生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1181.元騎士と騎士

 うっすらと微笑みを浮かべながら、俺はあっさりと自身の秘密を打ち明けた。

 ハルやハルの家族のみんなから異世界人に関しての色んな話を聞いたから、これからもこの秘密はちゃんと隠し通していくつもりではいるんだよ。

 でもここにいるのはハルと俺と、クレットさんだけだ。

 俺達の探索のためにって、わざわざ自分から情報提供しに来てくれるような人だからね。今までも幽霊相手には隠してなかったっていうのもあるけど、クレットさんなら良いだろうって思ったんだ。

 俺が言おうとしている内容にしっかりと気づいて防音結界を張ってくれたハルも、特に止めようとする動きは無かったしね。つまりそれはハルもクレットさんを信じているって事だ。

 まあちょっとあまりにも言い方が軽すぎたかなーとは、口にしてから思ったけどね。

 でもここでもったいぶっても仕方ないよね。

 それに一体これから何の話が始まるんだろうって、クレットさんが明らかに緊張してるのが伝わってきてたからね。少しでも早く、肩の力を抜いて欲しかったんだ。

「っ…!なんと…!アキト様は異世界人なのですか…?」

 大きく目を見開いたクレットさんはまるで独り言のようにぽつりとそう呟いた後、俺達が何か言葉を発するよりも前にハッとした様子で口を開いた。

「私、クレットは、例えお二人のような幽霊が見える体質の方に出逢ったとしても、決してアキト様の秘密を他言はしません」

 キリッと真剣な表情でそう宣言してくれたクレットさんに、俺とハルは思わず顔を見合わせて微笑んでしまった。さすがに、ここまで真剣に受け取ってくれるとは思ってなかったな。

「私の剣…に誓っても、今はもうこの手で振るえないものですから――意味が無いでしょうか…」

 ぶつぶつとそう呟いたクレットさんは、さっと顔をあげて俺とハルに向かって続けた。

「それでは、私の元騎士としての誇りにかけて誓います」
「クレット、俺はクレットは今も騎士だと思う」
「そう…でしょうか?」
「ああ、今も騎士団のために情報を集めてくれていたんだ。しかも騎士として好ましい人格もきちんと維持している。それなら。元では無く立派な騎士だろう」

 ハルの言葉に、クレットさんはふらりと視線を彷徨わせた。不安そうな視線に、俺もコクリと頷いた。

「俺も、クレットさんは騎士様だと思います」
「幽霊でも…?」
「ああ、幽霊でもだ!」
「ええ、幽霊でもです!」

 ハルと二人でぴたりと言葉を重ねて声をかければ、クレットさんはふわりと笑みを浮かべた。

「そう言ってもらえて、とっても嬉しいです」
「それで…アキト?いったい何を話したくて異世界人な事を話したんだい?」

 ハルの軌道修正に、俺はあ、そうだと口を開いた。さすがハル。こういう所も頼りになる。

「クレットさん、俺は生まれつき幽霊の声が聞こえました。父もそうだったので遺伝したんだと思うんですが…これは元の世界でもかなり珍しい能力だと思います」
「ええ、こちらの世界でもかなり珍しいと思いますよ」
「ああ、俺もアキトに出逢うまでそんな人が存在すると、考えた事も無かった」

 クレットさんとハルは、うんうん分かる分かると言いたげにコクコクと頷き合っている。うーん、この様子だとハルが一時期は幽霊だった事も、きっとクレットさんには話してあるんだろうな。

「だから俺は幼い頃からずっと、たくさんの幽霊たちと触れ合って生きてきました。当然たくさんの幽霊たちの心残りを知っています」
「なるほど。それは…もし可能なら、ぜひ他の幽霊たちの心残りの話を聞かせていただけないでしょうか?」

 何故自分に心残りが無いのかが、やっと分かるのかもしれない。

 そう思っているのが分かる必死さで。クレットさんはひたと俺を見つめて尋ねてきた。それだけ必死なのに、もし可能ならって言葉をつけてくれる辺りが、本当にクレットさんは優しい人なんだな。

「俺が今まで出逢った中には、本当に些細な心残りがある人から、実現可能か悩むぐらい壮大な心残りがある人、それにクレットさんのようにそもそも心残りが何かすら分からないっていう人もたくさんいました」
「私だけでは…無いんですね。少し安心しました」

 そういう幽霊の中には、気ままにあちこちを放浪しているうちに満足して消えていく人もいたし、もう諦めたわと笑って周りの幽霊たちの世話を焼いているなんて人もいた。

 そう話せばクレットさんは真剣に頷いてくれた。
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