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1163.誉め言葉
「え、よく分かったね」
思わずまじまじとハルの顔を見つめながらぽつりとそう呟けば、ハルはふふと楽し気に声をあげて笑った。アキトの事だから分かるんだよと、ハルは悪戯っぽく笑いながら続ける。
ハルの悪戯っぽい笑顔、久しぶりに見た気がするな。
「アキトに対しては本当に優しいから、そう思うのも無理は無いと思うけど…タユは比較的気難しくないウマってだけで、人の選り好みは普通にするからね」
ハルがそう言った瞬間、タユさんが小さな低い声でヒンッと一声嘶いた。
「ハル、タユがよけいなこというなって、いってるよー?」
シュリくんは少し言い難そうにしながらも、タユさんの言葉を教えてくれた。
「そうか。教えてくれてありがとうな、シュリ」
ハルは急に不機嫌そうになったタユさんに、特に驚いた様子もなかった。
ただシュリくんに向かって笑顔を見せながらお礼を告げてから、今度は真剣な表情でタユさんに向き直った。
ちょっと緊迫した空気だと思いながら見つめていると、ハルはタユさんの目をまっすぐ見つめながら口を開いた。
「タユ、これはアキトはすごいんだって事をアキト本人に理解してもらうためだから――すこしだけ譲歩してくれないか?タユがアキトに優しくしてくれているのは分かってるし、本当に感謝してる」
タユさんは少し考えてから、ハルに向かって短く答えた。
「タユがわかったって!」
「ありがとう、タユ」
えっと…タユさんは何かを譲歩してくれる事になったらしい。でも何かって一体何だろうと首を傾げる俺に、ハルは優しく説明してくれた。
「ウマの事を怖いと思う人は、アキトが思っているよりも多いんだ。ウマは強いから、本気になれば人なんてあっさりと殺せてしまうからね」
「うん、きっと本気で戦ったら強いんだろうなって事は、俺にも分かるよ」
魔物と対峙してるうちに、そういう感覚はちゃんと成長してきてるからね。でもだからといって、ウマが怖いとはやっぱり俺には思えないんだけどね。
正直に言うと何を考えているのか分からない盗賊とかの方が、俺にとってはよっぽど怖い相手だったりする。
全く怖いと思えないんだけど、どうしようか。
「あ、これは怖がって欲しいとかそういう話じゃないから安心して」
俺の気持ちが伝わったのか、ハルは優しい笑顔でそう言った。
「そもそも辺境にいるウマに限らず、人と一緒にいる事を自分で選んだウマたちは、ただ怖がるだけなら乗せてもらえないぐらいで攻撃したりはしないよ。ね、ギューム」
静かに俺達の会話を聞いていたギュームさんは、笑顔で頷いた。
「はい。ウマが攻撃をしようとするのは、自分または自分の選んだ乗り手に敵意や憎しみを抱いている時ぐらいです」
へぇ、そうなんだ。敵意や憎しみを向けられた相手だけを攻撃するっていうなら、それはもう仕方ないような気もする。魔物がたくさんいるこの物騒な世界で、自分の身を自分で守ってるってだけの事だもんね。
「アキトがどう思うかは置いておいて、怖いと思う人がいる理由は分かった?」
「うん、一応…?」
納得はできてないけど、そういう人がいるんだなって事は分かったと思う。
「普通はそういう反応をするんだって事を踏まえた上で聞いて欲しいんだけど、ウマにとって一番大事なのは乗り手の感情なんだ」
「感情…?」
「そう、感情」
乗り手の気持ちに敏感って、そういう意味だったのか。乗ってる人の感情が分かるって事?
「シュリ、通訳をして欲しいんだけど…」
「うん、なぁに?」
気づけばキースくんと二人で近くの花を見つめていたシュリくんは、さっとこちらを振り返った。
「タユ、アキトの感情はどうだった?」
タユさんは少しも悩まずにすぐにハルの質問に答えてくれた。
「…えっとねーきらきらしてたっていってるよ」
きらきら?
