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1178.隠れる幽霊
もうしばらくはここにいようかとハルと二人で話していると、不意に視界の端で赤い髪の毛が揺れたのが目に止まった。
あれ、近くに人の気配は無いと思ったんだけど、誰かいる?
最近は少しでも練習になればと、領主城内でも積極的に気配探知を使ってみてるんだよね。改めて探知してみても、やっぱり人の気配は一つも無い。
何だろうとそちらにそっと目線だけを向けると、何故かこそこそと木の陰に隠れてこちらを見ている幽霊の姿があった。多分必死で隠れてるつもりなんだろうけど、見事な赤毛が木々の緑の間からちらちら見えてて――うん、逆に目立ってる。
しかもすっごく気になるのが、その幽霊の浮かべている表情なんだよね。
何故なのかは分からないけど、明らかに申し訳なさそうな顔をしてるんだ。でもどこかに行くわけでもなく、今も隠れながら俺とハルの方をそっと見ている。
うーん、一体何がしたいのかが全く分からない。ただ庭園のここの花に思い入れがある人とか…なのかな?それとも俺とハルに何か用があるとか…?
でもそれだとやっぱりあの表情の謎は解けないままだよね…?
ぐるぐると色んな事を考えながら、俺は思わずじっとその幽霊見つめてしまった。
俺の視線が固定されている事に気が付いたのか、ハルはパッとそちらを見ると口を開いた。
「ああ、クレット。遠慮せずにこっちに来てくれ」
「え、知り合い?」
「ああ、彼は元騎士なんだが、この間世話になってね」
ハルに名前を呼ばれた見事な赤毛のクレットさんは、本当に出て行って良いのかなと言いたげに不安そうに眉をひそめた。
「大丈夫だから、出てきてくれ」
ハルが重ねてそう声をかければ、クレットさんは恐る恐る木の陰から出てきてくれた。
あ、さっきは見えなかったけど、騎士団の制服を着てるんだ。元騎士って言ってたもんね。
「あの、ハロルド様とアキト様のデートの邪魔をしてしまって…本当にすみません」
あ、デートの邪魔になると思ってあんなに申し訳なさそうな表情をして隠れてたのか。一番気になってた謎が、あっさり解けちゃったよ。
「クレット、こっちは俺の伴侶候補のアキトだ」
ハルは嬉しそうな笑顔を浮かべて、そう紹介してくれた。クレットさんとは、かなり親しかったのかな。ここまでニコニコ笑顔で紹介されたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「こんにちは。ハルの伴侶候補で冒険者のアキトと言います」
「は…私は、元騎士のクレットと…いいます」
ぎこちないながらもそう挨拶を返してくれたクレットさんは、本当に伴侶候補のアキト様にも幽霊の言葉が通じるんですねとぽつりとそう呟いた。
「クレットはね、この前のアキトとキースが連れ去られた時、魔道具の情報や盗賊団の拠点の位置をわざわざ教えに来てくれたんだよ」
え、それはすっごい良い人…いや、良い幽霊だ!
「そうだったんですね!俺とキースくんのためにわざわざ来てくれるなんて…ありがとうございます!」
驚きつつも感謝の言葉を口にした俺に、クレットさんは苦笑を浮かべた。
「いえ、私はただ知っていた情報を伝えただけですし…もしハロルド様が幽霊の言葉を理解してくれなければ、その情報も無駄になる所でした」
だからすごいのはハロルド様ですと続けたクレットさんに、ハルは慌ててそんな事は無いと言い返している。
幽霊になったせいで言葉が通じなくなって言いたい事も伝わらない辛さっていうのは、きっと俺には想像できないぐらいつらい事なんだろうな。ハルも、リスリーロの事を誰にも伝えられなくて辛かったって言ってたもんな。
「あの情報は本当に助かったよ。なんといっても盗賊団の拠点を三つも潰せたんだ。それだけでもすごく価値のある情報だったのに、アキトとキースにまで辿り着いたんだから。ウィル兄もすごく褒めてたよ」
ウィリアムさんと何か関係があるのか、クレットさんはまるで噛み締めるように褒められたと呟くと、照れくさそうに笑ってみせた。
「私は少し城は離れていたんですが…アキト様とキース様が無事に帰ってきていると聞いて、一目お姿を拝見しようと思っていたんです。でもお部屋に行くのはさすがに失礼だと機会を伺っていまして…デートの邪魔をしてすみませんでした」
改めてそう謝ってくれたクレットさんに、俺とハルはとんでもないと首を振った。
あれ、近くに人の気配は無いと思ったんだけど、誰かいる?
