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1216.【ハル視点】会議の終わり
本隊について現時点で決めるべき事は、全て決まったな。本隊の準備には、早めに取り掛かる事ができるだろう。
「本隊についてはそれで良いとして、先行部隊についても相談が必要だな」
「そうですね」
全員が頷くなか、アキトだけはゆるりと首を傾げた。
ああ、きちんとそこから説明するべきだったな。辺境領では先行部隊と本隊を出すのが定番となっているが、その辺りの基準は領によって異なっている。あくまでもこれは、辺境領での定番だ。
どういう意味かと聞きたいだろうに、アキトは何も言わずにさっと周りに視線をめぐらせて口を噤んだ。
ああ、この会議の邪魔をしないようにとか考えてくれているんだろうな。アキトを邪魔だなんて思う筈が無いのに。
幸いにも俺の家族はみんな、アキトの事を気に入っているし、常に気にかけてくれている。アキトが不思議に思いつつも黙っている事には、全員がすぐに気が付いた。
誰よりも早く口を開いたのは、父さんだった。
「アキトくん、今回の作戦はアキトくんとキースの探索隊、兼盗賊団の殲滅部隊よりも大人数が参加する事になるんだ」
優しく説明を始めた父さんに、はいと答えたアキトがこくりと頷いた。
「それだけの人数を動かすなら、まず下調べが必要になるんだ」
次に口を開いたのは、ファーガス兄さんだった。何故か少し申し訳なさそうにすこし視線を彷徨わせたファーガス兄さんは、アキトの顔をじっと見つめながら続けた。
「これは決してクレットの情報や、ハルとアキトくんの言葉を信じていないというわけではないんだよ」
「はい、確認が必要なのは当然だと思います」
心からそう思っているんだろうな。アキトは何の文句も無く、あっさりとファーガス兄さんの言葉を受け入れた。
「ああ、分かってくれて良かった」
「ファグ兄さんは心配性だなー。クレットも先行部隊の大事さは分かってるから。信じて貰えてないなんて絶対言わないよ」
ウィル兄さんの笑いまじりの言葉に、ジルさんも深く頷いている。ちらりと視線を向けてみれば、クレットも分かってますと頷いてる。
「あの、クレットさんも分かってますって頷いてくれてます」
アキトの橋渡しの言葉に、ウィル兄とジルさんは楽しそうに笑っている。
「だよなー」
「ええ、分かってくれると知ってました」
クレットの誇らし気な顔を横目に見ながら、俺は父さんに視線を戻した。
「先行部隊に確認して欲しいのは、そのダンジョンが本当にムレングダンジョンなのかどうか。それと、入ってすぐの場所に怪しい罠や場所が無いか…だな」
父さんの言葉に、ジルさんがすぐに私も同意見ですと答えた。
ムレングダンジョンかどうかも確認するんだと、アキトは明らかに驚いた様子だった。
「転移後に目に入るだろう場所にミザの鉱石をわざと設置して、あえて誤解をさせようとしているという可能性もありますからね」
ジルさんはかみ砕いてそう説明してくれた。まあ、あくまでも可能性がある――程度だけどな。
もし他のダンジョンにミザの鉱石を設置したとしても、何も知らない冒険者によって採取され尽くすだろう。ミザの鉱石はそれだけの価値がある素材だ。
それに今回は逃げるように盗賊が移動してすぐに、あちらには姿が見えないクレットがついて行って見たものだ。
だから仕込まれたものである可能性は限りなく低い。だが絶対に無いとも言いきれない。組織だった盗賊団というのは、狡猾だしそういう罠だって多用してくる相手だ。
「問題は先行部隊の選抜だが…」
「俺と父さんは行かない方が良いだろうな」
ファーガス兄さんは、そう断言した。
「ああ、その方が良いだろうな。ファーグもケイリーさんも目立つからな」
マティさんも、二人は目立つからその方が良いとすぐに同意を返している。
ムレングダンジョンには比較的よく潜っている二人だが、普段から領主様だ次期領主様だと周囲からは注目されているらしいからな。本隊なら問題は無いが、先行部隊には不向きだろう。
