生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1200.たくましい

 クレットさんから伝えられた情報は、会議に参加していた辺境領一家のみんなにとっても驚くべきものだった。

 ――はずなんだけどね。なんだろうこのたくましさは。

 ハルの可愛い我儘で俺の不参加が決まった後、ケイリーさんは皆の意見をまとめたんだ。

「それでは今回の作戦に参加するのは、ファーガスとウィリアム、そしてハルとクレットという事だな。それぞれの隊の中での参加者を誰にするかは、各隊の隊長にまかせる」
「ああ、分かった」
「うん、ちゃんと選抜するよー」
「次は用意すべき物資についてだが…何が必要かを一覧にしようか」

 ケイリーさんがそう口にした瞬間、ジルさんはさっと紙の束と魔道具のペンを取り出して構えた。

「どうぞ」

 ちらっと部屋の中を見回してみたけど、どうやら俺だけがジルさんの素早さに驚いているみたいだ。周りのみんなは普通の顔をして何を持って行くべきかを考えてるみたいだから、これはきっといつもの事なんだろうな。

「行先をムレングダンジョンと想定するなら、少なくとも食料は多めに持ち込むべきだろうな」
「そうだな。魔物を倒す事よりも探索を優先するなら、普段よりも多めに持っておいた方が安全だ」

 ファーガスさんの言葉に、マティさんが誰よりも早く頷いた。

「ミザの鉱石があるという事は、90階層よりも深いという事になりますね」
「そうだねーだったら武器や防具も予備を持っていた方が良いかな」

 何があるか分からないから、きっちりと用意したいとウィリアムさんがそう呟いた。

「ポーション類ももちろん多めに用意が必要だろうな」
「はい。基本的には各部隊の備品在庫から出す予定でいますが…足りない分は執事長と相談で良いでしょうか?」
「ああ、そうしてくれ。私からもボルトに話を通しておく」
「ありがとうございます。お願いします」

 持ち込む物の話がひと段落した所で、今度はマティさんが口を開いた。

「ムレングダンジョンに詳しい冒険者や衛兵への、協力要請も必要では無いか?」
「ああ、それは良い案だな」

 ケイリーさんがすぐさま頷けば、ファーガスさんはマティさんに笑顔を浮かべて答えた。

「さすが、マティだな。その発想は俺には無かったよ」
「はいはい、誉め言葉はいらないよ」
「よし、その件はファーガス。お前が一番ムレングダンジョンに潜っている人たちに詳しいだろう。手配を頼む」
「分かった。では友人の冒険者パーティへ、直接依頼を出しておこう」

 あ、もしかしてそれってサイクさんのパーティかな。ムレングダンジョンをどんどん攻略してるパーティだし、ファーガスさんとは友人だって言ってたもんね。

「衛兵の方はどうします?」
「そちらは私が声をかけてみるよ」

 ケイリーさんはそう言うと、牙蛇盗賊団の生き残りがいるって知ったら張り切る奴が多そうだとニヤリと笑みを浮かべた。あー…それって俺とキースくんの探索隊にも参加してくれてた人たちかな。

「ジルさんは何か意見はあるかい?」
「そうですね…もし万が一誰かが部隊からはぐれた時のために、全員に魔導収納機能のある物を持参するように徹底させて欲しいです」

 基本的には騎士の人たちは、それぞれ自前の魔導収納機能のある物を持って任務に望んでいるらしい。まあ、便利だもんね。魔導収納鞄って。

 もしくはジルさんみたい、軍服のポケットを魔導収納機能が付くように改良しているなんて人もいるんだって。

 でも、なかには『どうせ部隊単位で物資を持ち運ぶから自分のはいらないだろう』そう言って持っていかないなんて人も、ごくまれにだけどいるらしい。

 別に重いわけでも無いのに、そんな人がいるの?ってびっくりしたんだけど、俺以外の全員がうんうんと頷いていたからいるんだろうね。

「冒険者はさすがに全員が持っているだろうが…衛兵には持ち歩かない奴もいるな…」
「そこを徹底できない人は参加させないで欲しいです」

 はっきりと自分の意見を口にしたジルさんに、隣のウィリアムさんが見惚れている。あーきっと今、現在進行形で惚れ直してるんだなって分かる表情だ。

「そうだな、分かった。今回の探索には必要な処置だと、きちんと周知徹底させよう」
「お願いします」
「書類のまとめは…」

 そう言いかけたケイリーさんの目の前で、ジルさんはさらさらと手元にある紙に文字を記入し始めた。文官の仕事もしているというだけあって、ペンの動きがすごく早い。

「終わりました」

 あっという間に正式な書類が出来上がった事に、俺は心から驚いたよ。ジルさんって、本当にすっごい人なんだな。
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