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1190.【ハル視点】クレット
庭の中に設置された新しいベンチを見つける度に、アキトと二人でそこに座って景色を堪能してきた。
本当にどのベンチからの景色も、文句の付け所が無いほど素晴らしいものばかりだった。
パッと目を引く華やかな景色や、本当に庭かと言いたくなるような壮大な景色、赤い花や実だけをつける植物で赤と緑に染め上げられた景色なんてものもあった。
ここはそういう景色と比べれば、地味だと言われるかもしれない。だがなんだかすごく落ち着く景色なんだよな。
「もうしばらくは、ここにいようか?」
もう少しだけこの景色をアキトと楽しみたい。そう思って提案してみれば、嬉しそうな返事が返ってきた。
「そうだね、そうしようか」
幸せそうに景色を見つめているアキトとその背後に見える花を眺めていると、不意にアキトの視線がぴたりと一点で止まった。
何か気になるものでもあったのかな?そう思って眺めていると、アキトは一瞬にして困り顔に変わり、次いでゆるりと首を傾げた。
アキトがあんな表情をするなんて、一体何があったんだ?
慌ててアキトの視線の先を辿ってみれば、そこには申し訳なさそうな顔をしたクレットの姿があった。
ああ、なるほど。幽霊が近くにいるのに気が付いたが、何故か木の陰に隠れながらあんな表情でこちらを見ているから困惑していたのか。
アキトはまだクレットと面識が無いからな。
あの時、彼が届けてくれた情報が無ければ、アキトとキースの探索は確実にもっと難航しただろう。クレットへは、感謝の気持ちしかない。
無事に二人が帰ってきてからは、俺も約束を果たすべくクレットを探していた。だが、ずっと見つけられずにいたんだ。ずっと気になっていたから、あちらから来てくれて良かった。
「ああ、クレット。遠慮せずにこっちに来てくれ」
俺が普通に名前を呼んだ事に、アキトは驚いた様子でバッとこちらを見た。
「え、知り合い?」
「ああ、彼は元騎士なんだが、この間世話になってね」
クレットがしてくれた事をきちんと説明したい所だが、あんな風に隠れている状態では難しいからな。
俺に名前を呼ばれたクレットは、本当に出て行って良いのかなと言いたげに不安そうに眉をひそめている。
「大丈夫だから、出てきてくれ」
重ねてそう声をかければ、クレットはようやく恐る恐る木の陰から出てきてくれた。
「あの、ハロルド様とアキト様のデートの邪魔をしてしまって…本当にすみません」
こんなに挙動不審な動きをするやつじゃない筈なんだがと思っていたら、まさかのそんな理由だったのか。俺達のデートの邪魔だと思って隠れているなんて、さすがに予想もできなかったな。
「クレット、こっちは俺の伴侶候補のアキトだ」
クレットのおかげで助かった俺の伴侶候補のアキトだよと言いたい所だが、説明も無しにいきなりそんな事を言ったらアキトが驚くだろう。
俺はぐっとこらえて紹介の言葉を口にした。
「こんにちは。ハルの伴侶候補で冒険者のアキトと言います」
「は…私は、元騎士のクレットと…いいます」
クレットはぎこちなく挨拶を返した後、本当に伴侶候補のアキト様にも幽霊の言葉が通じるんですねとぽつりとそう呟いた。
幽霊なのに言葉が通じる事に、一々感動するんだよな。気持ちは分かると心の中で同意しながら、俺はアキトに声をかけた。
「クレットはね、この前のアキトとキースが連れ去られた時、魔道具の情報や盗賊団の拠点の位置をわざわざ教えに来てくれたんだよ」
「そうだったんですね!俺とキースくんのためにわざわざ来てくれるなんて…ありがとうございます!」
素直なアキトの感謝の言葉に、クレットは苦笑を浮かべた。
「いえ、私はただ知っていた情報を伝えただけですし…もしハロルド様が幽霊の言葉を理解してくれなければ、その情報も無駄になる所でした。だからすごいのはハロルド様です」
まさかそんな答えを返されると思っていなかった俺は、慌てて口を開く。
「そんな事は無いよ」
「しかし…」
俺はまっすぐにクレットを見つめた。
「あの情報は本当に助かったよ」
「…本当ですか?」
「ああ。なんといっても盗賊団の拠点を三つも潰せたんだ。それだけでもすごく価値のある情報だったのに、アキトとキースにまで辿り着いたんだから。ウィル兄もすごく褒めてたよ」
ウィル兄が褒めていたというのは、本当の話だ。
クレットは昔からすごい情報取集能力を持っていたからねーと、自慢げに教えてくれた。さすがクレットだと何度も言っていたし、幽霊になってまで手伝ってくれるなんてと言葉を詰まらせたりもしていたな。
これを勝手に言ってしまうと、泣いてた事をばらしたーと拗ねられるから言えないんだが。
クレットはまるで噛み締めるように褒められたと呟いてから、照れくさそうに笑ってみせた。
本当にクレットはウィル兄の事を慕ってくれていたんだな。
「私は少し城は離れていたんですが…アキト様とキース様が無事に帰ってきていると聞いて、一目お姿を拝見しようと思っていたんです。でもお部屋に行くのはさすがに失礼だと機会を伺っていまして…デートの邪魔をしてすみませんでした」
改めてそう謝りだしたクレットに、俺たちはとんでもないと首を振った。
本当にどのベンチからの景色も、文句の付け所が無いほど素晴らしいものばかりだった。
パッと目を引く華やかな景色や、本当に庭かと言いたくなるような壮大な景色、赤い花や実だけをつける植物で赤と緑に染め上げられた景色なんてものもあった。
ここはそういう景色と比べれば、地味だと言われるかもしれない。だがなんだかすごく落ち着く景色なんだよな。
「もうしばらくは、ここにいようか?」
もう少しだけこの景色をアキトと楽しみたい。そう思って提案してみれば、嬉しそうな返事が返ってきた。
「そうだね、そうしようか」
幸せそうに景色を見つめているアキトとその背後に見える花を眺めていると、不意にアキトの視線がぴたりと一点で止まった。
何か気になるものでもあったのかな?そう思って眺めていると、アキトは一瞬にして困り顔に変わり、次いでゆるりと首を傾げた。
アキトがあんな表情をするなんて、一体何があったんだ?
