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1203.見送り
今回の先行部隊は騎士としてではなく冒険者としてこっそりと出発するわけだから、大門の所まで見送りに行く事は誰にもできないらしい。
うん、まあそうだよね。
冒険者が依頼に出る時に誰かが見送りに来てるのなんて見た事が無いし、多分めちゃくちゃ目立つと思う。俺だってそんな人がいたら、見ちゃうもんな。
「じゃあ行ってくるね、アキト」
「うん。いってらっしゃい、ハル」
さっきこっそりイワンさんに近づいて、ハルの事よろしくお願いしますって言っておいたんだ。イワンさんは分かってると言いたげに、ひんと嘶いて返事を返してくれた。
「遅くなるかもしれないけど、今日中には帰ってくる予定だから」
「うん、ちゃんと領主城で待ってるよ」
実は、ハルからお願いされたんだよね。
出来れば領主城からは出ないで欲しいって。この前うっかり攫われた身だからね。まだ心配なんだって言われたら、分かったって言うしかないよね。
だからちゃんとどこにも行かずに、領主城でハルの帰りを待つんだ。
「ああ、そうしてくれ」
ホッとした様子を見せたハルは、ニコリと笑みを浮かべるとイワンさんに飛び乗った。
駆け出した先行部隊のみんなの背中が見えなくなるまで、俺はその場に立ち尽くしたまま見送った。
あーどうしよう。
まだ出発したばっかりだっていうのに、もう既に寂しいし、心配でどうにも落ち着かない。
いくらウィリアムさんや他の騎士さんも一緒だとは言え、ハルが難関ダンジョンであるムレングダンジョンに向かうっていうのは事実だからね。心配になるのも仕方ないよね。
「アキト様、この後のご予定は…?」
心配そうにそう尋ねてくれた侍従さんに、俺はとりあえず自分の部屋に戻りますと返した。ここでそわそわしてても、良い事なんてきっと何も無いからね。外に立ち尽くしてたら周りの皆にも心配されちゃいそうだし、とりあえずまずは部屋に戻ろう。
「それでは、領主城まで私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
別に迷うようなややこしい道じゃないから、これはたぶん俺を一人で行かせないための申し出なんだろうな。
そう思ってじっとみてみれば、この侍従さんはかなり強そうだ。
「はい、では領主城までお願いします」
「快諾して頂き、ありがとうございます」
うーん、これは侍従さんの意思で一緒に行くと提案してくれたのか…それともハルが心配して根回ししてたのかどっちだろうな?
なんて事を考えながら、俺は侍従さんと一緒に領主城を目指して歩き出した。
自室に辿り着いた俺は、後ろ手できっちりと部屋の鍵を閉めた。
いつもなら豪華だけど落ち着く部屋だなーと思うのに、今日は何だかだだっ広くて物寂しく見える気がする。
ハルがいない部屋に一人でいる事って、そもそもそんなに無いもんな。今頃は、大門の外に出て街道を駆け抜けてる頃かな。
この前通った道を順番に思い浮かべていると、やっぱり落ち着かない気持ちになってしまう。
あーさっきからハルの事ばっかり考えすぎてるから、余計にそわそわするのかな。うん、そうかもしれない。
ハルの事をあまり考えずに、できる時間つぶしっていったい何があるだろう。ベッドにゴロリと転がったまま考える。
あ、そうだ、本でも読もうかな。
この前ジルさんに借りた本が、まだ手つかずで残ってるんだよね。とある森にある珍しい果物を巡る冒険譚で子どもにも人気のお話らしいんだけど、実在する果物だからすごくきっちり調査した上で書かれてるんだって。大人が読んでも楽しめるって言ってたから、それを読んでみよう。
むくりとベッドから起き上がり、俺は魔導収納鞄から取り出した本を持ってテーブルへと移動した。
分厚い本をテーブルの上に置いて、ぺらぺらとページをめくっていく。
物語は森に迷い込んだ若手の冒険者が、珍しい果物を見つける所から始まった。こんな果物が実在するんだと考えながら読んでいたんだけど、途中で手が止まってしまった。
目はちゃんと文字を追ってるんだけど、その内容が全然頭に入って来ない。さっきから同じ文ばかりを何度も読んでいるのに気が付いて、そっと読むのをやめた。
