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1170.【ハル視点】タユとアキト
俺達の前を先導するように歩いていたタユが、不意にヒヒーンと声をあげた。どうかしたかと俺が視線を向けるのとほぼ同時に、シュリが叫んだ。
「アキト、タユがしっかりつかまっててだって」
「分かった!シュリくん、通訳ありがとう!」
「へへーどういたしまして」
一番前はアキトとタユ、その後ろに俺とイワン、ギュームとフェレが横に並んで歩いている。キースとシュリは、少し離れて一番後ろを歩いている。
自由に動けるから一番後ろが良いと自分たちで選んだ位置ではあるが、その分アキトたちとはだいぶ距離が離れている。
それでもシュリは、ウマと人の橋渡しを続けてくれるつもりらしい。
まだ幼いのにすごいなと感心していると、アキトにお礼を言われちゃったと、嬉しそうにキースに報告するシュリの声が背後から聞こえてきた。そっと振り返ってみれば、そこにはニコニコと笑顔を浮かべながら良かったねーと返すキースの姿があった。
なんとも可愛らしい和やかな光景だが、今は二人を見てる場合じゃないな。さっと視線を戻せば、アキトはちょうど鞍の端にある突起を握りなおした所だった。
「タユさん、しっかりつかまりました!」
アキトの返事を聞くなり、タユは今度は一気に加速し駆け足で走り出した。
本気で走ればまだまだ速度が上がるはずだから、まだかなり手加減はしてくれているようだ。それでもやっぱり放っておく事はできなくて、アキトに並走するようにすかさずイワンに指示を出した。
アキトの事だから怖がっているとは思わないが、急な加速に驚いてはいないだろうか。心配した俺が様子を伺うよりも先に、アキトの楽し気な笑い声が聞こえてきた。
声だけでもはしゃいでいるのが分かる、明るく楽しそうな笑い声だ。
うん、これは俺の心配は必要なかったなと一瞬で理解してしまった。まあたとえ必要がなくても、隣を走るのを止めるつもりはないんだが。
今日初めて乗る事になったイワンだが、俺の期待以上に動いてくれている。アキトに何かあっても対処できるように動いているのを理解して、指示を出さなくてもきっちりとアキトとタユの隣を走り続けてくれている。
後でイワンへの感謝の言葉を、シュリに頼んで伝えてもらうのも良いかもな。そんな事を考えながら、俺はアキトをちらりと見た。
今もニコニコと笑顔を浮かべているアキトは、すごいすごいと声をあげてはしゃいでいる。聞いているこっちまで楽しくなってくるような、そんな楽し気な笑い声だ。
「アキト、楽しそうだねー?」
叫ぶように大きな声でそう話かければ、アキトはこちらを見て笑顔で答える。
「うん、すっごく楽しい!タユさん、最高!」
心からの気持ちがこもったアキトの褒め言葉に、タユはヒンッと一鳴きしてから更に速度を上げた。
俺にはウマの言いたい事は分からないんだが、今のはきっと褒めてくれてありがとうと言ったんだろうなと簡単に予想ができた。
速度が上がっても、アキトは怖がるどころか更に楽しそうになっていく。きちんとアキトの様子を伺っていたタユも、怖がる様子が無いからとどんどん張り切っているのが分かる。
まあアキトもタユも楽しそうで何よりだ。
順路通りに駆け足で何周か回った後、タユは少しずつ速度を落としていった。そろそろ休憩をした方が良いという、タユの判断だろう。
いくらウマに乗るのを楽しめていると言っても、確実に騎乗の疲れは来るからな。確かにちょうど良い頃合いだと思う。
全員がウマから下りるのを待って、ギュームが口を開いた。
「素晴らしかったです!とても初めての乗馬とは思えなかったですよ」
本当の初心者は、ウマにすこし近づけただけでも褒められるぐらいだからな。アキトみたいに最初から乗る事ができて、しかも走るウマの背中で笑えるようなやつなんて俺も今まで一度も見た事がない。
「いえ、タユさんがすごかったから…」
アキトはそう言うと、本当にありがとうございますと隣にいたタユに声をかけた。そこでお礼を言うのが、アキトだよな。
タユはちいさくひとつ嘶いて答えた。
「アキトはほんとうにのるのがうまいっていってるよ?」
シュリは嬉しそうに笑いながらそう橋渡しをしてくれたが、アキトは不思議そうに首を傾げた。
「俺本当にただ乗ってるだけだったのに、上手いんですか?」
「うん、すごくうまいって」
初めての乗馬ならもっと怖がられるのが普通だと、タユはそう続けた。まあそうだよな。むしろこんな風に怖がられない方が、珍しいだろう。
「ウマたちは乗り手の感情に敏感なんです。恐怖心を制御できていなければ、そもそも乗せてすらもらえません」
ギュームは真剣な表情でそう説明している。
「え、そうなんですか?」
「ああ。恐怖心を捨てるのが理想だが、そこまでできないという騎士は、恐怖心を制御してきちんとウマに指示を出す事で信頼してもらえるように務めるんだよ」
俺がそう口を挟めば、アキトはん?と首をさらに傾げた。これはきっと――。
