生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1166.乗り手の好み

 ヴェリス婆さんお手製のお菓子は、今日もやっぱりすごく美味しかった。

 見た目は素朴に見えるのに、すごく手が込んでるんだろうなって思う単純じゃない味なんだよね。

 ハルが気を使って用意してくれたおかげで、それぞれが一番好きなお菓子を、互いにお勧めしながら食べられるっていうのもすごく嬉しかった。

 ギュームさんが好きだっていうハーブ入りのクッキーは、ちょっとしょっぱい風味もあって確かに癖になる味だったよ。

 さっきまではもう一周行きたいって思ってたけど、こうやって休憩してると思ったよりも疲れてたんだなって自覚したよ。甘いものがこんなに染みるって事は、かなり疲れてたんだと思う。

 わいわいとヴェリス婆さんのお菓子の話で盛り上がりながら食べ終えて、今は果実水やお茶を片手にのんびりと休憩中だ。

 みんなの会話が途切れた所で、俺はギュームさんに尋ねた。

「ギュームさん、さっき馬のみんなに出したお肉って――もしかしてそれぞれ違うものでしたか?」

 さっき見てて、ちょっとだけ気になったんだよね。俺の質問に、ギュームさんは嬉しそうに笑って答えてくれた。

「よく気づかれましたね。はい、全員違う種類の肉です」

 タユさんにはマルックスの肉、イワンさんにはウカの肉、そしてフェレさんにはフォレストボアの肉を出したらしい。

「それぞれの一番好きな肉なんですよ」

 やっぱり疲れた時はその馬の好物を食べてもらうのが一番なのでと、ギュームさんは優しい声でそう続けた。うん、馬愛がすごい。

「ギュームはそういうきくばりをしてくれるから、すきだってみんながいってるよ」
「それは嬉しいですね!」

 シュリくんの言葉に、ギュームさんはこれ以上ないほどの満面の笑みで答えた。大好きな馬に好きだと言われたと喜んでいるのが、表情からも弾む声からも伝わってくる。

 その場にいた全員がギュームさんの反応に和んでいると、不意にハルが声をかけてきた。

「それにしても、アキトの乗馬は期待以上だったね」
「…ありがとう?」

 さっきタユさんが褒めてくれたのは、ちゃんと受け入れたからね。否定するのもなとそう答えれば、ハルはそれで良いんだよと言いたげにこくりと頷いてくれた。どうやらこれで合ってたらしい。

「アキトなら、きっとどのうまにものれるってタユがいってるよ」
「え…いやいや、さすがにそれは…」

 誉めすぎじゃないかなとシュリくんに返せば、タユさんは不満そうに嘶いた。

「えっとねーウマにもそれぞれすきなたべものがあるように、のるひとへのこのみもあるんだっていってる」

 タユさんは乗り手の感情を一番重視するタイプだけど、指示を的確に出す事を重視するタイプのイワンさんのような馬もいるんだと説明は続いた。

 へーそっか、イワンさんは指示を的確に出してくれる乗り手が好きなのか。じゃあハルとは相性抜群なのかもしれないな。

 大丈夫、さすがに馬相手に妬いたりしないよ。

 逆にさっきからすごく静かで全然会話に参加してこないフェレさんみたいに、人見知りで慣れた相手だけを乗せたいって馬もいるらしい。

 まあ個性があるんだから、それぐらいの好き嫌いはあるよね。

 ギュームさんも感覚として何となくなら理解してはいたらしいけど、こうしてはっきりとウマの気持ちを言葉にされたのは初めてだそうだ。今はすごく興味深そうに、いそいそとメモを取りながら聞いている。

 でもそうか、だからタユさんは俺の事を普通に乗せて走ってくれたんだね。

「つまりタユさんと俺は、相性が良かったって事だよね」
「それもあるけど――そういうこのみとはちがうレベルで、てつだいたいっておもうあいてもいるんだよって、タユはいってるよ」

 俺はそうなの?と首を傾げてしまったけど、隣にいたハルが笑いながら口を開いた。

「それがウマを怖がらずに、好意だけを向けてくる相手だって事だろう。アキトの事だよ」
「えっと…???」
「イワン、イワンはアキトを乗せるのは嫌かい?」

 ハルが唐突にそう尋ねたら、イワンさんはすっと俺に顔を近づけてきた。

「なでてっていってる」

 そっと頭を撫でさせてもらうと、イワンさんはひんっとすぐに声をあげた。

「アキトならのせるって」
「え…ありがとうございます」

 それは嬉しいと思わず笑顔で答えれば、イワンさんはもう一度頭をすり寄せてくれた。
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