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1214.完成
ぴたりと息を止めたまま、俺はそーっと慎重に焼けたお肉を切り分けていく。
まだハル達は帰ってきてないんだけどね。でもラスさんが、ちょっと冷ました方が美味しいっていう肉料理を選んでくれたんだ。見た目的にはローストビーフとかが近いかな。
それを冷まし終わって、今まさに切り分けてる所だよ。
それにしても使わせてもらってるナイフの切れ味が、ものすごいんだよね。料理に慣れてない俺でも、びっくりするぐらい簡単に綺麗に薄ーく切れたよ。
集中したまま全部のお肉を切り終えた俺は、はーと大きく息を吐いた。どれだけ緊張してたんだろうと、まるで他人事のように考えてしまう。
「上手いもんじゃないか」
満足そうなラスさんに褒めて貰って、俺はへへと笑みを返した。
「あの、ラスさん」
「ん?どうした?」
俺はさっきからずっと気になっていた事を、ラスさんに尋ねる事にした。
「このナイフの切れ味がすごく良いのって…このナイフの性能ですか?」
「いや、これはそれほどすごいナイフってわけじゃないな」
あくまでここの厨房に常に置かれている備品だからなと、ラスさんは教えてくれた。
「とは言え、あの領主様が手配したものだからな。すごく質が悪いってわけでは決してないぞ。それが…どうかしたか?」
不思議そうなラスさんに、俺は自分の持っている冒険者用の小型の調理ナイフを取り出して見せた。
「一応これが、俺の使ってる調理用のナイフなんですけど…」
「ほう」
ハルと一緒に行ったウェルマ市場で買ったあのすっごく軽いナイフは、いざという時に使うための武器扱いだからね。
いくらいつでも浄化魔法が使えるって言っても、戦いに使うナイフと調理のためのナイフを同じ物にするつもりは俺には無い。衛生面的にも心配だし、生理的に無理そうだ。
まあでも、冒険者の中には気にせずに両方に使う!っていう人も…いるらしいんだよね。しかも一定数。
ハルがそういうタイプじゃなくて、本当に良かった。
「これでお肉を切っても、全然綺麗に切れないんです」
「どれ、みせてみろ」
ラスさんにそう言われた俺は、そっと刃の方を掴んでナイフを差し出した。
「なかなか良いナイフだな」
「それはハルが選んでくれたんです」
冒険者装備を一式そろえる時に、まだ幽霊だったハルが俺のためにって考えて選んでくれたんだよね。そう考えると、なんだか懐かしいな。
「なるほど、どうりで。質だけで言うなら、さっき使ってたのよりもこっちの方が良い物かもしれないが…研ぎが悪いな、これは」
「研ぎですか」
手入れはしないとって事で、たまに研いでみてたんだけどな。
「ああ、これはハル様に聞いた研ぎ方だろう?」
「あ、そうです」
「武器と調理用は、研ぎ方が違うからな」
「え、そうなんですか?」
「興味があるならこれから研いでみるか?」
「ぜひお願いします!」
そうしてナイフの研ぎ方を教わってみたり、実際に自分で挑戦してみたり、ちょっとだけ手直ししてもらったりしている間に、クラッカーも無事に焼き終わった。
「んー、美味しいっ!」
「ああ、初めてとは思えない味だな」
二人で並んで味見をしたんだけど、ラスさんからも火加減も完璧だって合格をもらったよ。俺はホッとしながら、テーブルの上に並んだ料理をいそいそと魔導収納鞄の中へとしまっていった。
「これで、ハル様のための料理は完成だな」
「ラスさん、今日はほんっとうにありがとうございました!」
興味深い話も役立つ知識も、今日だけでもいっぱい教えてもらった。俺にとってはすっごく楽しい、ひたすらに有意義な時間だった。
「お休みなのに、たくさん付き合わせてすみません」
「いや、謝らなくて良い。俺も楽しかったよ」
アキトはずっと真剣に取り組んでくれるから、教えがいがあるんだとラスさんは優しく笑ってくれた。
「それで、アキトの気分はどうだ?ちょっとは落ち着いたか?」
「えっと…料理をする前はハルの心配しかしてなかったんですけど、嬉しそうなハルを想像しながら料理するのって最高でした」
もちろん今でも心配はしてるんだけどね。でも、気持ちが落ち着いたというか、そわそわした気持ちが無くなった気がする。
「それは良かった」
「あの、また機会があれば、こうやって料理を教えて欲しい…です」
厚かましいかなと思いながら尋ねてみれば、ラスさんは笑って頷いてくれた。
「もちろんだ。今度はハル様も一緒にやるか?」
ラスさんは、ハルが無事に帰ってくるって信じてくれてるんだな。
「ハルが参加したいって言ったら、その時はぜひお願いします」
