生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,176 / 1,561

1175.【ハル視点】乗り方

 シュリ経由で改めて許可を取ってから、アキトはイワンの頭を優しく撫でている。その手つきがあまりにも優しそうで、撫でられているイワンがあまりにも幸せそうで思わず目が離せなくなってしまう。

 イワン相手に妬かないと決めたばかりなのにな。ままならない感情に思わず苦笑していると、ギュームが口を開いた。

「フェレはどう?アキトさんを乗せられるかな?」

 なるほど。俺の質問の意図を理解した上で、どうやらフェレにも尋ねてくれるつもりらしい。

 ギュームの察しの良さに感謝しながらフェレの答えを待っていたんだが、一番最初に反応したのは質問されたフェレ本人ではなくアキトだった。

「えっ…!?」

 そんな声をもらしたアキトはかなり驚いているらしく、大きく見開いた目でまじまじとギュームを見つめている。

 ああ、そういえばタユがさっき言ってたな。フェレは乗る人を選ぶぐらいの人見知りだと。それを気にしているのかと俺が気づいた時には、アキトは口を開いていた。

「あの、イワンさんのおかげで乗せてくれる馬もいるんだってもう分かりましたから、フェレさんに無理して貰わなくても大丈夫ですよ…?」

 明らかにフェレの事を気づかってそう言っているのが分かる発言に、フェレはぶんぶんと首を振った。

「あ、フェレもやってみるっていってるよ」
「え、本当に良いんですか?」

 上目遣いに尋ねたアキトに、フェレはそっと目線を合わせた。

「…うん、フェレはやってみたいらしいよ」

 それなら文句は無いけどとアキトが困り顔で呟いた瞬間、イワンはすっと下がって場所を空けた。空気が読めるウマなんだな。

 フェレは恐る恐る近づいていくと、アキトの顔の近くに自分の顔をそっと寄せた。

 かなりゆっくりな動きだが、アキトは急かすでもなくむしろぴたりと動きを止めてフェレを待っている。

 ちらりとギュームの顔を見てみれば、柔らかく微笑んでいた。アキトのウマへの気配りが、同じウマ好きとして嬉しいんだろう。

 そう考えれば、今は一切視線を向けないようにしているのも、きっとフェレへの気づかいなんだろうな。

 フェレをみない代わりに今はシュリを見つめているんだが、なぜアキトに見つめられているのかが分からないシュリが首を傾げているのが可愛い。あ、シュリの隣にいるキースにも、首傾げが感染したな。

 思わずアキトと一緒になってシュリとキースの姿を見つめてしまっていたが、気づけばフェレは既にアキトに十分な距離まで近づいていた。

「あ、フェレもアキトなら、のせてもいいって」

 小さな声で嘶いたフェレの言葉を、シュリはすぐに教えてくれた。

「え、乗せてくれるんですか?」
「うんって言ってるよ」

 そうなるかなとは思っていたが、人見知りなフェレですらアキトは乗せても良いと判断するんだな。まあきっとアキトはウマが好きだという感情でいっぱいだろうから、納得はできるんだが。

「わーありがとうございます」
「あ、アキト、フェレがぼくのあたまもなでてほしいって」

 アキトは嬉しそうに微笑みながら、優しく優しくフェレの頭を撫で始めた。

 何故か俺は、タユから文句を言ったりするなよ?と言いたげな目でじっと見られている。

 人見知りだと知っているフェレを威圧したり何か言ったりするわけが無いだろう。俺はこう見えて人見知りの弟を持つ兄だぞ?

 大丈夫だと意思を込めて睨み返せば、タユにそっと目を反らされた。

「ああ、さすがアキト様だ…!」

 ギュームは、フェレの答えに感激した様子でそんな事を呟いている。

 俺ももちろんアキトはすごいと思っているが、すこし大げさじゃないか?そう思って尋ねてみたら、初対面で撫でされてもらえたのはギュームと母さん以外には数人しかいないと返された。

「なるほど、それはさすがアキトと言いたくなるな」
「俺も嬉しいよ」

 ニコニコと笑いながらフェレの頭を撫で続けるアキトを、タユとイワンは微笑ましそうに見守っている。もしかしたらフェレもまだ若いのかもしれないな。タユとイワンの目線が少しだけ保護者目線な気がする。

「ね、シュリくん、通訳してくれる?」

 そんな事を考えている間に近づいてきたキースが、不意にそう口を開いた。

「うん、もちろん」
「ねぇ、フェレ?もし嫌じゃなければなんだけど…僕も頭を撫でても良いかな?」

 上目遣いでそう尋ねたキースに、フェレはすぐに答えた。

「うん、いやじゃないって。キースもなでていいみたいだよ」
「ありがとう、シュリくん。それに許可をくれてありがとう、フェレ」

 キースにも撫でやすいようにと、フェレはさらに頭を下げてくれている。気配りのできる優しいウマなんだな。そう考えている間に、キースはそーっと手を伸ばした。アキトと同じく驚かせないぐらいの速度だな。

「あのね僕も人見知りだから、すっごく頑張ったんだろうなーって思ったら…撫でたくなったんだ」

 頑張った時に兄さんたちに撫でてもらうと、すっごく嬉しいから。明るい笑顔でそう続けたキースに、俺は思わずぐうっと唸ってしまった。

 不意打ちで弟の可愛さを浴びてしまったせいで、我慢できなかった。

「最近は僕もちょっとだけマシになってきたんだけど――初対面の人に近づいたり話しかけたりするのってすっごく緊張するよね」
「フェレが、すっごくわかるっていってる」
「別に人が嫌いってわけじゃないんだけどね…」
「ぼくもそうだだってさ」

 慣れてきたら大丈夫なんだけどとか、共通の知り合いがいるとちょっとだけ気が楽だとか。そんな人見知り同士でなければ通じない話題で、キースとフェレはあっという間に仲良くなった。

 和やかな休憩時間の後は、アキトはイワンやフェレにも乗せてもらう事になった。どちらもタユと同じぐらいアキトの事を考えて走ってくれていたから、もうアキトはウマにまかせた方がうまく走れるだろうな。

「アキト様は、ウマを信じて乗せてもらえば大丈夫です」

 そうギュームが言った時には、俺も何度も頷いてしまった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。