生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1164.休憩時間

 ハルの説明でようやく素直にタユさんの誉め言葉を受け入れられた後、俺はすぐにでももう一回タユさんに乗せてもらう気満々だったんだけど、何故かギュームさんに止められてしまった。

「アキト様、続けて乗るのはお勧めできません」

 真剣な表情で言われた俺は、戸惑った。

「え…何か理由が?」
「そろそろ疲れが出てくる頃でしょうから…」
「あ、タユさんの疲れですか?」

 俺は楽しいばっかりだったけど、タユさんは俺を乗せてずっと動いてくれてるんだもんね。それもそうかと慌ててタユさんを見つめれば、シュリくん経由で馬はそんなにひ弱じゃないと返ってきた。

「え…じゃあ…?」

 タユさんが疲れてないなら乗っても良いですかと思わず目を輝かせた俺に、ギュームさんはいえと首を振った。

「疲れが出てくるのはアキト様ですよ」
「え、全然疲れてないですけど…」
「アキト、楽しくて気づいていないだけじゃないか?」

 ハルまでそんな事を言うから驚いたんだけど、キースくんからも結構時間が経ってるからねと言われてしまった。

 慌ててハルの時計の魔道具を見せてもらったら、軽く三時間以上経っててびっくりしたよ。初めての乗馬がすっごく楽しかったから、正直体感時間はそんなになかったんだよね。

 夢中になってたから、全然気づいてなかったよ。もし俺が見てる側でも、続けて乗るのは止めておけば?って言ってたかもしれない。

「こんなに時間経ってたんだ…」
「そうだよ。楽しそうで何よりだけど、すこし休憩しようか?」

 ハルの提案に、ギュームさんはすぐにうんうんと頷いた。

「人もウマも、こういう時に無理をするのは絶対に良く無いですからね。休憩出来る時はした方が良いと思います」

 そこで自然に馬もって言葉がでてくる辺りが、すごくギュームさんらしいなと思ってしまった。もちろん馬には無理をさせても良いとか言われるよりも、そっちの方がよっぽど好感が持てるんだけど。

「それもそうですね。休憩しましょうか」
「僕、お腹減ったなー」

 キースくんはへにゃりと笑いながら、寂しそうにそう呟いた。あー確かにここに来てからずっと動きまわってたもんね。俺もタユさんに乗せてもらってはしゃいでた自覚はあるけど、キースくんもシュリくんと一緒になってはしゃいでたから。

「キースくんも?俺もお腹空いたよ…」

 一緒だねと笑い合っていると、ハルがふふふと笑い声を洩らした。

「乗馬をするとお腹が空くかと思って…」

 そう前置きをしたハルは、さっと魔導収納鞄に手を入れた。みんなの視線が集中するなか、ハルが取り出したのは綺麗な箱に並んだ焼き菓子だった。

 あれ、これって。まじまじと観察している俺に、ハルは楽し気に笑いながら教えてくれた。

「今日はヴェリス婆のお菓子を持って来たんだ」

 自慢げにそう告げたハルが手にしているのは、この前キースくんと二人でお邪魔させてもらったお菓子屋さん、ヴェリス婆さんのお店のものだった。

 あの時買った分は、まさかの攫われたりしたせいでちょっと遅くはなったけどちゃんとハルの家族にお土産として配ったよ。みんな伴侶と食べると喜んでくれた。

 俺もハルと一緒に食べたんだけど、本当にすっごく美味しかった。

「わ!嬉しい!」

 キースくんは嬉しいサプライズに、ニコニコと笑みを浮かべている。 

「ちゃんとキースの好きな花の蜜クッキーもあるよ」
「やったー!ハル兄、大好き!」

 可愛い弟からの大好きに、ハルは嬉しそうに笑って頷いた。

「俺が好きなミニケーキもあるし、アキトが気に入ってたチクの果実のミニケーキもあるよ」
「チクの果実のミニケーキ!」

 俺が一番好きになった、あの焼き菓子だ。

「ありがとう、ハル!」
「どういたしまして」

 ハルはちゃんと、ギュームの好きなハーブ入りのクッキーもあるよと続けていた。ギュームさんはだいぶ恐縮してたけど、一緒にいるのにギュームさんの好きなものだけ無いなんて嫌だもんね。

 そういう気づかいがちゃんとできるハルは、やっぱりすごいなと思う。
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