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1175.【ハル視点】乗り方
シュリ経由で改めて許可を取ってから、アキトはイワンの頭を優しく撫でている。その手つきがあまりにも優しそうで、撫でられているイワンがあまりにも幸せそうで思わず目が離せなくなってしまう。
イワン相手に妬かないと決めたばかりなのにな。ままならない感情に思わず苦笑していると、ギュームが口を開いた。
「フェレはどう?アキトさんを乗せられるかな?」
なるほど。俺の質問の意図を理解した上で、どうやらフェレにも尋ねてくれるつもりらしい。
ギュームの察しの良さに感謝しながらフェレの答えを待っていたんだが、一番最初に反応したのは質問されたフェレ本人ではなくアキトだった。
「えっ…!?」
そんな声をもらしたアキトはかなり驚いているらしく、大きく見開いた目でまじまじとギュームを見つめている。
ああ、そういえばタユがさっき言ってたな。フェレは乗る人を選ぶぐらいの人見知りだと。それを気にしているのかと俺が気づいた時には、アキトは口を開いていた。
「あの、イワンさんのおかげで乗せてくれる馬もいるんだってもう分かりましたから、フェレさんに無理して貰わなくても大丈夫ですよ…?」
明らかにフェレの事を気づかってそう言っているのが分かる発言に、フェレはぶんぶんと首を振った。
「あ、フェレもやってみるっていってるよ」
「え、本当に良いんですか?」
上目遣いに尋ねたアキトに、フェレはそっと目線を合わせた。
「…うん、フェレはやってみたいらしいよ」
それなら文句は無いけどとアキトが困り顔で呟いた瞬間、イワンはすっと下がって場所を空けた。空気が読めるウマなんだな。
フェレは恐る恐る近づいていくと、アキトの顔の近くに自分の顔をそっと寄せた。
かなりゆっくりな動きだが、アキトは急かすでもなくむしろぴたりと動きを止めてフェレを待っている。
ちらりとギュームの顔を見てみれば、柔らかく微笑んでいた。アキトのウマへの気配りが、同じウマ好きとして嬉しいんだろう。
そう考えれば、今は一切視線を向けないようにしているのも、きっとフェレへの気づかいなんだろうな。
フェレをみない代わりに今はシュリを見つめているんだが、なぜアキトに見つめられているのかが分からないシュリが首を傾げているのが可愛い。あ、シュリの隣にいるキースにも、首傾げが感染したな。
思わずアキトと一緒になってシュリとキースの姿を見つめてしまっていたが、気づけばフェレは既にアキトに十分な距離まで近づいていた。
「あ、フェレもアキトなら、のせてもいいって」
小さな声で嘶いたフェレの言葉を、シュリはすぐに教えてくれた。
「え、乗せてくれるんですか?」
「うんって言ってるよ」
そうなるかなとは思っていたが、人見知りなフェレですらアキトは乗せても良いと判断するんだな。まあきっとアキトはウマが好きだという感情でいっぱいだろうから、納得はできるんだが。
「わーありがとうございます」
「あ、アキト、フェレがぼくのあたまもなでてほしいって」
アキトは嬉しそうに微笑みながら、優しく優しくフェレの頭を撫で始めた。
何故か俺は、タユから文句を言ったりするなよ?と言いたげな目でじっと見られている。
人見知りだと知っているフェレを威圧したり何か言ったりするわけが無いだろう。俺はこう見えて人見知りの弟を持つ兄だぞ?
