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1162.止まらない
「アキト、タユがしっかりつかまっててだって」
「分かった!シュリくん、通訳ありがとう!」
「へへーどういたしまして」
アキトにお礼を言われちゃったと嬉しそうなシュリくんに、キースくんはニコニコと笑顔を浮かべながら良かったねーと返している。
和んでしまいそうな二人のやり取りを聞きながら、俺はタユさんに言われた通りに鞍の端っこをきゅっと握りなおした。
「タユさん、しっかりつかまりました!」
そう声をかければ、タユさんは今度は駆け足で走り出した。
心配したハルがすかさず隣を並走してついてきてくれてるんだけど、俺はもう笑い声を止められずにいた。
だってこれ、すっごく楽しい。
タユさんの走り方的にまだまだ余裕がありそうだから、本気で走ってるってわけじゃなさそうだ。それなのに、俺が全力で走るよりも断然速いんだ。
ひゅんひゅんと通り過ぎていく景色に、俺の笑い声だけが響いている。
楽しい。これは本当に楽しい。風もすごく気持ち良いし、俺が想像していたよりもずっと安定してるから、落ちないか不安とかも無い。まあ明日になったら色んな場所が筋肉痛になりそうだな――とは思うけどね。
でもその考えも一瞬で消え去ってしまった。後の事は後で考えよう。
「アキト、楽しそうだねー?」
叫ぶようにそう声をかけてきたハルに、俺は笑顔で答える。
「うん、すっごく楽しい!タユさん、最高!」
思わずそう声に出せば、タユさんはヒンッと一鳴きしてから更に速度を上げるという大サービスをしてくれた。
俺は更に楽しくなっちゃって、後になってから考えるとちょっと恥ずかしいぐらい笑い続けちゃったよね。冷静になってから騒がしくてごめんなさいってみんなには謝ったんだけどね、ハルもキースくんもギュームさんも、それにシュリくんも、楽しそうで何よりって言ってくれたよ。みんなが優しくて本当に良かった。
数回コースを駆け足で周回した後、タユさんは少しずつ速度を落としてくれた。ちなみに立ち止まってくれたのは、きちんとスタート地点の前だったよ。やっぱりタユさんは優しいし、気配りのできる人――じゃなくて気配りのできる馬だ。
馬って乗るのも難しいけど、下りるのも結構大変なんだな。ハルに手を貸してもらってようやく何とか下りられたよ。
「素晴らしかったです!とても初めての乗馬とは思えなかったですよ」
ギュームさんは、そう言って褒めれてくれた。
「いえ、タユさんがすごかったから…」
本当にありがとうございますと隣にいたタユさんに声をかければ、ちいさくひとつ嘶いて答えてくれた。
「アキトはほんとうにのるのがうまいっていってるよ?」
さっきも言われたけど、乗るのが上手いって言われてもそうでしょう?とはさすがに言えないよね。
もっとこう的確に指示を出したりとかが出来てたなら乗るのが上手いって言われるのも分かるんだけど、本当に俺はただ乗ってるだけだった。
でも何というか、これ本当に心からそう思って言ってくれてるって感じがするんだよね。ただの俺の直感だけど、お世辞とかそういう事をタユさんは言わない気がする。
不思議に思った俺は、すこし首を傾げながら尋ねてみた。
「俺本当にただ乗ってるだけだったのに、上手いんですか?」
「うん、すごくうまいって」
初めての乗馬ならもっと怖がられるのが普通だと、タユさんはそう続けたらしい。
あー…何かだいぶ前にハルから聞いたような気がする。この世界の馬は、俺の世界とは違って魔物なんだよね。だから、普通は馬に対して恐怖心を抱いてしまうとか言ってたような…?