こんな状態じゃあ読書は楽しめないし、この本にも本を貸してくれたジルさんにも失礼だ。
うん、まあそうだよね。
冒険者が依頼に出る時に誰かが見送りに来てるのなんて見た事が無いし、多分めちゃくちゃ目立つと思う。俺だってそんな人がいたら、見ちゃうもんな。
「じゃあ行ってくるね、アキト」
「うん。いってらっしゃい、ハル」
さっきこっそりイワンさんに近づいて、ハルの事よろしくお願いしますって言っておいたんだ。イワンさんは分かってると言いたげに、ひんと嘶いて返事を返してくれた。
「遅くなるかもしれないけど、今日中には帰ってくる予定だから」
「うん、ちゃんと領主城で待ってるよ」
実は、ハルからお願いされたんだよね。
出来れば領主城からは出ないで欲しいって。この前うっかり攫われた身だからね。まだ心配なんだって言われたら、分かったって言うしかないよね。
だからちゃんとどこにも行かずに、領主城でハルの帰りを待つんだ。
「ああ、そうしてくれ」
ホッとした様子を見せたハルは、ニコリと笑みを浮かべるとイワンさんに飛び乗った。
駆け出した先行部隊のみんなの背中が見えなくなるまで、俺はその場に立ち尽くしたまま見送った。
あーどうしよう。
まだ出発したばっかりだっていうのに、もう既に寂しいし、心配でどうにも落ち着かない。
いくらウィリアムさんや他の騎士さんも一緒だとは言え、ハルが難関ダンジョンであるムレングダンジョンに向かうっていうのは事実だからね。心配になるのも仕方ないよね。
「アキト様、この後のご予定は…?」
心配そうにそう尋ねてくれた侍従さんに、俺はとりあえず自分の部屋に戻りますと返した。ここでそわそわしてても、良い事なんてきっと何も無いからね。外に立ち尽くしてたら周りの皆にも心配されちゃいそうだし、とりあえずまずは部屋に戻ろう。
「それでは、領主城まで私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
別に迷うようなややこしい道じゃないから、これはたぶん俺を一人で行かせないための申し出なんだろうな。
そう思ってじっとみてみれば、この侍従さんはかなり強そうだ。
「はい、では領主城までお願いします」
「快諾して頂き、ありがとうございます」
うーん、これは侍従さんの意思で一緒に行くと提案してくれたのか…それともハルが心配して根回ししてたのかどっちだろうな?
なんて事を考えながら、俺は侍従さんと一緒に領主城を目指して歩き出した。
自室に辿り着いた俺は、後ろ手できっちりと部屋の鍵を閉めた。
いつもなら豪華だけど落ち着く部屋だなーと思うのに、今日は何だかだだっ広くて物寂しく見える気がする。
ハルがいない部屋に一人でいる事って、そもそもそんなに無いもんな。今頃は、大門の外に出て街道を駆け抜けてる頃かな。
この前通った道を順番に思い浮かべていると、やっぱり落ち着かない気持ちになってしまう。
あーさっきからハルの事ばっかり考えすぎてるから、余計にそわそわするのかな。うん、そうかもしれない。
ハルの事をあまり考えずに、できる時間つぶしっていったい何があるだろう。ベッドにゴロリと転がったまま考える。
あ、そうだ、本でも読もうかな。
この前ジルさんに借りた本が、まだ手つかずで残ってるんだよね。とある森にある珍しい果物を巡る冒険譚で子どもにも人気のお話らしいんだけど、実在する果物だからすごくきっちり調査した上で書かれてるんだって。大人が読んでも楽しめるって言ってたから、それを読んでみよう。
むくりとベッドから起き上がり、俺は魔導収納鞄から取り出した本を持ってテーブルへと移動した。
分厚い本をテーブルの上に置いて、ぺらぺらとページをめくっていく。
物語は森に迷い込んだ若手の冒険者が、珍しい果物を見つける所から始まった。こんな果物が実在するんだと考えながら読んでいたんだけど、途中で手が止まってしまった。
目はちゃんと文字を追ってるんだけど、その内容が全然頭に入って来ない。さっきから同じ文ばかりを何度も読んでいるのに気が付いて、そっと読むのをやめた。
こんな状態じゃあ読書は楽しめないし、この本にも本を貸してくれたジルさんにも失礼だ。
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