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1192.【ハル視点】戸惑い
その時は当然慌てたし、かなり動揺もしたようだが、盗賊たちの会話から人の言葉を喋れるウマと一緒に逃げた事にはすぐに気が付いたらしい。ウィル兄が褒めるだけあって、本当に優秀な人なんだな。
「すぐにお二人の後を追って森に入ってはみたんですが…何故か全く見つけられず、それならと盗賊団の本拠地に戻りました」
その言葉に思わずアキトと顔を見合わせてしまった。全く見つけられなかったのは、シュリの気配を消す魔法のせいだろうな。俺もアキトの魔力を感じるまでは何も気付けなかったから、おそらくその時もクレットは近くを通り過ぎていたんだろう。
そう考えている間も、クレットは話し続けた。
「脱出したお二人を追う事ができないのなら、いっそ本隊の到着を本拠地で待とうと決めました。隊の目的が探索だけではなく、牙蛇盗賊団の討伐も含んでいると知っていましたから」
「あー…情報収集で得た情報を伝えようとしてくれてたって事だよな」
「はい。ハロルド様に、こっそりと情報を伝えようと考えていました」
やっぱりそうだったのか。俺はガックリと肩の力を抜きながら、困り顔で答える。
「…そう、だったのか…それは本当にすまない。俺は逃げてきたアキトとキースに、その一緒に逃げてくれたウマのシュリと合流した後、そのままこっちに帰ってきてしまったから…」
伝えたい事を伝えられないという幽霊にとってのつらい状況に、またクレットを追い込んでしまったという事だ。
「いえいえ、お二人の所へ行くとの報告もせずに俺が勝手にした事ですから、それはお気になさらず」
そう言うと、クレットはふわりと笑ってくれた。すこしぐらい怒ったり苛立ったりしても良いのに、優しい人だ。
ちなみに本拠地にやってきたファーガス兄さんとマティさんが、人質がいないから全力で暴れて良いなと言っていたから、アキトとキースが無事に保護された事は早いうちから分かっていたらしい。
何なら人質がどうなっても良いのかーと苦し紛れに叫んだ盗賊たちに、もうこっちで保護してるんだよとか、騙されねぇぞ馬鹿やろうって叫んで跳び蹴りをした衛兵さんたちがいたりもしたらしい。
あー跳び蹴りが得意な衛兵か。うん、数人の衛兵の顔が浮かんでは消えていくな。
「騎士たちも衛兵たちもそれに使用人たちも、みんな楽しそうでしたよ」
クレットはそう断言したが、おそらく楽しそうに大暴れしていたの間違いじゃないかな?
残念ながらその光景なら、簡単に想像できてしまうんだよな。
牙蛇盗賊団からすれば、相手が死ななければ良いと思って全力で挑んで来る楽しそうな相手なんて、さぞかし怖い相手だっただろう。
まああんな事をしでかしたんだから、同情なんて一切しないが。
そんな事を考えながら、俺はクレットに視線を向けた。まだきちんと礼の言葉を伝えていなかったな。
「クレットからの助力と気配りに心からの感謝を」
幽霊になったクレットはもう、騎士団の規範に縛られる存在では無い。それなのに、自分の意思だけで手伝ってくれた。
「本当にありがとうございました」
「いえ、とんでもない」
俺はちらりとアキトの顔を見てから、おもむろに口を開いた。
「クレット、情報を教えてもらったあの日に約束していた通り、何か心残りがあるのなら俺とアキトで伝えるが…」
アキトならきっと、今の言葉だけでクレットと約束していた事の内容を理解してくれるだろう。そんな確信があった。
「あの時は言えなかったんですが…実は私はこれという心残りなんて何も思い浮かばないんですよね」
「そうなのか?本当に?遠慮はしていないか?」
クレットの性格からしてその可能性もあるだろうと、感情の揺れを見逃さないようにまっすぐに目を見つめながら俺はそう尋ねた。クレット本人は、目を反らすでもなくあっさりと答えた。
「はい、これは決して遠慮をしているとかでは無く、おそらく私はもっと情報を集めて隊の役に立ちたかったんだと思うんです」
「なるほど」
「でも、盗賊団の情報を伝えてウィリアム隊長に褒めてもらっても、ファーガス様に感謝の言葉を告げられても消えなかったので…」
それが心残りでは無かったと分かったという事か。
「あの…そういう幽霊もいますよ」
「そうなんですか?」
「はい、えっと…ハル、近くに誰かいる?」
アキトはきょろりと周りを見回してから、そう尋ねてきた。
これは何か言い難い事を言おうとしているんだなと、すぐに気が付いた。わざわざ周りを警戒するという事は、アキトが異世界人である事だろうか。
周りの気配を探ってみたが、今は近くに人はいないな。
「いないけど…でもちょっとだけ待って」
俺はそう言うなり、さっとクレットを振り返った。急な動きで驚かせてしまったようだが、クレットはどうしました?とこちらを見つめている。
「クレット、防音結界の魔道具を発動しても良いだろうか?」
「え…あ、はい。もちろん大丈夫です」
無事に許可を得た俺は、ささっと腕輪から魔道具を取り出して設置していく。クレットは明らかに戸惑っているようだが、申し訳ないが今はアキトのために場所を整える方が優先だ。
無事に設置が終わるのを待って、クレットは口を開いた。
「防音結界が必要な話…なんですか?」
