生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,181 / 1,561

1180.クレットさんの心残り

 クレットさんは俺達がいなくなった事には本気で驚いたけど、盗賊たちの会話から人の言葉を喋れるウマと一緒に逃げた事にすぐに気が付いたらしい。

 あー、そういえばシュリくん、盗賊団から逃げる時は普通に人の言葉で叫んだりしてたな。かえらせろーとか大きな声で言ってるのが聞こえてたのを、たった今思い出した。あれはもう既にシュリくんが人の言葉を喋れる事がバレていたからの、対応だったんだろうな。

 納得する俺の横で、クレットさんは続けた。

「すぐにお二人の後を追って森に入ってはみたんですが…何故か全く見つけられず、それならと盗賊団の本拠地に戻りました」

 うん、それはきっと…いや絶対シュリくんの気配を消す魔法のせいだろうな。幽霊相手でも効くような魔法だったんだね。クレットさんには申し訳ないけど、すごいやシュリくん。

 クレットさんは、隊の目的が探索だけじゃなく、牙蛇盗賊団の討伐も含んでいると知ってたんだって。だからそれなら本拠地で待ち構えて、後でやってきたハルにこっそりと情報を伝えようと考えてくれたらしい。

 ハルはそれを聞いて、ガックリと肩の力を抜いた。

「…そう、だったのか…それは本当にすまない。俺は逃げてきたアキトとキースに、その一緒に逃げてくれたウマのシュリと合流した後、そのままこっちに帰ってきてしまったから…」

 あ、そっか。ハルは俺達と遭遇したあそこで森から引き返しちゃったから、クレットさんの言葉が分かる人が本拠地にはいなかったって事になる。

 折角情報収集してくれていたのにと思うと、本当に申し訳ない。

「いえいえ、お二人の所へ行くとの報告もせずに俺が勝手にした事ですから、それはお気になさらず」

 そう言うと、クレットさんはふわりと笑ってくれた。

 ちなみに本拠地にやってきたファーガスさんとマチルダさんが、人質がいないから全力で暴れて良いなと言っていたから、俺達が無事に保護された事は結構早いうちから分かっていたらしいよ。

 何なら人質がどうなっても良いのかーって苦し紛れに叫んだ盗賊たちに、もうこっちで保護してるんだよとか、騙されねぇぞ馬鹿やろうって叫んで跳び蹴りをした衛兵さんたちがいたりもしたらしい。

「騎士たちも衛兵たちもそれに使用人たちも、みんな楽しそうでしたよ」

 その光景を思い出して楽し気に笑えるのは、クレットさんが元騎士様だからだと思う。

「クレットからの助力と気配りに心からの感謝を」
「本当にありがとうございました」
「いえ、とんでもない」

 ハルはちらりと俺の顔を見てから、おもむろに口を開いた。

「クレット、情報を教えてもらったあの日に約束していた通り、何か心残りがあるのなら俺とアキトで伝えるが…」

 感謝の気持ちとして約束していたんだと、ハルは俺に向かってそう教えてくれた。間接的な俺とキースくんの恩人だもんね。俺ももちろん反対するつもりなんてないよ。

 心残りを解消するのは、結構久しぶりだけど全力で頑張るよ。

「あの時は言えなかったんですが…実は私はこれという心残りなんて何も思い浮かばないんですよね」
「そうなのか?」

 本当に?遠慮はしていないか?とハルはまっすぐに目を見つめてもう一度そう尋ねたが、クレットさん本人は目を反らすでもなくあっさりと答えた。

「はい、これは決して遠慮をしているとかでは無く、おそらく私はもっと情報を集めて隊の役に立ちたかったんだと思うんです」
「なるほど」
「でも、盗賊団の情報を伝えてウィリアム隊長に褒めてもらっても、ファーガス様に感謝の言葉を告げられても消えなかったので…」
「あの…そういう幽霊もいますよ」
「そうなんですか?」
「はい、えっと…ハル、近くに誰かいる?」

 俺の気配探知には誰もいないけど、ハルはどう思う?そう問いかけるような視線を向ければ、ハルはすぐに首を振ってくれた。

「でもちょっとだけ待って」

 ハルはさっとクレットさんに許可を得ると、防音結界の魔道具を一瞬で設置してしまった。範囲は制限されるけど、こうして外でも使えるんだから便利なものだよね。

「防音結界が必要な話…なんですか?」

 戸惑いを隠さないクレットさんに、俺は笑って答えた。

「すみません。俺の出身がちょっと特殊なので…俺の出身地は異世界なんです」
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。