たしかストファー魔道具店のクリスさんとカーディと一緒に、馬車に乗ってた時だったと思う。ブレイズ達が馬に乗ってたのを感心して見てた時に、そんな話をしてもらった記憶がある。
「ウマたちは乗り手の感情に敏感なんです。恐怖心を制御できていなければ、そもそも乗せてすらもらえません」
ギュームさんは真剣な表情でそう教えてくれた。
「え、そうなんですか?」
「ああ。恐怖心を捨てるのが理想だが、そこまでできないという騎士は、恐怖心を制御してきちんとウマに指示を出す事で信頼してもらえるように務めるんだよ」
ハルも横からそう教えてくれた。
へーそういうものなんだ。でも、タユさんはずっと優しいからな。怖くなんて無いと思うんだけど。
「タユは優しいから怖くないとか考えてた?」
ふわりと笑ったハルの言葉に、俺は驚いてしまった。心の声が外に出てたわけじゃないよね。
「分かった!シュリくん、通訳ありがとう!」
「へへーどういたしまして」
アキトにお礼を言われちゃったと嬉しそうなシュリくんに、キースくんはニコニコと笑顔を浮かべながら良かったねーと返している。
和んでしまいそうな二人のやり取りを聞きながら、俺はタユさんに言われた通りに鞍の端っこをきゅっと握りなおした。
「タユさん、しっかりつかまりました!」
そう声をかければ、タユさんは今度は駆け足で走り出した。
心配したハルがすかさず隣を並走してついてきてくれてるんだけど、俺はもう笑い声を止められずにいた。
だってこれ、すっごく楽しい。
タユさんの走り方的にまだまだ余裕がありそうだから、本気で走ってるってわけじゃなさそうだ。それなのに、俺が全力で走るよりも断然速いんだ。
ひゅんひゅんと通り過ぎていく景色に、俺の笑い声だけが響いている。
楽しい。これは本当に楽しい。風もすごく気持ち良いし、俺が想像していたよりもずっと安定してるから、落ちないか不安とかも無い。まあ明日になったら色んな場所が筋肉痛になりそうだな――とは思うけどね。
でもその考えも一瞬で消え去ってしまった。後の事は後で考えよう。
「アキト、楽しそうだねー?」
叫ぶようにそう声をかけてきたハルに、俺は笑顔で答える。
「うん、すっごく楽しい!タユさん、最高!」
思わずそう声に出せば、タユさんはヒンッと一鳴きしてから更に速度を上げるという大サービスをしてくれた。
俺は更に楽しくなっちゃって、後になってから考えるとちょっと恥ずかしいぐらい笑い続けちゃったよね。冷静になってから騒がしくてごめんなさいってみんなには謝ったんだけどね、ハルもキースくんもギュームさんも、それにシュリくんも、楽しそうで何よりって言ってくれたよ。みんなが優しくて本当に良かった。
数回コースを駆け足で周回した後、タユさんは少しずつ速度を落としてくれた。ちなみに立ち止まってくれたのは、きちんとスタート地点の前だったよ。やっぱりタユさんは優しいし、気配りのできる人――じゃなくて気配りのできる馬だ。
馬って乗るのも難しいけど、下りるのも結構大変なんだな。ハルに手を貸してもらってようやく何とか下りられたよ。
「素晴らしかったです!とても初めての乗馬とは思えなかったですよ」
ギュームさんは、そう言って褒めれてくれた。
「いえ、タユさんがすごかったから…」
本当にありがとうございますと隣にいたタユさんに声をかければ、ちいさくひとつ嘶いて答えてくれた。
「アキトはほんとうにのるのがうまいっていってるよ?」
さっきも言われたけど、乗るのが上手いって言われてもそうでしょう?とはさすがに言えないよね。
もっとこう的確に指示を出したりとかが出来てたなら乗るのが上手いって言われるのも分かるんだけど、本当に俺はただ乗ってるだけだった。
でも何というか、これ本当に心からそう思って言ってくれてるって感じがするんだよね。ただの俺の直感だけど、お世辞とかそういう事をタユさんは言わない気がする。
不思議に思った俺は、すこし首を傾げながら尋ねてみた。
「俺本当にただ乗ってるだけだったのに、上手いんですか?」
「うん、すごくうまいって」
初めての乗馬ならもっと怖がられるのが普通だと、タユさんはそう続けたらしい。
あー…何かだいぶ前にハルから聞いたような気がする。この世界の馬は、俺の世界とは違って魔物なんだよね。だから、普通は馬に対して恐怖心を抱いてしまうとか言ってたような…?
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「え、そうなんですか?」
「ああ。恐怖心を捨てるのが理想だが、そこまでできないという騎士は、恐怖心を制御してきちんとウマに指示を出す事で信頼してもらえるように務めるんだよ」
ハルも横からそう教えてくれた。
へーそういうものなんだ。でも、タユさんはずっと優しいからな。怖くなんて無いと思うんだけど。
「タユは優しいから怖くないとか考えてた?」
ふわりと笑ったハルの言葉に、俺は驚いてしまった。心の声が外に出てたわけじゃないよね。
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