「いつもウマのことをきれいだーとかかっこいいとかおもってるし、タユのことをしんらいしてくれててうれしかったって」
あ、綺麗だって思ってたのもバレてるのか。いや、別に良いんだけど。馬はみんな綺麗だし格好良いっていつも思ってるから。
「えっと…俺の感情がタユさんには伝わってたって事?」
「そう。それがタユの言う乗るのが上手に繋がるんだ」
馬からすれば、自分に対してキラキラした感情を抱いている相手を乗せて走るというのは、かなり楽しい時間なんだって。
「しじとかはね、べつになくてもいいんだよ。しんじてまかせてくれるひとには、ぼくたちもぜんりょくでこたえたくなるの」
シュリくんは楽しそうにそう教えてくれた後、だからキースを乗せて走るのも楽しいんだとぴょんっとその場で小さく跳ねた。
「僕もシュリくんに乗るとすっごく楽しいよ」
「やったーもういっしゅういく?」
「うん、何周でも!」
そっか。そういう意味での俺の乗り方が上手って話だったのか。
「…タユさん、褒めてくれてありがとうございます」
やっとさっきの誉め言葉を、受け入れる事ができそうだよ。
思わずまじまじとハルの顔を見つめながらぽつりとそう呟けば、ハルはふふと楽し気に声をあげて笑った。アキトの事だから分かるんだよと、ハルは悪戯っぽく笑いながら続ける。
ハルの悪戯っぽい笑顔、久しぶりに見た気がするな。
「アキトに対しては本当に優しいから、そう思うのも無理は無いと思うけど…タユは比較的気難しくないウマってだけで、人の選り好みは普通にするからね」
ハルがそう言った瞬間、タユさんが小さな低い声でヒンッと一声嘶いた。
「ハル、タユがよけいなこというなって、いってるよー?」
シュリくんは少し言い難そうにしながらも、タユさんの言葉を教えてくれた。
「そうか。教えてくれてありがとうな、シュリ」
ハルは急に不機嫌そうになったタユさんに、特に驚いた様子もなかった。
ただシュリくんに向かって笑顔を見せながらお礼を告げてから、今度は真剣な表情でタユさんに向き直った。
ちょっと緊迫した空気だと思いながら見つめていると、ハルはタユさんの目をまっすぐ見つめながら口を開いた。
「タユ、これはアキトはすごいんだって事をアキト本人に理解してもらうためだから――すこしだけ譲歩してくれないか?タユがアキトに優しくしてくれているのは分かってるし、本当に感謝してる」
タユさんは少し考えてから、ハルに向かって短く答えた。
「タユがわかったって!」
「ありがとう、タユ」
えっと…タユさんは何かを譲歩してくれる事になったらしい。でも何かって一体何だろうと首を傾げる俺に、ハルは優しく説明してくれた。
「ウマの事を怖いと思う人は、アキトが思っているよりも多いんだ。ウマは強いから、本気になれば人なんてあっさりと殺せてしまうからね」
「うん、きっと本気で戦ったら強いんだろうなって事は、俺にも分かるよ」
魔物と対峙してるうちに、そういう感覚はちゃんと成長してきてるからね。でもだからといって、ウマが怖いとはやっぱり俺には思えないんだけどね。
正直に言うと何を考えているのか分からない盗賊とかの方が、俺にとってはよっぽど怖い相手だったりする。
全く怖いと思えないんだけど、どうしようか。
「あ、これは怖がって欲しいとかそういう話じゃないから安心して」
俺の気持ちが伝わったのか、ハルは優しい笑顔でそう言った。
「そもそも辺境にいるウマに限らず、人と一緒にいる事を自分で選んだウマたちは、ただ怖がるだけなら乗せてもらえないぐらいで攻撃したりはしないよ。ね、ギューム」
静かに俺達の会話を聞いていたギュームさんは、笑顔で頷いた。
「はい。ウマが攻撃をしようとするのは、自分または自分の選んだ乗り手に敵意や憎しみを抱いている時ぐらいです」
へぇ、そうなんだ。敵意や憎しみを向けられた相手だけを攻撃するっていうなら、それはもう仕方ないような気もする。魔物がたくさんいるこの物騒な世界で、自分の身を自分で守ってるってだけの事だもんね。
「アキトがどう思うかは置いておいて、怖いと思う人がいる理由は分かった?」
「うん、一応…?」
納得はできてないけど、そういう人がいるんだなって事は分かったと思う。
「普通はそういう反応をするんだって事を踏まえた上で聞いて欲しいんだけど、ウマにとって一番大事なのは乗り手の感情なんだ」
「感情…?」
「そう、感情」
乗り手の気持ちに敏感って、そういう意味だったのか。乗ってる人の感情が分かるって事?
「シュリ、通訳をして欲しいんだけど…」
「うん、なぁに?」
気づけばキースくんと二人で近くの花を見つめていたシュリくんは、さっとこちらを振り返った。
「タユ、アキトの感情はどうだった?」
タユさんは少しも悩まずにすぐにハルの質問に答えてくれた。
「…えっとねーきらきらしてたっていってるよ」
きらきら?
「いつもウマのことをきれいだーとかかっこいいとかおもってるし、タユのことをしんらいしてくれててうれしかったって」
あ、綺麗だって思ってたのもバレてるのか。いや、別に良いんだけど。馬はみんな綺麗だし格好良いっていつも思ってるから。
「えっと…俺の感情がタユさんには伝わってたって事?」
「そう。それがタユの言う乗るのが上手に繋がるんだ」
馬からすれば、自分に対してキラキラした感情を抱いている相手を乗せて走るというのは、かなり楽しい時間なんだって。
「しじとかはね、べつになくてもいいんだよ。しんじてまかせてくれるひとには、ぼくたちもぜんりょくでこたえたくなるの」
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「僕もシュリくんに乗るとすっごく楽しいよ」
「やったーもういっしゅういく?」
「うん、何周でも!」
そっか。そういう意味での俺の乗り方が上手って話だったのか。
「…タユさん、褒めてくれてありがとうございます」
やっとさっきの誉め言葉を、受け入れる事ができそうだよ。
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