へぇ、そうなんだとぽつりと呟いたアキトに、俺は小さな声で話しかけた。
「先行部隊はとにかく目立たない事が大事だからね。本隊はきちんと騎士団の装備で行くはずだけど、先行部隊はその場に馴染む格好で行くんだ」
「え、そうなんだ?」
「ダンジョンならきっと、冒険者の恰好だろうね」
なるほどと納得しつつ、何故かアキトはキラキラと目を輝かせている。アキトが喜ぶような事が今の話の中にあったか?首を傾げた俺をよそに、会議はどんどん進んで行く。
「調査だけなら俺が行くよーでもできれば陰護衛組からも誰かを連れて行きたいなー?あそこの隊員の方が怪しい場所とかには気づくだろうからね」
はいと手をあげたウィル兄さんは、立候補をしながらもしっかりと自分の希望を口にした。
「ああ、もちろんだ。後で連絡を入れておこう」
「俺の隊からは数人の精鋭と俺だけで行くつもりだからねー、あまり人数はいらないってのも伝えておいて欲しいな」
「そうか、ああ、分かった。きっと後で連絡が入るから対応してくれ」
「うん、お願い。あ、後で誰を連れていくか、ジルは相談に乗ってね」
「もちろんです、ウィリアム隊長」
「…うう…ジルが仕事モードだー」
突然しょんぼりと肩を落としたウィル兄さんを、ジルさんはジロリと睨むようにしながら仕事中ですからと返した。
真面目なジルさんだから当然の答えだと思うんだが、ウィル兄は分かりやすく拗ねている。これは後が面倒かもしれないなと俺が考えた瞬間、ウィル兄さんがパァァッと一転して笑みを浮かべた。
いったい何だろうと視線を動かしてみれば、テーブルの下でジルさんの手がウィル兄の手に重ねられているのが見えた。
本当にジルさんはウィル兄の操縦が上手いんだな。感心しながら、俺は何も言わずにそっと視線を反らした。
ここで指摘なんてしたら、ジルさんを恥ずかしがらせてしまうだけだからな。
「あ、ハルもちゃんと冒険者装備で来てね?」
「ああ、もちろんだ。現役冒険者でもあるからまかせてくれ」
変装をした騎士達よりも、よほどダンジョンに馴染む自信があるよ。
「クレットも頼んだよ?」
「はっ、光栄です!」
ピンッと背筋を伸ばしたクレットの返事を俺が伝えれば、それで会議は終了となった。
「本隊についてはそれで良いとして、先行部隊についても相談が必要だな」
「そうですね」
全員が頷くなか、アキトだけはゆるりと首を傾げた。
ああ、きちんとそこから説明するべきだったな。辺境領では先行部隊と本隊を出すのが定番となっているが、その辺りの基準は領によって異なっている。あくまでもこれは、辺境領での定番だ。
どういう意味かと聞きたいだろうに、アキトは何も言わずにさっと周りに視線をめぐらせて口を噤んだ。
ああ、この会議の邪魔をしないようにとか考えてくれているんだろうな。アキトを邪魔だなんて思う筈が無いのに。
幸いにも俺の家族はみんな、アキトの事を気に入っているし、常に気にかけてくれている。アキトが不思議に思いつつも黙っている事には、全員がすぐに気が付いた。
誰よりも早く口を開いたのは、父さんだった。
「アキトくん、今回の作戦はアキトくんとキースの探索隊、兼盗賊団の殲滅部隊よりも大人数が参加する事になるんだ」
優しく説明を始めた父さんに、はいと答えたアキトがこくりと頷いた。
「それだけの人数を動かすなら、まず下調べが必要になるんだ」
次に口を開いたのは、ファーガス兄さんだった。何故か少し申し訳なさそうにすこし視線を彷徨わせたファーガス兄さんは、アキトの顔をじっと見つめながら続けた。
「これは決してクレットの情報や、ハルとアキトくんの言葉を信じていないというわけではないんだよ」
「はい、確認が必要なのは当然だと思います」
心からそう思っているんだろうな。アキトは何の文句も無く、あっさりとファーガス兄さんの言葉を受け入れた。
「ああ、分かってくれて良かった」
「ファグ兄さんは心配性だなー。クレットも先行部隊の大事さは分かってるから。信じて貰えてないなんて絶対言わないよ」
ウィル兄さんの笑いまじりの言葉に、ジルさんも深く頷いている。ちらりと視線を向けてみれば、クレットも分かってますと頷いてる。
