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1199.【ハル視点】格好良いアキト
「ダンジョンと繋がっているとなると…人選が更に難しくなるな」
重々しく父さんがそう呟けば、ファーガス兄さんもすぐにこくりと頷きを返した。
「よくあそこのダンジョンに出入りしている私とうちの隊員たちは、行くべきだろう。それに父さんもムレングには詳しいから…可能なら一緒に来てもらいたいんだが…」
うん、それが妥当だろうな。
ムレングダンジョンに出入りしている回数で考えれば、我が家ではファーガス兄さんと父さんが一番多い。おそらく次点はマティさんだろう。そしてその次は、ここにはいない母さんだ。
ウィル兄さんは、そもそもダンジョンに入る機会自体が滅多に無い。ジルさんは…そういえば、ダンジョンに入った事があるのかなんて事を話した覚えが無いな。
「まあそうだな。分かった」
「ファーグとケイリーさんが参加するなら、私は領主城に残ろうと思う。グレースさんが不在だから、全員が揃っていなくなるわけにはいかない」
父さんが参加を快諾した次の瞬間、マティさんは即座にそう宣言した。きっとこうなるだろうと、ある程度予想していたんだろうな。
たしかに父さんと母さんが不在で、その上ファーガス兄さんもいないとなれば、せめて次期領主夫妻の一人であるマティさんには城に残って貰った方が良いだろうな。
「ああ、すまないマティ。助かるよ」
ファーガス兄さんもそうなるだろうと予想はしていたのか、マティがいないと寂しいと拗ねる事も無かった。
「いや、気にするな。盗賊の方はまかせるよ」
「まかせてくれ」
ファーガス兄さんとマティさんは、目を見合わせてふわりと笑い合っている。相変わらずの仲の良さで何よりだ。
「それで、ウィリアムとジルさんはどうするんだ?」
「うーん、たしかに俺はダンジョンにはあんまり詳しくないけどー、でも盗賊団の行方を探索するには俺と俺の隊がいた方が良いと思うんだよねー。中に入ったら痕跡を辿らないと駄目だろうし」
ウィル兄の言葉に、その場にいたアキト以外の全員がすぐさま頷いた。
まず入口としている場所からは確実に移動しているだろうし、ダンジョンの中に隠れ家や拠点を持っている可能性もある。そういう痕跡を辿るのは、ウィル兄の隊か、もしくは陰護衛の隊が適任だろう。
「ウィリアム隊長、私もマティさんと一緒に、領主城に残ります」
そう口を開いたのは、ジルさんだ。
「え…ジルも残るの?」
予想していなかったのか驚くウィル兄さんに、ジルさんはええと頷いた。
「はい。領主様の不在をマティさん一人にまかせるのもどうかと思いますので、微力ながら手伝おうかと」
「ありがとう、ジル。頼りにしてるよ」
笑ってそう告げたマティさんの横から、うっすらと笑みを浮かべたファーガス兄さんが、ジルさんに声をかける。
「マティをよろしく頼む」
「こちらこそ」
これで父さんとファーガス兄さん、ウィル兄さんの参加が決定したわけか。
「それに、クレットは申し訳ないけど、つきあってもらわないと駄目なんだけどー大丈夫かな?」
「はっ!もちろんです、ウィリアム隊長!」
即答したクレットの言葉をアキトが伝えれば、ウィル兄さんは嬉しそうに微笑んだ。クレットも嬉しそうだなと微笑ましく見守っていると、不意にウィ兄さんがこちらを向いた。
「あ、そうだ。ハル、ハルにも来てもらうよ?クレットとの橋渡しをしてもらわないと駄目だからね」
「ああ、分かっている」
「アキトくんは…?」
ジルさんは、どうするのと言いたげにちらりとアキトを見ながら尋ねた。
「俺も行きたいです!」
アキトの答えには、すこしの躊躇も無かった。うん、アキトならそう言うと思っていたよ。
「アキトには、領主城に残って欲しいんだけど…」
「…なんで?」
まっすぐにこちらを見つめながら尋ねてくるアキトに、俺は困りながらも答えた。
「いくつか理由はあるけど、一番大事なのはシュリへの魔力供給のためだね。アキト以外にできる人はいないから…シュリのためにも残って貰わないといけない」
