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1206.食材保存箱
ラスさんの料理はいつ食べてもすっごく美味しいけど、こうして実際に調理をする所を見せてもらうのはそういえば初めてだ。
基本的に厨房で作ってくれてるし、俺はまだ厨房には入らせてもらった事は無いからな。見に来ても良いぞって言ってもらった事はあるんだけど、絶対邪魔になるからね。
でもラスさんが、どうやってあんなに美味しい料理を作っているのかは気になる。
興味津々でじっと見つめていると、ラスさんはうむと一つ頷いてから動き出した。
まずラスさんが向かったのは、部屋の壁沿いに設置されている四角い魔道具の前だった。
見た目は何の変哲も無い少し大き目の箱にしか見えないんだけど、表面にはまるでタッチパネルのようなものがあり、そこにはずらりと文字が並んでいた。
「ラスさん、これって…何ですか?」
「ああ、これは魔導収納の魔法がかけられた魔道具で、厨房での食材の保存に使っているんだ。俺達は食材保存箱と呼んでる」
へぇ、食材保存箱か。つまり俺達の世界の冷蔵庫みたいなものかな。
ラスさんがさっと指を動かすと、表面の文字もスルスルと移動していく。
「ここにある物は何でも好きに使って良いんだ」
なんでも領主様のご厚意で、こちらの厨房にも基本的な食材は定期的に補充・交換されているらしいよ。さすがケイリーさん。そういう所まで気配りが出来るんだ。
「ここの文字が出ている所は後付けしてもらったまた別の魔道具でな、中に何がどのぐらい入っているかが文字として出るんだ」
そう言われて手元をそっと覗き込んでみると、たしかに見た事のある食材の名前が含まれている。
「これは便利ですね!」
感心した俺に、ラスさんは苦笑しながら答えた。
「あー確かに便利ではあるんだがな。つけた理由がな…」
ラスさんによると、この機能をわざわざつけたきっかけは、一部の使用人さんたちの暴走だったらしい。
暴走って何?どういう事?って思ったけど、理由を聞けば納得だった。
ここにある物は何でも使って良いという事は、逆にここに食材を入れておけば他の人も食べてくれるのではと考えた人たちがいたらしい。
自分の故郷の食材を食べてみて欲しいとか、自分はお勧めしたいぐらい好きなのに人気が無い食材とか、手に入れたけど調理法が分からないから誰か使ってくれとか。
そういう理由で、食材保存箱の中にどんどん食材が増えていったらしい。
「だが、さすがに誰がどんな目的で入れたものかが分かるようにしないと、怖くて使えないという意見が多くて急遽つけられたんだ」
あーうん、確かにそれはちょっと怖いかもしれないな。食べちゃってから、実は後で使うつもりだったとかになっても困るもんね。
「ああ。これなんかが、そうだな」
そう言いながらラスさんが指差した所には『ツゴミ×8こ 南部原産の珍しい果物 庭に植えられるかと取り寄せたが種なしだったため 誰でも自由にどうそ 庭師ぺスカ』と書かれている。
あれ、ペスカさんって、たしかギュームさんの伴侶さんだよね。」
「もし興味があるなら…食べてみるか?」
「あ、はい。知らない果物なので、気になってます」
よしと頷いたラスさんの指がその文字に触れると、箱の前に青い果物が二つ、ふわりと浮かび上がった。へぇ、そうやって出てくるんだ。
ラスさんはいつの間にか取り出した小ぶりのナイフで器用に皮を剥くと、薄水色の果肉を俺に差し出してくれた。
「いただきます」
ちょっと勇気がいるような色合いだけど、この世界に長くいると色の違和感にも段々と慣れてくるんだよな。
躊躇いなく口に放り込んだ俺は、思わずんーと声をあげた。
何だろう、メロンとマンゴーを足して二で割ったような味だ。濃厚な甘みと、爽やかな後味が美味しい。
「美味しいです!」
「ああ、美味しいな」
俺とラスさんは顔を見合わせて、ふふと笑い合った。
ツゴミを完食した後、ラスさんは迷いなく食材を取り出しては調理台の上にずらりと並べていった。
「よし、こんなものか」
後は調味料だなと呟きながら、今度は腰につけていた小さな鞄から瓶や小袋をどんどん取り出しては並べていく。