慌ててアキトの視線の先を辿ってみれば、そこには申し訳なさそうな顔をしたクレットの姿があった。
ああ、なるほど。幽霊が近くにいるのに気が付いたが、何故か木の陰に隠れながらあんな表情でこちらを見ているから困惑していたのか。
アキトはまだクレットと面識が無いからな。
あの時、彼が届けてくれた情報が無ければ、アキトとキースの探索は確実にもっと難航しただろう。クレットへは、感謝の気持ちしかない。
無事に二人が帰ってきてからは、俺も約束を果たすべくクレットを探していた。だが、ずっと見つけられずにいたんだ。ずっと気になっていたから、あちらから来てくれて良かった。
「ああ、クレット。遠慮せずにこっちに来てくれ」
俺が普通に名前を呼んだ事に、アキトは驚いた様子でバッとこちらを見た。
「え、知り合い?」
「ああ、彼は元騎士なんだが、この間世話になってね」
クレットがしてくれた事をきちんと説明したい所だが、あんな風に隠れている状態では難しいからな。
俺に名前を呼ばれたクレットは、本当に出て行って良いのかなと言いたげに不安そうに眉をひそめている。
「大丈夫だから、出てきてくれ」
重ねてそう声をかければ、クレットはようやく恐る恐る木の陰から出てきてくれた。
「あの、ハロルド様とアキト様のデートの邪魔をしてしまって…本当にすみません」
こんなに挙動不審な動きをするやつじゃない筈なんだがと思っていたら、まさかのそんな理由だったのか。俺達のデートの邪魔だと思って隠れているなんて、さすがに予想もできなかったな。
「クレット、こっちは俺の伴侶候補のアキトだ」
クレットのおかげで助かった俺の伴侶候補のアキトだよと言いたい所だが、説明も無しにいきなりそんな事を言ったらアキトが驚くだろう。
俺はぐっとこらえて紹介の言葉を口にした。
「こんにちは。ハルの伴侶候補で冒険者のアキトと言います」
「は…私は、元騎士のクレットと…いいます」
クレットはぎこちなく挨拶を返した後、本当に伴侶候補のアキト様にも幽霊の言葉が通じるんですねとぽつりとそう呟いた。
幽霊なのに言葉が通じる事に、一々感動するんだよな。気持ちは分かると心の中で同意しながら、俺はアキトに声をかけた。
「クレットはね、この前のアキトとキースが連れ去られた時、魔道具の情報や盗賊団の拠点の位置をわざわざ教えに来てくれたんだよ」
「そうだったんですね!俺とキースくんのためにわざわざ来てくれるなんて…ありがとうございます!」
素直なアキトの感謝の言葉に、クレットは苦笑を浮かべた。
「いえ、私はただ知っていた情報を伝えただけですし…もしハロルド様が幽霊の言葉を理解してくれなければ、その情報も無駄になる所でした。だからすごいのはハロルド様です」
まさかそんな答えを返されると思っていなかった俺は、慌てて口を開く。
「そんな事は無いよ」
「しかし…」
俺はまっすぐにクレットを見つめた。
「あの情報は本当に助かったよ」
「…本当ですか?」
「ああ。なんといっても盗賊団の拠点を三つも潰せたんだ。それだけでもすごく価値のある情報だったのに、アキトとキースにまで辿り着いたんだから。ウィル兄もすごく褒めてたよ」
ウィル兄が褒めていたというのは、本当の話だ。
クレットは昔からすごい情報取集能力を持っていたからねーと、自慢げに教えてくれた。さすがクレットだと何度も言っていたし、幽霊になってまで手伝ってくれるなんてと言葉を詰まらせたりもしていたな。
これを勝手に言ってしまうと、泣いてた事をばらしたーと拗ねられるから言えないんだが。
クレットはまるで噛み締めるように褒められたと呟いてから、照れくさそうに笑ってみせた。
本当にクレットはウィル兄の事を慕ってくれていたんだな。
「私は少し城は離れていたんですが…アキト様とキース様が無事に帰ってきていると聞いて、一目お姿を拝見しようと思っていたんです。でもお部屋に行くのはさすがに失礼だと機会を伺っていまして…デートの邪魔をしてすみませんでした」
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