「すみません。俺の出身がちょっと特殊なので…俺の出身地は異世界なんです」
アキトはさらりとそう告白した。
「すぐにお二人の後を追って森に入ってはみたんですが…何故か全く見つけられず、それならと盗賊団の本拠地に戻りました」
その言葉に思わずアキトと顔を見合わせてしまった。全く見つけられなかったのは、シュリの気配を消す魔法のせいだろうな。俺もアキトの魔力を感じるまでは何も気付けなかったから、おそらくその時もクレットは近くを通り過ぎていたんだろう。
そう考えている間も、クレットは話し続けた。
「脱出したお二人を追う事ができないのなら、いっそ本隊の到着を本拠地で待とうと決めました。隊の目的が探索だけではなく、牙蛇盗賊団の討伐も含んでいると知っていましたから」
「あー…情報収集で得た情報を伝えようとしてくれてたって事だよな」
「はい。ハロルド様に、こっそりと情報を伝えようと考えていました」
やっぱりそうだったのか。俺はガックリと肩の力を抜きながら、困り顔で答える。
「…そう、だったのか…それは本当にすまない。俺は逃げてきたアキトとキースに、その一緒に逃げてくれたウマのシュリと合流した後、そのままこっちに帰ってきてしまったから…」
伝えたい事を伝えられないという幽霊にとってのつらい状況に、またクレットを追い込んでしまったという事だ。
「いえいえ、お二人の所へ行くとの報告もせずに俺が勝手にした事ですから、それはお気になさらず」
そう言うと、クレットはふわりと笑ってくれた。すこしぐらい怒ったり苛立ったりしても良いのに、優しい人だ。
ちなみに本拠地にやってきたファーガス兄さんとマティさんが、人質がいないから全力で暴れて良いなと言っていたから、アキトとキースが無事に保護された事は早いうちから分かっていたらしい。
何なら人質がどうなっても良いのかーと苦し紛れに叫んだ盗賊たちに、もうこっちで保護してるんだよとか、騙されねぇぞ馬鹿やろうって叫んで跳び蹴りをした衛兵さんたちがいたりもしたらしい。
あー跳び蹴りが得意な衛兵か。うん、数人の衛兵の顔が浮かんでは消えていくな。
「騎士たちも衛兵たちもそれに使用人たちも、みんな楽しそうでしたよ」
クレットはそう断言したが、おそらく楽しそうに大暴れしていたの間違いじゃないかな?
残念ながらその光景なら、簡単に想像できてしまうんだよな。
牙蛇盗賊団からすれば、相手が死ななければ良いと思って全力で挑んで来る楽しそうな相手なんて、さぞかし怖い相手だっただろう。
まああんな事をしでかしたんだから、同情なんて一切しないが。
そんな事を考えながら、俺はクレットに視線を向けた。まだきちんと礼の言葉を伝えていなかったな。
「クレットからの助力と気配りに心からの感謝を」
幽霊になったクレットはもう、騎士団の規範に縛られる存在では無い。それなのに、自分の意思だけで手伝ってくれた。
「本当にありがとうございました」
「いえ、とんでもない」
俺はちらりとアキトの顔を見てから、おもむろに口を開いた。
「クレット、情報を教えてもらったあの日に約束していた通り、何か心残りがあるのなら俺とアキトで伝えるが…」
アキトならきっと、今の言葉だけでクレットと約束していた事の内容を理解してくれるだろう。そんな確信があった。
「あの時は言えなかったんですが…実は私はこれという心残りなんて何も思い浮かばないんですよね」
「そうなのか?本当に?遠慮はしていないか?」
クレットの性格からしてその可能性もあるだろうと、感情の揺れを見逃さないようにまっすぐに目を見つめながら俺はそう尋ねた。クレット本人は、目を反らすでもなくあっさりと答えた。
「はい、これは決して遠慮をしているとかでは無く、おそらく私はもっと情報を集めて隊の役に立ちたかったんだと思うんです」
「なるほど」
「でも、盗賊団の情報を伝えてウィリアム隊長に褒めてもらっても、ファーガス様に感謝の言葉を告げられても消えなかったので…」
それが心残りでは無かったと分かったという事か。
「あの…そういう幽霊もいますよ」
「そうなんですか?」
「はい、えっと…ハル、近くに誰かいる?」
アキトはきょろりと周りを見回してから、そう尋ねてきた。
これは何か言い難い事を言おうとしているんだなと、すぐに気が付いた。わざわざ周りを警戒するという事は、アキトが異世界人である事だろうか。
周りの気配を探ってみたが、今は近くに人はいないな。
「いないけど…でもちょっとだけ待って」
俺はそう言うなり、さっとクレットを振り返った。急な動きで驚かせてしまったようだが、クレットはどうしました?とこちらを見つめている。
「クレット、防音結界の魔道具を発動しても良いだろうか?」
「え…あ、はい。もちろん大丈夫です」
無事に許可を得た俺は、ささっと腕輪から魔道具を取り出して設置していく。クレットは明らかに戸惑っているようだが、申し訳ないが今はアキトのために場所を整える方が優先だ。
無事に設置が終わるのを待って、クレットは口を開いた。
「防音結界が必要な話…なんですか?」
「すみません。俺の出身がちょっと特殊なので…俺の出身地は異世界なんです」
アキトはさらりとそう告白した。
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