「あの、クレットさんも分かってますって頷いてくれてます」
アキトの橋渡しの言葉に、ウィル兄とジルさんは楽しそうに笑っている。
「だよなー」
「ええ、分かってくれると知ってました」
クレットの誇らし気な顔を横目に見ながら、俺は父さんに視線を戻した。
「先行部隊に確認して欲しいのは、そのダンジョンが本当にムレングダンジョンなのかどうか。それと、入ってすぐの場所に怪しい罠や場所が無いか…だな」
父さんの言葉に、ジルさんがすぐに私も同意見ですと答えた。
ムレングダンジョンかどうかも確認するんだと、アキトは明らかに驚いた様子だった。
「転移後に目に入るだろう場所にミザの鉱石をわざと設置して、あえて誤解をさせようとしているという可能性もありますからね」
ジルさんはかみ砕いてそう説明してくれた。まあ、あくまでも可能性がある――程度だけどな。
もし他のダンジョンにミザの鉱石を設置したとしても、何も知らない冒険者によって採取され尽くすだろう。ミザの鉱石はそれだけの価値がある素材だ。
それに今回は逃げるように盗賊が移動してすぐに、あちらには姿が見えないクレットがついて行って見たものだ。
だから仕込まれたものである可能性は限りなく低い。だが絶対に無いとも言いきれない。組織だった盗賊団というのは、狡猾だしそういう罠だって多用してくる相手だ。
「問題は先行部隊の選抜だが…」
「俺と父さんは行かない方が良いだろうな」
ファーガス兄さんは、そう断言した。
「ああ、その方が良いだろうな。ファーグもケイリーさんも目立つからな」
マティさんも、二人は目立つからその方が良いとすぐに同意を返している。
ムレングダンジョンには比較的よく潜っている二人だが、普段から領主様だ次期領主様だと周囲からは注目されているらしいからな。本隊なら問題は無いが、先行部隊には不向きだろう。
へぇ、そうなんだとぽつりと呟いたアキトに、俺は小さな声で話しかけた。
「先行部隊はとにかく目立たない事が大事だからね。本隊はきちんと騎士団の装備で行くはずだけど、先行部隊はその場に馴染む格好で行くんだ」
「え、そうなんだ?」
「ダンジョンならきっと、冒険者の恰好だろうね」
なるほどと納得しつつ、何故かアキトはキラキラと目を輝かせている。アキトが喜ぶような事が今の話の中にあったか?首を傾げた俺をよそに、会議はどんどん進んで行く。
「調査だけなら俺が行くよーでもできれば陰護衛組からも誰かを連れて行きたいなー?あそこの隊員の方が怪しい場所とかには気づくだろうからね」
はいと手をあげたウィル兄さんは、立候補をしながらもしっかりと自分の希望を口にした。
「ああ、もちろんだ。後で連絡を入れておこう」
「俺の隊からは数人の精鋭と俺だけで行くつもりだからねー、あまり人数はいらないってのも伝えておいて欲しいな」
「そうか、ああ、分かった。きっと後で連絡が入るから対応してくれ」
「うん、お願い。あ、後で誰を連れていくか、ジルは相談に乗ってね」
「もちろんです、ウィリアム隊長」
「…うう…ジルが仕事モードだー」
突然しょんぼりと肩を落としたウィル兄さんを、ジルさんはジロリと睨むようにしながら仕事中ですからと返した。
真面目なジルさんだから当然の答えだと思うんだが、ウィル兄は分かりやすく拗ねている。これは後が面倒かもしれないなと俺が考えた瞬間、ウィル兄さんがパァァッと一転して笑みを浮かべた。
いったい何だろうと視線を動かしてみれば、テーブルの下でジルさんの手がウィル兄の手に重ねられているのが見えた。
本当にジルさんはウィル兄の操縦が上手いんだな。感心しながら、俺は何も言わずにそっと視線を反らした。
ここで指摘なんてしたら、ジルさんを恥ずかしがらせてしまうだけだからな。
「あ、ハルもちゃんと冒険者装備で来てね?」
「ああ、もちろんだ。現役冒険者でもあるからまかせてくれ」
変装をした騎士達よりも、よほどダンジョンに馴染む自信があるよ。
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