これも理由の一つであるという言葉に、嘘は無い。実際にシュリの食事の用意ができるのは、アキトだけだからな。
「そうだな。かといって、シュリを勝手に危険な場所に連れていくわけにも行かないんだ」
父さんは俺の代わりにそう続けてくれた。
「今は一時的に辺境領で預かっているだけという形だから、迎えが来るまでは絶対に安全な場所で保護をしておきたいからね」
父さんは言わなかったが、しかも預かっている相手が王宮という形になるからな。安全な場所から出すわけにはいかない。
「…そっか、うん、分かった。シュリくんのためなら仕方ないと思うから、俺も残るね」
納得してくれたのかアキトは残ると言ってくれたが、ここで本当の理由を言わないのも何だか嫌だな。そう思った俺は、すっとアキトに視線を戻した。
「アキト、ごめん。もう一つの理由は――あそこにアキトを連れて行きたくないんだ」
「え、そうなの?」
予想もしていなかったと言いたげな首を傾げたアキトに、俺はさらに続けた。
「ああ、アキトとキースにあの盗賊団の本拠地に近づいて欲しくない」
「俺は別に何とも思ってないんだけど…」
そう、気にしているのはアキトとキースではなく俺の方だ。
「うん、今まで数日かけてアキトの反応を見てきたから、それは分かってるよ。ただ、俺があの場所に近づいて欲しくないっていう――いわば我儘だな」
呆れられても仕方ないと思いながら告げた言葉に、アキトはそっかと頷いただけだった。
「呆れた?」
思わずそう言葉にして尋ねてしまったが、アキトはあっさりとううんと首を振った。
「呆れたりしないよ。ハルが言うなら俺はあそこには近づかない」
「無理はしてない?」
「してないよ。伴侶候補の可愛い希望ぐらい、俺だって叶えたいんだからね」
あーもう。本当にこういう時のアキトは、格好良いんだよな。俺の小さな我儘ぐらい、受け止めてしまう度量を持っている。
嬉しい言葉を噛み締めていると、周りの家族たちからは拍手が湧いた。
伴侶馬鹿が多い我が家では、アキトも立派に伴侶を甘やかす仲間ぐらいの認定を受けたかもしれないな。
重々しく父さんがそう呟けば、ファーガス兄さんもすぐにこくりと頷きを返した。
「よくあそこのダンジョンに出入りしている私とうちの隊員たちは、行くべきだろう。それに父さんもムレングには詳しいから…可能なら一緒に来てもらいたいんだが…」
うん、それが妥当だろうな。
ムレングダンジョンに出入りしている回数で考えれば、我が家ではファーガス兄さんと父さんが一番多い。おそらく次点はマティさんだろう。そしてその次は、ここにはいない母さんだ。
ウィル兄さんは、そもそもダンジョンに入る機会自体が滅多に無い。ジルさんは…そういえば、ダンジョンに入った事があるのかなんて事を話した覚えが無いな。
「まあそうだな。分かった」
「ファーグとケイリーさんが参加するなら、私は領主城に残ろうと思う。グレースさんが不在だから、全員が揃っていなくなるわけにはいかない」
父さんが参加を快諾した次の瞬間、マティさんは即座にそう宣言した。きっとこうなるだろうと、ある程度予想していたんだろうな。
たしかに父さんと母さんが不在で、その上ファーガス兄さんもいないとなれば、せめて次期領主夫妻の一人であるマティさんには城に残って貰った方が良いだろうな。
「ああ、すまないマティ。助かるよ」
ファーガス兄さんもそうなるだろうと予想はしていたのか、マティがいないと寂しいと拗ねる事も無かった。
「いや、気にするな。盗賊の方はまかせるよ」
「まかせてくれ」
ファーガス兄さんとマティさんは、目を見合わせてふわりと笑い合っている。相変わらずの仲の良さで何よりだ。
「それで、ウィリアムとジルさんはどうするんだ?」
「うーん、たしかに俺はダンジョンにはあんまり詳しくないけどー、でも盗賊団の行方を探索するには俺と俺の隊がいた方が良いと思うんだよねー。中に入ったら痕跡を辿らないと駄目だろうし」
