生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1211.師匠?先生?

「さっきも聞いたが…本当に俺の作り方で良いんだな?」
「はい」
「もしアキトが作りたいものがあるなら、まだ変更できるぞ?」

 わざわざもう一度そう確認してくれたラスさんに、俺はラスさんの作り方が良いですとすぐに答えた。

 何といっても食材と調味料から全部が違うからね。こっちの食材と調味料を使いこなして美味しい料理を作るなんて技術は、残念ながら俺には無い。

 料理が好きだった母さんなら、きっと嬉々としてこっちの食材や調味料に挑戦するんだろうけどね。

 無理な物は無理なんだから仕方ない。それに、どうせならハルに美味しいって食べて欲しいからね。

 ラスさんは真意を探るみたいにじっと俺の目を見つめていたけど、本気が伝わったのか分かったと頷いてくれた。

 そこからのラスさんの動きは、やっぱりすごく素早かった。食材保管箱からパパッと色んな食材を取り出して、ずらりと調理台の上に並べてくれた。

「よし。まずは、この野菜を切る所からだな」
「はい、俺、頑張ります!」

 浄化魔法でパパッと両手を綺麗にしてから、俺は目の前に並べられた野菜に調理用のナイフ片手に向き直った。

「…よし、最初はこの、チーラを刻んでくれるか」
「これは、皮は剥かずに輪切りで良いですか?」

 前に食べさせてもらった時も皮は剥いてなかった筈と聞いてみれば、ラスさんは笑顔で頷いてくれた。

「ああ、そのまま輪切りで大丈夫だ」

 チーラというのは、アスパラに似た味の野菜だ。

 ソテーして食べさせてもらったのもすっごく美味しかったけど、今回はどうやらスープに入れるらしい。煮込むとどんな味になるんだろうな。

 まっすぐに手元に向けられるラスさんの視線を感じつつ、俺はチーラを輪切りにしていった。

 じっと見つめられて緊張はしたけど、俺の下ごしらえの腕は思ったよりも上手いというなかなかの好評価をもらった。

 良かった。とりあえず合格点ではあったみたいだ。料理なんて無理だって言われたらどうしようかと思ったよ。

「この調子で、どんどん切ってくれ」
「はいっ!」

 今回はラスさんは基本的には手は出さず、隣で俺に指示を出してくれる事になってるんだ。

 どうせならアキトが一人で作った料理の方がハル様は喜ぶだろうって、ラスさんに言われたんだよね。

 ハルは別にラスさんに手伝ってもらっても気にしないような気もするけど、俺が手作りだって胸を張って言うためにもその提案を受け入れたんだ。



 調理台の上に並んだ色んな野菜を、ラスさんの指示を受けながらどんどん刻んでいく。

 切り続けているうちに気がついたんだけど、どうやらラスさんは人に何かを教えるのがすっごく上手い人みたいだ。

 野菜の下ごしらえに関する指示っていったら、普通は皮を剥く剥かないとか、こんな形に切ってとかぐらいだと思うんだよね。

 でもラスさんは違う。

 作業の間にも、色んな事を教えてくれるんだ。

 例えば、最初に切ったアスパラに似たチーラは、じっくりと火を通した方が風味が増すとかね。

 そういう知識を色々と教えてくれるだけでも楽しいんだけど、ラスさんはその場でじっくりと火を通したものとざっと火を通したものをパパッと作ってくれたりするんだ。

「アキト、試してみろ」
「ん!確かにじっくりと炒めた方が、野菜の味が濃い気がします!さっと火を通したのもあっさりで美味しいですけど」

 こっちも好きだと笑って答えれば、ラスさんは満足そうに頷いた。

「そうなんだ。だから料理によって使い分けるのが大事なんだ」
「へーそうなんですね!」

 さっとナイフを置いた俺は、両手に浄化魔法をかけてから、傍らに置いていたノートにいそいそとメモを取った。

 あまりにもためになる知識ばっかり教えてくれるから、さっきから許可をもらって書き留め始めたんだよね。このノートはきっと、俺にとっての宝物になると思う。

「例えばスープに入れるなら俺はじっくり炒める方が好きなんだが、逆にステーキの付け合わせにするならさっと炒めた方が邪魔にならない」

 ここでステーキの付け合わせって言葉がさらりと出てくるのは、ハルの好物がステーキだから…だよね。

 俺がずっとハルに手料理を振る舞いたいと思ってたって話をしたから、今日だけじゃなくいつか役立つかもしれないそういう知識も教えてくれてるんだよ。

 もう何というか、師匠とか先生とか呼びたくなってくるな。

「なるほど!勉強になります!」

 ささっとメモを取りながらそう答えれば、ラスさんには面白そうに笑われてしまったけどね。微笑ましそうな笑い方だったから、気にしないよ。
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