大丈夫だと意思を込めて睨み返せば、タユにそっと目を反らされた。
「ああ、さすがアキト様だ…!」
ギュームは、フェレの答えに感激した様子でそんな事を呟いている。
俺ももちろんアキトはすごいと思っているが、すこし大げさじゃないか?そう思って尋ねてみたら、初対面で撫でされてもらえたのはギュームと母さん以外には数人しかいないと返された。
「なるほど、それはさすがアキトと言いたくなるな」
「俺も嬉しいよ」
ニコニコと笑いながらフェレの頭を撫で続けるアキトを、タユとイワンは微笑ましそうに見守っている。もしかしたらフェレもまだ若いのかもしれないな。タユとイワンの目線が少しだけ保護者目線な気がする。
「ね、シュリくん、通訳してくれる?」
そんな事を考えている間に近づいてきたキースが、不意にそう口を開いた。
「うん、もちろん」
「ねぇ、フェレ?もし嫌じゃなければなんだけど…僕も頭を撫でても良いかな?」
上目遣いでそう尋ねたキースに、フェレはすぐに答えた。
「うん、いやじゃないって。キースもなでていいみたいだよ」
「ありがとう、シュリくん。それに許可をくれてありがとう、フェレ」
キースにも撫でやすいようにと、フェレはさらに頭を下げてくれている。気配りのできる優しいウマなんだな。そう考えている間に、キースはそーっと手を伸ばした。アキトと同じく驚かせないぐらいの速度だな。
「あのね僕も人見知りだから、すっごく頑張ったんだろうなーって思ったら…撫でたくなったんだ」
頑張った時に兄さんたちに撫でてもらうと、すっごく嬉しいから。明るい笑顔でそう続けたキースに、俺は思わずぐうっと唸ってしまった。
不意打ちで弟の可愛さを浴びてしまったせいで、我慢できなかった。
「最近は僕もちょっとだけマシになってきたんだけど――初対面の人に近づいたり話しかけたりするのってすっごく緊張するよね」
「フェレが、すっごくわかるっていってる」
「別に人が嫌いってわけじゃないんだけどね…」
「ぼくもそうだだってさ」
慣れてきたら大丈夫なんだけどとか、共通の知り合いがいるとちょっとだけ気が楽だとか。そんな人見知り同士でなければ通じない話題で、キースとフェレはあっという間に仲良くなった。
和やかな休憩時間の後は、アキトはイワンやフェレにも乗せてもらう事になった。どちらもタユと同じぐらいアキトの事を考えて走ってくれていたから、もうアキトはウマにまかせた方がうまく走れるだろうな。
「アキト様は、ウマを信じて乗せてもらえば大丈夫です」
そうギュームが言った時には、俺も何度も頷いてしまった。
イワン相手に妬かないと決めたばかりなのにな。ままならない感情に思わず苦笑していると、ギュームが口を開いた。
「フェレはどう?アキトさんを乗せられるかな?」
なるほど。俺の質問の意図を理解した上で、どうやらフェレにも尋ねてくれるつもりらしい。
ギュームの察しの良さに感謝しながらフェレの答えを待っていたんだが、一番最初に反応したのは質問されたフェレ本人ではなくアキトだった。
「えっ…!?」
そんな声をもらしたアキトはかなり驚いているらしく、大きく見開いた目でまじまじとギュームを見つめている。
ああ、そういえばタユがさっき言ってたな。フェレは乗る人を選ぶぐらいの人見知りだと。それを気にしているのかと俺が気づいた時には、アキトは口を開いていた。
「あの、イワンさんのおかげで乗せてくれる馬もいるんだってもう分かりましたから、フェレさんに無理して貰わなくても大丈夫ですよ…?」
明らかにフェレの事を気づかってそう言っているのが分かる発言に、フェレはぶんぶんと首を振った。
「あ、フェレもやってみるっていってるよ」
「え、本当に良いんですか?」
上目遣いに尋ねたアキトに、フェレはそっと目線を合わせた。
「…うん、フェレはやってみたいらしいよ」
それなら文句は無いけどとアキトが困り顔で呟いた瞬間、イワンはすっと下がって場所を空けた。空気が読めるウマなんだな。
フェレは恐る恐る近づいていくと、アキトの顔の近くに自分の顔をそっと寄せた。
かなりゆっくりな動きだが、アキトは急かすでもなくむしろぴたりと動きを止めてフェレを待っている。
