生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,209 / 1,561

1208.保護施設の料理人さん

 ポテトサラダのような物が乗せられた葉物のサラダと、具だくさんのスープ、そして――。

 上には黄色の卵が乗せられていて、少しだけ見えているライスの部分は赤い色をしている。その上には小さく刻まれた野菜が入った、赤いソースがかけられている。

 これは…オムライス…だよね?

「これって…オムライス…?」
「ああ、アキトも知ってる料理だったか!良かった!」

 嬉しそうに笑ってくれたラスさんに、俺は思わずバッと視線を向けてしまった。

「これ…どうして?」
「あーまずうちの領には、異世界人の保護施設があるって話は…知ってたよな?」

 ラスさんの質問に俺は大きく頷いた。ハルからも聞いたし、それに多分ケンが言ってたケンの保護されてた場所っていうのがその保護施設だよね。

「はい!友人がそこの出身だって言ってました」
「そうか。そこにも施設の職員や保護されている人のための料理を作る人がいるんだが、異世界に来た事を受け入れられないのか食欲が無くなる人もいるんだ」

 あーうん、そうだろうな。こっちの世界の食べ物って、見慣れた色と違ってたりするもんね。繊細な人だと、受け付けなくなるかもしれない。

 あとたぶん、異世界転移とか異世界転生について知ってるかどうかも、重要なんじゃないかな。

 俺は本とかゲームとかが好きだったから、そういう設定がある事も知ってた。

 だからまるで物語みたいだなとか、異世界すごいなとかって楽しむ余裕もちょっとはあったんだよね。

 もし何も知らずに予備知識無しで異世界に来てたら、なんだこれ悪夢か?早く帰りたい!しか考えられないんじゃないかな。

 あ、でももしハルがいなかったら…。うん、もしそうだったら、俺にもその余裕も無かったのかもしれないな。

「こっちの世界とはまず素材が違いますからね…料理の色合いが派手なんですよね」
「ああ、本当に食べ物なのかと言われる事もあったらしい」

 あーうん、別に悪気なく聞いてしまう人はいそうだと思う。蛍光色の食べ物とか、俺の世界には無かった筈だから。

「そこの料理人はな、保護されていた異世界人が食べたいと言った料理を聞き出して、一冊のノートに書き留めていたんだ」

 作り方が分かる人にはその料理の詳しい作り方を聞き、作り方が分からない人には料理の食感や味付けなどを詳しく話してもらっていたらしい。

「もちろん再現できた料理もあれば、まだできていないものもあるらしいんだが…」

 それはそうだろうな。そもそも材料や調味料が違うんだから、再現するのもそう簡単じゃないだろう。

「でも諦めずに今もあれこれと工夫しているらしい」
「そうなんだ…その人は、すごい人ですね」

 きっとその料理人さんが作ってくれた料理に、救われた気持ちになった人もいるんだろうな。自分の事を考えてくれている人が少なくとも一人はいるって、分かるから。

「そのノートを複製したものが、これなんだ」

 領主一家がその施設に出資していると言う事実と、領主様なら悪用はしないだろうという信頼から、定期的にケイリーさんに届けられているものらしい。

 ケイリーさんは料理に詳しくないからと、毎回そのままラスさんに手渡してくれるらしいよ。それを、ラスさんはずっと自室で保管していたそうだ。

「他の料理人を信頼してないわけじゃないんだが、一応俺以外には見れないようにしてるんだ」

 そう言いながらラスさんが差し出したノートを、俺はそっと両手で受けとった。

「良いんですか?」

 俺が見てもと呟けば、ラスさんはもちろんと笑って頷いた。

 ラスさんの笑顔に背中を押されるようにしてゆっくりと開いてみれば、中には色々な料理の作り方や味の説明などが、カラフルなイラストと共に添えられている。

 作ってみてからちょっと違うとでも言われたのか、甘みを追加するとか、もうすこし焦げ目をつけるとか記入されているのも見えた。

 もちろん俺の知らない料理もたくさんあるんだけど、俺が知っている料理もちらほらと混じっている。すごいな、こんなものがあるんだ。

「このページだな」

 そう言いながらそっと指差したのは、オムライスの作り方が書かれたページだった。

 ラスさんは俺が異世界人だと知ってすぐに、このノートをじっくりと読んでみたらしい。

 そしたらオムライスに辿り着いたんだって。

 そのページには特に黒髪や茶髪の異世界人が好むようだと書かれていたから、もしかしたら俺も好きかもしれないと作る機会を狙ってくれていたそうだ。

 うわーそういえば俺、ラスさんの手元ばっかり集中して見てたから、何を作ってるかとか意識して無かったよ。

「普段は給仕のために、メイドや侍従がついているだろう?」

 俺が異世界人だと知っている人しかいない今みたいな状況下で無いと、この料理は出せないとラスさんは判断したらしい。

 うん、たしかにこれを他の給仕の人もいる前で突然見せられていたら、どんな反応をしていたかは…自分でも分からないな。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。