生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,186 / 1,561

1185.情報は

「クレットから情報をもらったあの会議の後、アキトとキースの助けになれるかもしれないと、俺たちよりも先に一人で本拠地に向かってくれていたらしいんだ」
「なんと、そうだったのか!」

 驚きつつも感心した様子のケイリーさんがそう言えば、ファ―ガスさんは良い判断だとうっすらと笑みを浮かべている。

「私たちにも幽霊の言葉が聞こえれば良かったんだが…」

 マチルダさんは残念そうに苦笑しながら、ぽつりとそう呟いた。

 ジルさんはというと、ウィリアムさんの隣の席で誇らし気に胸を張っている。クレットさんの行動が、嬉しかったんだろうなと分かる表情だ。

「あーなるほど、それはクレットらしいなー」

 ニコニコ笑顔を浮かべたウィリアムさんは、やけにあっさりいなくなったと思ってたんだとさらりと続けた。

 うーん、これはさすが隊長って言いたくなるな。いや別に俺の隊長ってわけじゃないけどさ。

 みんなに褒められたクレットさんは照れくさそうな、でも誇らしいような複雑な表情で笑っている。

「あ、でも俺達がまだ眠っていたからって情報を集めてくれている間に、俺達は勝手に脱出しちゃったみたいなんですけど…」

 申し訳ない気持ちで思わずそう言えば、クレットさんから無事に逃げられたならそれが一番なので気にしないでくださいと言われてしまった。

「それにしても…隠し通路の倉庫か…」

 話題の軌道修正をしてくれたのは、ウィリアムさんだった。

「たしかそこの倉庫の中も確認したと、報告が来ていましたね」

 そこで言葉を切ったジルさんは、自分の鞄の中から書類の束を取り出した。かなりの厚みのあるその束を、パラパラと軽快にめくっていく。

「ああ、ありました。そこの倉庫に保管されていたのは、食料品が主だったと記載されていますね。ただ隠し通路の奥のボスの部屋の隣に、そんな倉庫があるのは不自然だとも記されています」
「さすが情報収集に長けているウィリアムとジルの隊の隊員だな。うちの隊の隊員ならきっとその違和感にすら気づかずに流しているだろう」

 感心を隠さないファーガスさんの言葉に、ウィリアムさんは笑顔で答えた。

「褒めてくれてありがと。ファグ兄に褒められたよーってあとで隊員たちに言っておくよ。ね、ジル」
「ええ、きっとみな喜んで更に努力してくれるでしょうね」

 誇らし気に笑ったジルさんは、書類にもう一度目線を落とした。

「その後、不審感を抱いた数人で倉庫内を調べたそうですが、何も発見はできなかったと報告を受けていますね」
「でも、クレットはそこで何かを見つけたんだよねー?」

 ワクワクしている様子のウィリアムさんがそう尋ねれば、クレットさんははいとすぐに口を開いた。

「酒の瓶が無造作に入れられている木箱を全て動かすと、そこにドアがありました」
「…そんな所に?」

 思わずと言った様子で、ハルが尋ねた。

「はい、あれは自分も生身の頃なら気づかなかったと思います」

 壁を抜けられるから気付けただけだと、クレットさんはそう教えてくれた。

 それにしても隠し通路内にある倉庫の中に、更に厳重に隠されているドアか。いったい、中には何があるんだろう。

「ハル。クレットが何を言ったのか…ちゃんと俺達にも説明してくれないか?」

 焦れたようなケイリーさんの言葉に、ハルはハッと顔をあげた。

「すまない。その倉庫にある酒瓶が無造作に入った木箱を全て動かすと、そこにドアがあると言っている」
「ドアが…?」
「クレットは壁を抜けられるから気付く事が出来ただけで、もし生身なら気付けなかっただろうって言ってるよ」
「なるほど。つまりクレットは、しっかり中も確認したって事だよねー?」

 ウィリアムさんの言葉に、クレットさんはこくりと頷いた。

「クレット、そのドアの中には、いったい何があったんだ?」

 みんなを代表するようにそう尋ねてくれたケイリーさんの顔は、これ以上ないぐらい真剣な表情だった。話題が話題だから仕方ないんだけど、真剣な表情をしてると英雄感が強くなるななんて思ってしまった。

「衛兵詰め所の地下にある転移魔法陣やダンジョンの転移魔法陣に似たものが刻まれた、不審な魔道具がありました」

 ハルは大きく目を見開きながらも、何とかみんなにクレットさんの言葉を伝えた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。