生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1176.庭園

 今日はこの辺りではかなり珍しく、一面のどんよりとした曇り空だ。見上げた空は分厚い雲に覆われていて、ほんのわずかな青空すら見えない。

 でも雨が降りそうな気配が無いから、ちょっとだけ安心かな。

 この世界には傘が無いからね。降ったとしてもマントのフードを被って凌ぐだけなんだけど、そもそも今日はマントも着てないから降ったら困るんだよね。

 今日はハルと二人で、領主城の庭園に来てるんだ。

 あの庭での楽しかったお茶会から、すっかりここの庭園が気に入っちゃったんだよね。

 あの日一面に咲いて俺達を楽しませてくれたあのリームの花は、もうすっかり無くなっちゃってるんだけどね。でも今のリームは花こそないけど、綺麗な葉っぱと茎が風に揺れて、まるで草原みたいでそれもすごく素敵なんだ。

 他にもまだまだ見どころがいっぱいあるから、飽きずにちょこちょこ見に来てるよ。

 ちなみに律儀に俺達の許可を取ってたギュームさん経由で、俺達の庭園の感想は庭師さんたちにしっかりと伝わったらしいよ。

 庭の感想って庭師さんにはあまり届かないらしくて、庭師さん達は感想をもらってすっごく張り切ってくれているらしい。

 そのおかげで、日々庭が進化していってるんだってハルが言ってた。

「あ、あそこの白色の花は、初めてみるやつだよね?」

 見上げるほどの高さに集まって咲いている大きな白い花をさっと指差して、俺は隣のハルに尋ねた。

「ああ、あれはエウスチっていう花だね。調薬難易度はかなり高いが、頭痛によく効く薬ができる薬草でもあるんだ。見た目が美しいと、特に隣国では鑑賞用としても人気の花なんだが…いったい、いつの間に取り寄せたんだ?」

 相変わらずの図鑑顔負けの素晴らしい知識を披露してくれたハルは、すこし怪訝そうにそう呟いている。

 なんでも数日前に来た時は、エウスチの花は無かったらしいよ。珍しい花だし存在感があるから、あれば絶対に気づくってハルが断言してた。

「あっちの花も…増えてる?」
「ああ、増えてるな」

 俺がゆびさした花をみて苦笑したハルは、すっといくつかの花や木を順番に指差した。

「これとこれと、これ。それにあれと…あっちの木も、冒険者ギルドで採取依頼が出るような珍しい素材だよ」
「え、そうなの?」

 庭師さんたちが気を配って世話をしてる大事な植物だから、さすがに採取しようなんて思わないけど――それはかなりびっくりだ。

「あー…あっちの青い花が咲いてるのなんて、今までは育てられなかった筈の薬草なんだが…」
「へーそうなんだ。でも見た目はすっごく綺麗な花なんだね」

 ハルに言われなかったら、お洒落な花だなーで終わってたと思う。そう考えながらまじまじと青い花を観察していると、ハルに笑われてしまった。

「前回ここに来た時にも、いくつか気になる薬草があったんだ。だから、一応父に確認はしてみたんだよ」
「え、そうなの?」

 でも確認って何を?

「ああ、あの庭園にある珍しい薬草について、父さんはきちんと把握してるのか?ってね」

 おお、直球の質問だ。ケイリーさんは何て答えたんだろう。

「もちろん把握はしてるが、基本的に見るのは領主一家か使用人たちだけだから問題ないだろうって言ってたよ」

 しかも緊急時には、私たちには構わずに躊躇わずに薬草として使って下さいと庭師から言われているらしい。

「普段は目で楽しめて、いざという時の備えにもなるなら、最高だろうって笑ってた」
「あー…うん、言ってる姿が想像できちゃったよ」

 ケイリーさんなら、言いそうだね。

「それにね、最近は騎士団本部の敷地内に新しい薬草畑を作っているんだって。そちらの畑の世話にも、ここの庭師が出向いてるらしいよ?」
「それはすごい事だね」

 領主城の庭園のアップデートに、騎士団本部の薬草畑の世話か。

 元々庭園や城周りの植栽の世話もしてたんだろうから、きっと庭師の人たちは一気に忙しくなっちゃったんだろうな。でも不思議と嬉々として、お世話に向かう姿が想像できちゃうんだけど。

 ギュームさんがウマに夢中なように、庭師の人たちは植物に夢中みたいだからね。
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