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1194.【ハル視点】やりたいことは
「心残りが何なのかは分からないけど、自分がやりたい事をやり続けてみるっていう幽霊たちも多かったですね」
「やりたいこと…ですか」
「いつかは当たるかもって、みんな楽しそうに色々としてましたよ」
黙り込んでしまったクレットの様子をちらりと見てから、俺はアキトに向かって尋ねた。
「例えば…アキトの知ってる幽霊たちはどんな事をしていたんだい?」
色々と話してもらえば、クレットの助けになるような例が出て来るかもしれない。
「えっとね、国で一番高い山の頂上からの景色を見たいって、山に行った人がいたなー昔から一度行ってみたいとはずっと思ってたけど、体力とか年齢とかを理由に諦めてたんだって」
なるほど、山登りか。たしかに山に登るには、かなりの体力が必要だな。騎士のような体力勝負の仕事をしている人ならともかく、一般市民にとっては挑戦ずるのも難しいのは理解ができる。
どの程度の高さなのかは分からないが、国一番の高さの山となると余計にな。
「たしかに山登りは諦める人も多いだろうな」
「うん。でも幽霊になったら体力も関係ないからって、ワクワクした様子で行ってくるって挨拶されたんだよ」
懐かしそうに笑って教えてくれたアキトに、俺とクレットは揃って頷いた。
「その人は…戻ってきたのか?」
「うん、次は国内の違う山にも行ってみたいし、外国…えっと、他国の山にも行くんだーって張り切ってたよ」
「そうか。その人は生前に出来なかった事を、幽霊になってから叶えたんだな」
その人が行きたい場所に行けて良かった。面識もない人なのに、不思議と心からそう思った。幽霊に感情移入してしまうのは、自分も幽霊になった事があるからなんだろうか。
「なあ、アキト。他には?」
もっと聞きたいと思わずそう口にすれば、アキトは優しく笑って口を開いた。
「そうだなー動物が好きだけど近寄れないアレルギー…えっとそういう病気だった人が、動物がいっぱいいる場所に行ったとかもあったよ」
「それはつらい病気だな…」
思わずそう呟けば、クレットも真剣な表情で頷いた。
「そんな病気があるんですね…」
「あれ、こっちの世界にはアレルギーってないの?」
「そもそもあれるぎーとは…一体どんなものなんだ?」
「え、えーっとね…」
時々言葉に詰まりながらも、アキトはあれるぎーという病気について説明してくれた。
「こっちの世界にはそのあれるぎーと言う病気は無いな」
「え、そうなの?」
「さっき説明してくれた、皮膚に異常が起きたり、どこかがかゆくなるみたいな症状自体はあるんだけどね」
どちらかというと、それは病気では無く毒や呪いという扱いになる。だから、ポーションで治す事が出来る。実は一部の慢性的な病気にはポーションは効きが悪いんだが、あれるぎーとやらには確実に効くだろう。
そんな事を説明すれば、アキトはへーと感心した様子で聞き入っていた。
「話を聞きながら考えていたんですが…私がやりたい事はひとつしかありません」
不意にクレットがそう呟いた。
「それは何だ?」
何であっても手伝うつもりで尋ねれば、クレットはすぐに答えた。
「今までと変わらずこの領や騎士団のために情報を集める事――そして可能なら、それをウィリアム隊長やジル副隊長に、役立てて頂きたいです」
本当にクレットはどこまで行っても騎士なんだな。この領のため、騎士団のために役立ちたいと、思ってくれるのか。
「クレットがやりたいなら、すれば良い」
「ですが…伝える方法が…」
ありませんからとしょんぼりと肩を落としたクレットに、俺は笑顔を浮かべながら答えた。
「大丈夫、俺たちがいるじゃないか」
「そうですよ、クレットさん」
「ああ、だが、まあ…アキトと俺は、もうしばらくすればトライプールに帰る事になるんだが…」
「はい、分かっています」
なるほど。俺達が帰ってしまう事は理解しているから、伝える手段が無くなると言ったのか。アキトとキースのために有用な情報を伝えた対価に、この領に残って欲しいとここで言わないのがクレットだな。
まあもし言われたとしても、そうそう頷く事はできないんだが。そんな事をしたら、トライプールからレーブンとローガンが殴りこみに来る事が確定してるからな。
「でも、もう二度とここに来ないなんてわけでも無い。だよな、アキト?」
「うん、俺はハルの家族の事が大好きになっちゃったからね!もし可能なら、頻繁に会いに来たいぐらいだよ!」
アキトにとっては、ここは居心地の良い場所らしい。嬉しそうにニコニコ笑顔で即答してくれた。故郷を好きになってくれた事は、素直に嬉しいな。
「それにもしどうしても急ぎで何か伝えたい事があるなら、クレットさえ良ければトライプールまで俺達に会いにきても良いしな」
俺は笑いながらそう告げた。時間の制限の無い幽霊にとっては、さほど遠い距離でも無いだろう。