最近は少しでも練習になればと、領主城内でも積極的に気配探知を使ってみてるんだよね。改めて探知してみても、やっぱり人の気配は一つも無い。
何だろうとそちらにそっと目線だけを向けると、何故かこそこそと木の陰に隠れてこちらを見ている幽霊の姿があった。多分必死で隠れてるつもりなんだろうけど、見事な赤毛が木々の緑の間からちらちら見えてて――うん、逆に目立ってる。
しかもすっごく気になるのが、その幽霊の浮かべている表情なんだよね。
何故なのかは分からないけど、明らかに申し訳なさそうな顔をしてるんだ。でもどこかに行くわけでもなく、今も隠れながら俺とハルの方をそっと見ている。
うーん、一体何がしたいのかが全く分からない。ただ庭園のここの花に思い入れがある人とか…なのかな?それとも俺とハルに何か用があるとか…?
でもそれだとやっぱりあの表情の謎は解けないままだよね…?
ぐるぐると色んな事を考えながら、俺は思わずじっとその幽霊見つめてしまった。
俺の視線が固定されている事に気が付いたのか、ハルはパッとそちらを見ると口を開いた。
「ああ、クレット。遠慮せずにこっちに来てくれ」
「え、知り合い?」
「ああ、彼は元騎士なんだが、この間世話になってね」
ハルに名前を呼ばれた見事な赤毛のクレットさんは、本当に出て行って良いのかなと言いたげに不安そうに眉をひそめた。
「大丈夫だから、出てきてくれ」
ハルが重ねてそう声をかければ、クレットさんは恐る恐る木の陰から出てきてくれた。
あ、さっきは見えなかったけど、騎士団の制服を着てるんだ。元騎士って言ってたもんね。
「あの、ハロルド様とアキト様のデートの邪魔をしてしまって…本当にすみません」
あ、デートの邪魔になると思ってあんなに申し訳なさそうな表情をして隠れてたのか。一番気になってた謎が、あっさり解けちゃったよ。
「クレット、こっちは俺の伴侶候補のアキトだ」
ハルは嬉しそうな笑顔を浮かべて、そう紹介してくれた。クレットさんとは、かなり親しかったのかな。ここまでニコニコ笑顔で紹介されたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「こんにちは。ハルの伴侶候補で冒険者のアキトと言います」
「は…私は、元騎士のクレットと…いいます」
ぎこちないながらもそう挨拶を返してくれたクレットさんは、本当に伴侶候補のアキト様にも幽霊の言葉が通じるんですねとぽつりとそう呟いた。
「クレットはね、この前のアキトとキースが連れ去られた時、魔道具の情報や盗賊団の拠点の位置をわざわざ教えに来てくれたんだよ」
え、それはすっごい良い人…いや、良い幽霊だ!
「そうだったんですね!俺とキースくんのためにわざわざ来てくれるなんて…ありがとうございます!」
驚きつつも感謝の言葉を口にした俺に、クレットさんは苦笑を浮かべた。
「いえ、私はただ知っていた情報を伝えただけですし…もしハロルド様が幽霊の言葉を理解してくれなければ、その情報も無駄になる所でした」
だからすごいのはハロルド様ですと続けたクレットさんに、ハルは慌ててそんな事は無いと言い返している。
幽霊になったせいで言葉が通じなくなって言いたい事も伝わらない辛さっていうのは、きっと俺には想像できないぐらいつらい事なんだろうな。ハルも、リスリーロの事を誰にも伝えられなくて辛かったって言ってたもんな。
「あの情報は本当に助かったよ。なんといっても盗賊団の拠点を三つも潰せたんだ。それだけでもすごく価値のある情報だったのに、アキトとキースにまで辿り着いたんだから。ウィル兄もすごく褒めてたよ」
ウィリアムさんと何か関係があるのか、クレットさんはまるで噛み締めるように褒められたと呟くと、照れくさそうに笑ってみせた。
「私は少し城は離れていたんですが…アキト様とキース様が無事に帰ってきていると聞いて、一目お姿を拝見しようと思っていたんです。でもお部屋に行くのはさすがに失礼だと機会を伺っていまして…デートの邪魔をしてすみませんでした」
改めてそう謝ってくれたクレットさんに、俺とハルはとんでもないと首を振った。
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