あーハル、はやく帰ってこないかな。話したい事がいっぱいあるよ。
まだハル達は帰ってきてないんだけどね。でもラスさんが、ちょっと冷ました方が美味しいっていう肉料理を選んでくれたんだ。見た目的にはローストビーフとかが近いかな。
それを冷まし終わって、今まさに切り分けてる所だよ。
それにしても使わせてもらってるナイフの切れ味が、ものすごいんだよね。料理に慣れてない俺でも、びっくりするぐらい簡単に綺麗に薄ーく切れたよ。
集中したまま全部のお肉を切り終えた俺は、はーと大きく息を吐いた。どれだけ緊張してたんだろうと、まるで他人事のように考えてしまう。
「上手いもんじゃないか」
満足そうなラスさんに褒めて貰って、俺はへへと笑みを返した。
「あの、ラスさん」
「ん?どうした?」
俺はさっきからずっと気になっていた事を、ラスさんに尋ねる事にした。
「このナイフの切れ味がすごく良いのって…このナイフの性能ですか?」
「いや、これはそれほどすごいナイフってわけじゃないな」
あくまでここの厨房に常に置かれている備品だからなと、ラスさんは教えてくれた。
「とは言え、あの領主様が手配したものだからな。すごく質が悪いってわけでは決してないぞ。それが…どうかしたか?」
不思議そうなラスさんに、俺は自分の持っている冒険者用の小型の調理ナイフを取り出して見せた。
「一応これが、俺の使ってる調理用のナイフなんですけど…」
「ほう」
ハルと一緒に行ったウェルマ市場で買ったあのすっごく軽いナイフは、いざという時に使うための武器扱いだからね。
いくらいつでも浄化魔法が使えるって言っても、戦いに使うナイフと調理のためのナイフを同じ物にするつもりは俺には無い。衛生面的にも心配だし、生理的に無理そうだ。
まあでも、冒険者の中には気にせずに両方に使う!っていう人も…いるらしいんだよね。しかも一定数。
ハルがそういうタイプじゃなくて、本当に良かった。
「これでお肉を切っても、全然綺麗に切れないんです」
「どれ、みせてみろ」
ラスさんにそう言われた俺は、そっと刃の方を掴んでナイフを差し出した。
「なかなか良いナイフだな」
「それはハルが選んでくれたんです」
冒険者装備を一式そろえる時に、まだ幽霊だったハルが俺のためにって考えて選んでくれたんだよね。そう考えると、なんだか懐かしいな。
「なるほど、どうりで。質だけで言うなら、さっき使ってたのよりもこっちの方が良い物かもしれないが…研ぎが悪いな、これは」
「研ぎですか」
手入れはしないとって事で、たまに研いでみてたんだけどな。
「ああ、これはハル様に聞いた研ぎ方だろう?」
「あ、そうです」
「武器と調理用は、研ぎ方が違うからな」
「え、そうなんですか?」
「興味があるならこれから研いでみるか?」
「ぜひお願いします!」
そうしてナイフの研ぎ方を教わってみたり、実際に自分で挑戦してみたり、ちょっとだけ手直ししてもらったりしている間に、クラッカーも無事に焼き終わった。
「んー、美味しいっ!」
「ああ、初めてとは思えない味だな」
二人で並んで味見をしたんだけど、ラスさんからも火加減も完璧だって合格をもらったよ。俺はホッとしながら、テーブルの上に並んだ料理をいそいそと魔導収納鞄の中へとしまっていった。
「これで、ハル様のための料理は完成だな」
「ラスさん、今日はほんっとうにありがとうございました!」
興味深い話も役立つ知識も、今日だけでもいっぱい教えてもらった。俺にとってはすっごく楽しい、ひたすらに有意義な時間だった。
「お休みなのに、たくさん付き合わせてすみません」
「いや、謝らなくて良い。俺も楽しかったよ」
アキトはずっと真剣に取り組んでくれるから、教えがいがあるんだとラスさんは優しく笑ってくれた。
「それで、アキトの気分はどうだ?ちょっとは落ち着いたか?」
「えっと…料理をする前はハルの心配しかしてなかったんですけど、嬉しそうなハルを想像しながら料理するのって最高でした」
もちろん今でも心配はしてるんだけどね。でも、気持ちが落ち着いたというか、そわそわした気持ちが無くなった気がする。
「それは良かった」
「あの、また機会があれば、こうやって料理を教えて欲しい…です」
厚かましいかなと思いながら尋ねてみれば、ラスさんは笑って頷いてくれた。
「もちろんだ。今度はハル様も一緒にやるか?」
ラスさんは、ハルが無事に帰ってくるって信じてくれてるんだな。
「ハルが参加したいって言ったら、その時はぜひお願いします」
あーハル、はやく帰ってこないかな。話したい事がいっぱいあるよ。
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