ちらりとギュームの顔を見てみれば、柔らかく微笑んでいた。アキトのウマへの気配りが、同じウマ好きとして嬉しいんだろう。
そう考えれば、今は一切視線を向けないようにしているのも、きっとフェレへの気づかいなんだろうな。
フェレをみない代わりに今はシュリを見つめているんだが、なぜアキトに見つめられているのかが分からないシュリが首を傾げているのが可愛い。あ、シュリの隣にいるキースにも、首傾げが感染したな。
思わずアキトと一緒になってシュリとキースの姿を見つめてしまっていたが、気づけばフェレは既にアキトに十分な距離まで近づいていた。
「あ、フェレもアキトなら、のせてもいいって」
小さな声で嘶いたフェレの言葉を、シュリはすぐに教えてくれた。
「え、乗せてくれるんですか?」
「うんって言ってるよ」
そうなるかなとは思っていたが、人見知りなフェレですらアキトは乗せても良いと判断するんだな。まあきっとアキトはウマが好きだという感情でいっぱいだろうから、納得はできるんだが。
「わーありがとうございます」
「あ、アキト、フェレがぼくのあたまもなでてほしいって」
アキトは嬉しそうに微笑みながら、優しく優しくフェレの頭を撫で始めた。
何故か俺は、タユから文句を言ったりするなよ?と言いたげな目でじっと見られている。
人見知りだと知っているフェレを威圧したり何か言ったりするわけが無いだろう。俺はこう見えて人見知りの弟を持つ兄だぞ?
大丈夫だと意思を込めて睨み返せば、タユにそっと目を反らされた。
「ああ、さすがアキト様だ…!」
ギュームは、フェレの答えに感激した様子でそんな事を呟いている。
俺ももちろんアキトはすごいと思っているが、すこし大げさじゃないか?そう思って尋ねてみたら、初対面で撫でされてもらえたのはギュームと母さん以外には数人しかいないと返された。
「なるほど、それはさすがアキトと言いたくなるな」
「俺も嬉しいよ」
ニコニコと笑いながらフェレの頭を撫で続けるアキトを、タユとイワンは微笑ましそうに見守っている。もしかしたらフェレもまだ若いのかもしれないな。タユとイワンの目線が少しだけ保護者目線な気がする。
「ね、シュリくん、通訳してくれる?」
そんな事を考えている間に近づいてきたキースが、不意にそう口を開いた。
「うん、もちろん」
「ねぇ、フェレ?もし嫌じゃなければなんだけど…僕も頭を撫でても良いかな?」
上目遣いでそう尋ねたキースに、フェレはすぐに答えた。
「うん、いやじゃないって。キースもなでていいみたいだよ」
「ありがとう、シュリくん。それに許可をくれてありがとう、フェレ」
キースにも撫でやすいようにと、フェレはさらに頭を下げてくれている。気配りのできる優しいウマなんだな。そう考えている間に、キースはそーっと手を伸ばした。アキトと同じく驚かせないぐらいの速度だな。
「あのね僕も人見知りだから、すっごく頑張ったんだろうなーって思ったら…撫でたくなったんだ」
頑張った時に兄さんたちに撫でてもらうと、すっごく嬉しいから。明るい笑顔でそう続けたキースに、俺は思わずぐうっと唸ってしまった。
不意打ちで弟の可愛さを浴びてしまったせいで、我慢できなかった。
「最近は僕もちょっとだけマシになってきたんだけど――初対面の人に近づいたり話しかけたりするのってすっごく緊張するよね」
「フェレが、すっごくわかるっていってる」
「別に人が嫌いってわけじゃないんだけどね…」
「ぼくもそうだだってさ」
慣れてきたら大丈夫なんだけどとか、共通の知り合いがいるとちょっとだけ気が楽だとか。そんな人見知り同士でなければ通じない話題で、キースとフェレはあっという間に仲良くなった。
和やかな休憩時間の後は、アキトはイワンやフェレにも乗せてもらう事になった。どちらもタユと同じぐらいアキトの事を考えて走ってくれていたから、もうアキトはウマにまかせた方がうまく走れるだろうな。
「アキト様は、ウマを信じて乗せてもらえば大丈夫です」
そうギュームが言った時には、俺も何度も頷いてしまった。
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