ウィル兄の言葉に、その場にいたアキト以外の全員がすぐさま頷いた。
まず入口としている場所からは確実に移動しているだろうし、ダンジョンの中に隠れ家や拠点を持っている可能性もある。そういう痕跡を辿るのは、ウィル兄の隊か、もしくは陰護衛の隊が適任だろう。
「ウィリアム隊長、私もマティさんと一緒に、領主城に残ります」
そう口を開いたのは、ジルさんだ。
「え…ジルも残るの?」
予想していなかったのか驚くウィル兄さんに、ジルさんはええと頷いた。
「はい。領主様の不在をマティさん一人にまかせるのもどうかと思いますので、微力ながら手伝おうかと」
「ありがとう、ジル。頼りにしてるよ」
笑ってそう告げたマティさんの横から、うっすらと笑みを浮かべたファーガス兄さんが、ジルさんに声をかける。
「マティをよろしく頼む」
「こちらこそ」
これで父さんとファーガス兄さん、ウィル兄さんの参加が決定したわけか。
「それに、クレットは申し訳ないけど、つきあってもらわないと駄目なんだけどー大丈夫かな?」
「はっ!もちろんです、ウィリアム隊長!」
即答したクレットの言葉をアキトが伝えれば、ウィル兄さんは嬉しそうに微笑んだ。クレットも嬉しそうだなと微笑ましく見守っていると、不意にウィ兄さんがこちらを向いた。
「あ、そうだ。ハル、ハルにも来てもらうよ?クレットとの橋渡しをしてもらわないと駄目だからね」
「ああ、分かっている」
「アキトくんは…?」
ジルさんは、どうするのと言いたげにちらりとアキトを見ながら尋ねた。
「俺も行きたいです!」
アキトの答えには、すこしの躊躇も無かった。うん、アキトならそう言うと思っていたよ。
「アキトには、領主城に残って欲しいんだけど…」
「…なんで?」
まっすぐにこちらを見つめながら尋ねてくるアキトに、俺は困りながらも答えた。
「いくつか理由はあるけど、一番大事なのはシュリへの魔力供給のためだね。アキト以外にできる人はいないから…シュリのためにも残って貰わないといけない」
これも理由の一つであるという言葉に、嘘は無い。実際にシュリの食事の用意ができるのは、アキトだけだからな。
「そうだな。かといって、シュリを勝手に危険な場所に連れていくわけにも行かないんだ」
父さんは俺の代わりにそう続けてくれた。
「今は一時的に辺境領で預かっているだけという形だから、迎えが来るまでは絶対に安全な場所で保護をしておきたいからね」
父さんは言わなかったが、しかも預かっている相手が王宮という形になるからな。安全な場所から出すわけにはいかない。
「…そっか、うん、分かった。シュリくんのためなら仕方ないと思うから、俺も残るね」
納得してくれたのかアキトは残ると言ってくれたが、ここで本当の理由を言わないのも何だか嫌だな。そう思った俺は、すっとアキトに視線を戻した。
「アキト、ごめん。もう一つの理由は――あそこにアキトを連れて行きたくないんだ」
「え、そうなの?」
予想もしていなかったと言いたげな首を傾げたアキトに、俺はさらに続けた。
「ああ、アキトとキースにあの盗賊団の本拠地に近づいて欲しくない」
「俺は別に何とも思ってないんだけど…」
そう、気にしているのはアキトとキースではなく俺の方だ。
「うん、今まで数日かけてアキトの反応を見てきたから、それは分かってるよ。ただ、俺があの場所に近づいて欲しくないっていう――いわば我儘だな」
呆れられても仕方ないと思いながら告げた言葉に、アキトはそっかと頷いただけだった。
「呆れた?」
思わずそう言葉にして尋ねてしまったが、アキトはあっさりとううんと首を振った。
「呆れたりしないよ。ハルが言うなら俺はあそこには近づかない」
「無理はしてない?」
「してないよ。伴侶候補の可愛い希望ぐらい、俺だって叶えたいんだからね」
あーもう。本当にこういう時のアキトは、格好良いんだよな。俺の小さな我儘ぐらい、受け止めてしまう度量を持っている。
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