「タユは優しいから怖くないとか考えてた?」
笑いながらそう尋ねれば、アキトは目をまん丸にして俺を見た。何で分かったのって顔だな。
「アキト、タユがしっかりつかまっててだって」
「分かった!シュリくん、通訳ありがとう!」
「へへーどういたしまして」
一番前はアキトとタユ、その後ろに俺とイワン、ギュームとフェレが横に並んで歩いている。キースとシュリは、少し離れて一番後ろを歩いている。
自由に動けるから一番後ろが良いと自分たちで選んだ位置ではあるが、その分アキトたちとはだいぶ距離が離れている。
それでもシュリは、ウマと人の橋渡しを続けてくれるつもりらしい。
まだ幼いのにすごいなと感心していると、アキトにお礼を言われちゃったと、嬉しそうにキースに報告するシュリの声が背後から聞こえてきた。そっと振り返ってみれば、そこにはニコニコと笑顔を浮かべながら良かったねーと返すキースの姿があった。
なんとも可愛らしい和やかな光景だが、今は二人を見てる場合じゃないな。さっと視線を戻せば、アキトはちょうど鞍の端にある突起を握りなおした所だった。
「タユさん、しっかりつかまりました!」
アキトの返事を聞くなり、タユは今度は一気に加速し駆け足で走り出した。
本気で走ればまだまだ速度が上がるはずだから、まだかなり手加減はしてくれているようだ。それでもやっぱり放っておく事はできなくて、アキトに並走するようにすかさずイワンに指示を出した。
アキトの事だから怖がっているとは思わないが、急な加速に驚いてはいないだろうか。心配した俺が様子を伺うよりも先に、アキトの楽し気な笑い声が聞こえてきた。
声だけでもはしゃいでいるのが分かる、明るく楽しそうな笑い声だ。
うん、これは俺の心配は必要なかったなと一瞬で理解してしまった。まあたとえ必要がなくても、隣を走るのを止めるつもりはないんだが。
今日初めて乗る事になったイワンだが、俺の期待以上に動いてくれている。アキトに何かあっても対処できるように動いているのを理解して、指示を出さなくてもきっちりとアキトとタユの隣を走り続けてくれている。
後でイワンへの感謝の言葉を、シュリに頼んで伝えてもらうのも良いかもな。そんな事を考えながら、俺はアキトをちらりと見た。
今もニコニコと笑顔を浮かべているアキトは、すごいすごいと声をあげてはしゃいでいる。聞いているこっちまで楽しくなってくるような、そんな楽し気な笑い声だ。
「アキト、楽しそうだねー?」
叫ぶように大きな声でそう話かければ、アキトはこちらを見て笑顔で答える。
「うん、すっごく楽しい!タユさん、最高!」
心からの気持ちがこもったアキトの褒め言葉に、タユはヒンッと一鳴きしてから更に速度を上げた。
俺にはウマの言いたい事は分からないんだが、今のはきっと褒めてくれてありがとうと言ったんだろうなと簡単に予想ができた。
速度が上がっても、アキトは怖がるどころか更に楽しそうになっていく。きちんとアキトの様子を伺っていたタユも、怖がる様子が無いからとどんどん張り切っているのが分かる。
まあアキトもタユも楽しそうで何よりだ。
順路通りに駆け足で何周か回った後、タユは少しずつ速度を落としていった。そろそろ休憩をした方が良いという、タユの判断だろう。
いくらウマに乗るのを楽しめていると言っても、確実に騎乗の疲れは来るからな。確かにちょうど良い頃合いだと思う。
全員がウマから下りるのを待って、ギュームが口を開いた。
「素晴らしかったです!とても初めての乗馬とは思えなかったですよ」
本当の初心者は、ウマにすこし近づけただけでも褒められるぐらいだからな。アキトみたいに最初から乗る事ができて、しかも走るウマの背中で笑えるようなやつなんて俺も今まで一度も見た事がない。
「いえ、タユさんがすごかったから…」
アキトはそう言うと、本当にありがとうございますと隣にいたタユに声をかけた。そこでお礼を言うのが、アキトだよな。
タユはちいさくひとつ嘶いて答えた。
「アキトはほんとうにのるのがうまいっていってるよ?」
シュリは嬉しそうに笑いながらそう橋渡しをしてくれたが、アキトは不思議そうに首を傾げた。
「俺本当にただ乗ってるだけだったのに、上手いんですか?」
「うん、すごくうまいって」
初めての乗馬ならもっと怖がられるのが普通だと、タユはそう続けた。まあそうだよな。むしろこんな風に怖がられない方が、珍しいだろう。
「ウマたちは乗り手の感情に敏感なんです。恐怖心を制御できていなければ、そもそも乗せてすらもらえません」
ギュームは真剣な表情でそう説明している。
「え、そうなんですか?」
「ああ。恐怖心を捨てるのが理想だが、そこまでできないという騎士は、恐怖心を制御してきちんとウマに指示を出す事で信頼してもらえるように務めるんだよ」
俺がそう口を挟めば、アキトはん?と首をさらに傾げた。これはきっと――。
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