいのはタユさんで間違いない。

「えータユさんもすごいけど、乗れてるのはアキトくんだよ?」
「え…」

 キースくんは、だよね、ハル兄?とハルに同意を求めた。

「ああ、タユもすごいが、アキトもすごいよ」

 兄弟二人揃って笑顔でそう言われてしまうと、反論も出来なくなるな。俺は曖昧に頷いてごまかす事にした。

「アキトさん、今はまだ緊張していますか?」

 不意に投げかけられたギュームさんからの質問に、俺は少しも悩まずにすぐに笑顔で答えた。

「いえ、今はワクワクしてます!すっごく楽しいです!」
「それは良かったです。では次は皆でもう一周行きましょうか?」
「はい!」

 どうやら次からは、皆も一緒に周回コースに付き合ってくれるみたいだ。

「イワン、よろしくな」

 そう声をかけたハルは、軽々と体を持ち上げるとイワンさんの背中にすとっとおさまった。すごいなと感心していると、シュリくんによろしくねと声をかけたキ―スくんも軽やかにその背中に飛び乗る。

 ギュームさんはと視線を向ければ、フェレさんと視線を合わせてよろしくと声をかけてから軽々と慣れた様子で背中によじ登った。

 うーん、みんな乗るの上手だな。俺だけ台を使って乗ったってのがちょっと――いや、実はかなり悔しい。

 俺も一人でも何も使わずに、そういう乗り方ができるようになりたいな。こればっかりは練習するしかないか。



 全員が揃うのを待ってスタートした二周目は、すこし速度があがった。

 さっきまではかなり慎重なゆっくりめの歩き方だったけど、今は普通に早歩きぐらいの速度だ。

 俺は今も何の指示も出してないし、他の皆はタユさんの速度に合わせてくれてる。つまりこれは、タユさんの優しさで速度が決まってるって事だよね。

 俺が初心者だから怖がらせないようにってゆっくりスタートしてくれて、さっき楽しいって答えたのを聞いて怖がってないならって速度をあげてくれた。

 そういう事だと思う。

 何の指示も出してないのに、初心者の俺の事を気づかってこまかく速度を調整してくれるって、タユさんちょっと優しすぎない?

 あまりの優しさに驚きながら、俺は思わずタユさんに声をかけた。

「タユさん、初心者の俺の事を気づかってくれてありがとう」

 心からの感謝の言葉に、タユさんからはヒヒンという返事が返ってきた。

「アキトはのりかたがうまいって、タユがほめてるよ」

 すかさず通訳してくれたシュリくんにお礼を言ってから、俺はタユさんがすごいんだよともう一度そう返した。
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