生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1210.待つための料理

 使った食器を二人で片づけてから、俺とラスさんはお茶を片手にテーブルに戻った。

 ラスさんからは、さっきのノートを見るか?って提案もしてもらったんだけどね。

 正直そのノートに興味はもちろんあるんだけど、今はそれよりもハルのために作る料理っていうのが気になってる。

 素直にそのまま自分の気持ちを伝えれば、ラスさんは分かったとすぐに頷いてくれた。

「料理を作って待つって考えは、俺には無かったから提案してくれて嬉しかったです」

 ささっと淹れてくれたお茶だけど、やっぱり格別に美味しいんだからすごいよね。

 感心しながら味わいつつ、俺はラスさんにそう声をかけた。

「そうか。俺は大事な人の帰りを一人で待たなきゃならん時は、料理を作って待ってたんだよ」
「へーそうなんですか?」
「昔からの習慣って感じだな」

 昔は家族や伴侶のためにしていた習慣だったが、気づけば領主一家もその対象になってたと笑いながら教えてくれた。

「大事な人が危険な場所に行っていると知っているのに、考えずにいようとしても…無理じゃないか?…まあ人にもよるのかもしれないが」

 ラスさんは、俺には、無理だったんだよとそう教えてくれあ。
 
「はい、俺にも無理でした」
「そういう時は相手が喜ぶ料理とか、恐ろしく手間のかかる料理を仕込んだりして、帰りを待つんだ」

 俺とキースくんが攫われた時も、ラスさんはそうやって色々な料理を仕込んで待ってくれていたんだって。

 あれ、じゃあもしかしてあの使用人さんたちも一緒にパーティーした時の料理って、ラスさんが作って待っててくれてたやつだったの?

 ハッとしてそう問いかけた俺に、ラスさんはその料理も混ざってたよと笑ってみせた。

「あの時は、帰ってきたらパーティーになるだろうなとも思っていたから、そのつもりでの仕込みもしてたからな」

 うちの領主様は、心配してる使用人を追い出してパーティーはしないからと誇らし気に笑って続けた。

 ラスさんってケイリーさんが相手でも特別丁寧な喋り方とかしてないイメージだったけど、すごく尊敬はしてるんだなってその一言から伝わってきたよ。

「アキト、帰ってきたハルに手料理を出したら、どんな反応をすると思う?」

 強面の顔に悪戯っぽい笑みを浮かべながら、ラスさんはそう尋ねてきた。

 手料理を食べたいって、前にも話題に出た事があるもんな。ハルは俺にも自分の手料理を食べさせたいって言ってくれてたけど。そんなハルに手料理を出したら…?

「あー…うん。絶対に満面の笑みで喜んでくれますね」

 食べるのがもったいないって言い放つような気もする。

 いやでも…もしかしたら、感動したと涙を浮かべたりもするかもしれないな。ハルって思わぬ所で感動したりするから。

 そう思ったけど、これをラスさんの前で言うのはちょっとなと、俺はそっと開きかけた口を閉じた。

「そうだろう?その笑顔を引き出すために、全力で料理を作ろうと思うだろう?」
「はいっ!何だか元気がでてきました!ラスさん、ありがとうございます!」
「いやいや、孫が困っていれば何かしてやりたくなるものだ」

 ニヤリと笑ったラスさんは、ハルのために何を作るかをもう一度相談しようかと言ってくれた。



 あれこれと二人で意見を出し合った結果、作るものは野菜をたっぷり使った栄養満点のスープと、固めに焼いたクラッカー、それにクラッカーに乗せる用のお肉料理に決まった。

 これならもし遅く帰ってきても、食べられるメニューだろうってラスさんが教えてくれたんだ。お肉を使った料理はちょっと重めだけど、お肉大好きなハルのために選んでくれたらしい。

 うん、ハルはお肉があると幸せそうになるから、俺も反対なんてしません。

 ちなみにもし早く帰ってきたら、その場合はラスさんの料理と一緒に提供されるからそっちも問題は無いんだって言ってくれたよ。

 いやでも待って。その場合って…俺の料理がラスさんの料理と並べられるって事なんだよね。

 それは…見栄えとか味的に、大丈夫なんだろうか。絶対に負けてしまうと思うんだけど。ちょっと不安になってしまった。
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