ただそれだけなのに、手際がめちゃくちゃ良い事が伝わってくる。
「よし、始めるか」
基本的に厨房で作ってくれてるし、俺はまだ厨房には入らせてもらった事は無いからな。見に来ても良いぞって言ってもらった事はあるんだけど、絶対邪魔になるからね。
でもラスさんが、どうやってあんなに美味しい料理を作っているのかは気になる。
興味津々でじっと見つめていると、ラスさんはうむと一つ頷いてから動き出した。
まずラスさんが向かったのは、部屋の壁沿いに設置されている四角い魔道具の前だった。
見た目は何の変哲も無い少し大き目の箱にしか見えないんだけど、表面にはまるでタッチパネルのようなものがあり、そこにはずらりと文字が並んでいた。
「ラスさん、これって…何ですか?」
「ああ、これは魔導収納の魔法がかけられた魔道具で、厨房での食材の保存に使っているんだ。俺達は食材保存箱と呼んでる」
へぇ、食材保存箱か。つまり俺達の世界の冷蔵庫みたいなものかな。
ラスさんがさっと指を動かすと、表面の文字もスルスルと移動していく。
「ここにある物は何でも好きに使って良いんだ」
なんでも領主様のご厚意で、こちらの厨房にも基本的な食材は定期的に補充・交換されているらしいよ。さすがケイリーさん。そういう所まで気配りが出来るんだ。
「ここの文字が出ている所は後付けしてもらったまた別の魔道具でな、中に何がどのぐらい入っているかが文字として出るんだ」
そう言われて手元をそっと覗き込んでみると、たしかに見た事のある食材の名前が含まれている。
「これは便利ですね!」
感心した俺に、ラスさんは苦笑しながら答えた。
「あー確かに便利ではあるんだがな。つけた理由がな…」
ラスさんによると、この機能をわざわざつけたきっかけは、一部の使用人さんたちの暴走だったらしい。
暴走って何?どういう事?って思ったけど、理由を聞けば納得だった。
ここにある物は何でも使って良いという事は、逆にここに食材を入れておけば他の人も食べてくれるのではと考えた人たちがいたらしい。
自分の故郷の食材を食べてみて欲しいとか、自分はお勧めしたいぐらい好きなのに人気が無い食材とか、手に入れたけど調理法が分からないから誰か使ってくれとか。
そういう理由で、食材保存箱の中にどんどん食材が増えていったらしい。
「だが、さすがに誰がどんな目的で入れたものかが分かるようにしないと、怖くて使えないという意見が多くて急遽つけられたんだ」
あーうん、確かにそれはちょっと怖いかもしれないな。食べちゃってから、実は後で使うつもりだったとかになっても困るもんね。
「ああ。これなんかが、そうだな」
そう言いながらラスさんが指差した所には『ツゴミ×8こ 南部原産の珍しい果物 庭に植えられるかと取り寄せたが種なしだったため 誰でも自由にどうそ 庭師ぺスカ』と書かれている。
あれ、ペスカさんって、たしかギュームさんの伴侶さんだよね。」
「もし興味があるなら…食べてみるか?」
「あ、はい。知らない果物なので、気になってます」
よしと頷いたラスさんの指がその文字に触れると、箱の前に青い果物が二つ、ふわりと浮かび上がった。へぇ、そうやって出てくるんだ。
ラスさんはいつの間にか取り出した小ぶりのナイフで器用に皮を剥くと、薄水色の果肉を俺に差し出してくれた。
「いただきます」
ちょっと勇気がいるような色合いだけど、この世界に長くいると色の違和感にも段々と慣れてくるんだよな。
躊躇いなく口に放り込んだ俺は、思わずんーと声をあげた。
何だろう、メロンとマンゴーを足して二で割ったような味だ。濃厚な甘みと、爽やかな後味が美味しい。
「美味しいです!」
「ああ、美味しいな」
俺とラスさんは顔を見合わせて、ふふと笑い合った。
ツゴミを完食した後、ラスさんは迷いなく食材を取り出しては調理台の上にずらりと並べていった。
「よし、こんなものか」
後は調味料だなと呟きながら、今度は腰につけていた小さな鞄から瓶や小袋をどんどん取り出しては並べていく。
ただそれだけなのに、手際がめちゃくちゃ良い事が伝わってくる。
「よし、始めるか」
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