「やりたいこと…ですか」
「いつかは当たるかもって、みんな楽しそうに色々としてましたよ」
黙り込んでしまったクレットの様子をちらりと見てから、俺はアキトに向かって尋ねた。
「例えば…アキトの知ってる幽霊たちはどんな事をしていたんだい?」
色々と話してもらえば、クレットの助けになるような例が出て来るかもしれない。
「えっとね、国で一番高い山の頂上からの景色を見たいって、山に行った人がいたなー昔から一度行ってみたいとはずっと思ってたけど、体力とか年齢とかを理由に諦めてたんだって」
なるほど、山登りか。たしかに山に登るには、かなりの体力が必要だな。騎士のような体力勝負の仕事をしている人ならともかく、一般市民にとっては挑戦ずるのも難しいのは理解ができる。
どの程度の高さなのかは分からないが、国一番の高さの山となると余計にな。
「たしかに山登りは諦める人も多いだろうな」
「うん。でも幽霊になったら体力も関係ないからって、ワクワクした様子で行ってくるって挨拶されたんだよ」
懐かしそうに笑って教えてくれたアキトに、俺とクレットは揃って頷いた。
「その人は…戻ってきたのか?」
「うん、次は国内の違う山にも行ってみたいし、外国…えっと、他国の山にも行くんだーって張り切ってたよ」
「そうか。その人は生前に出来なかった事を、幽霊になってから叶えたんだな」
その人が行きたい場所に行けて良かった。面識もない人なのに、不思議と心からそう思った。幽霊に感情移入してしまうのは、自分も幽霊になった事があるからなんだろうか。
「なあ、アキト。他には?」
もっと聞きたいと思わずそう口にすれば、アキトは優しく笑って口を開いた。
「そうだなー動物が好きだけど近寄れないアレルギー…えっとそういう病気だった人が、動物がいっぱいいる場所に行ったとかもあったよ」
「それはつらい病気だな…」
思わずそう呟けば、クレットも真剣な表情で頷いた。
「そんな病気があるんですね…」
「あれ、こっちの世界にはアレルギーってないの?」
「そもそもあれるぎーとは…一体どんなものなんだ?」
「え、えーっとね…」
時々言葉に詰まりながらも、アキトはあれるぎーという病気について説明してくれた。
「こっちの世界にはそのあれるぎーと言う病気は無いな」
「え、そうなの?」
「さっき説明してくれた、皮膚に異常が起きたり、どこかがかゆくなるみたいな症状自体はあるんだけどね」
どちらかというと、それは病気では無く毒や呪いという扱いになる。だから、ポーションで治す事が出来る。実は一部の慢性的な病気にはポーションは効きが悪いんだが、あれるぎーとやらには確実に効くだろう。
そんな事を説明すれば、アキトはへーと感心した様子で聞き入っていた。
「話を聞きながら考えていたんですが…私がやりたい事はひとつしかありません」
不意にクレットがそう呟いた。
「それは何だ?」
何であっても手伝うつもりで尋ねれば、クレットはすぐに答えた。
「今までと変わらずこの領や騎士団のために情報を集める事――そして可能なら、それをウィリアム隊長やジル副隊長に、役立てて頂きたいです」
本当にクレットはどこまで行っても騎士なんだな。この領のため、騎士団のために役立ちたいと、思ってくれるのか。
「クレットがやりたいなら、すれば良い」
「ですが…伝える方法が…」
ありませんからとしょんぼりと肩を落としたクレットに、俺は笑顔を浮かべながら答えた。
「大丈夫、俺たちがいるじゃないか」
「そうですよ、クレットさん」
「ああ、だが、まあ…アキトと俺は、もうしばらくすればトライプールに帰る事になるんだが…」
「はい、分かっています」
なるほど。俺達が帰ってしまう事は理解しているから、伝える手段が無くなると言ったのか。アキトとキースのために有用な情報を伝えた対価に、この領に残って欲しいとここで言わないのがクレットだな。
まあもし言われたとしても、そうそう頷く事はできないんだが。そんな事をしたら、トライプールからレーブンとローガンが殴りこみに来る事が確定してるからな。
「でも、もう二度とここに来ないなんてわけでも無い。だよな、アキト?」
「うん、俺はハルの家族の事が大好きになっちゃったからね!もし可能なら、頻繁に会いに来たいぐらいだよ!」
アキトにとっては、ここは居心地の良い場所らしい。嬉しそうにニコニコ笑顔で即答してくれた。故郷を好きになってくれた事は、素直に嬉しいな。
「それにもしどうしても急ぎで何か伝えたい事があるなら、クレットさえ良ければトライプールまで俺達に会いにきても良いしな」
俺は笑いながらそう告げた。時間の制限の無い幽霊にとっては、さほど遠い距離でも無いだろう。
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小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。