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1222.【ハル視点】情報交換
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「おはよう、もう帰りなのか?」
何でもない事のように、いつも通りを意識しながら声をかける。
冒険者同士は、こういう何気ない会話から情報を交換するものだからな。相手もまだ背後で騒いでいる三人の会話にうっすらと笑いながらも、あっさりと答えてくれた。
「ああ、おはよう。昨日の夜から依頼で出てたからな」
この辺りで夜からの依頼をまかされているなら、かなりの実力者だな。
「そうか、お疲れ」
「ありがとよ。兄ちゃんらのパーティーはこれから向かうのか?」
これは俺がリーダーだと誤解されたかもしれないなと思いつつ、わざわざ訂正したりはしない。
「ああ、ルティルーの森へ寄ってから、ムレングダンジョンに向かう予定なんだ」
「なるほど。それでウマに乗ってるのか」
ムレングダンジョンの外には、ウマの世話を引き受けてくれる場所が設置されている。そのおかげで、目の前の冒険者たちはあっさりと納得してくれたようだ。
「それにしてもルティルーの森か…」
少し後ろに立っていた細身の男が、ぽつりとそう呟いた。
俺の予想ではさっきから俺と話してくれていた男はリーダーでは無いと思っていたんだが、どうやら合っていたようだ。
「何か、あったのか…?」
リーダーなのだろう男に控え目にそう尋ねれば、大した事じゃないんだがと前置きをしてから話し出した。
「十日ほど前に、ルティルーの森の奥の方で牙蛇盗賊団のアジトが見つかったらしいのは知ってるか?」
「ああ、知ってる」
俺はその場にはいなかったが、ウィル兄はまさにそこにいたわけだからな。俺とウィルが揃って頷けば、知ってたかと男は笑みを見せた。
「次期領主様が率いる部隊に盗賊団は捕まったと聞いたが、牙蛇盗賊団ならまだ残党がいるかもしれないと俺は見ているんだ」
男は今までの被害の規模の割りに捕まった人数が少ないと、ぽつりとそう呟いた。
捕まえた人数もおおまかには情報開示しているんだが、そこまでしっかりと確認している冒険者は果たして何人いるだろう。
目の前の男の優秀さを感じつつ、俺はこくりと頷いた。
「たしかに、その可能性はあるよな…」
「まあムレングダンジョンに潜れる奴らなら、言わなくても分かってるだろうがな」
一応気をつけろよと続けた男に、俺は笑って頷いた。
「教えてくれてありがとう」
「いや、勝手に警戒した詫びだとでも思ってくれ。ちなみに、俺はやきとりに一票入れたいね」
何故か男は笑顔でそう続けた。気になっていたのか、さっきの話。
「やった!ありがとう!」
不意に現れた味方に、ネルバが満面の笑みで返す。
「ええーリーダーはそっちかー俺は角付きのボアの方が好きだなー」
「ああ、酒に合うからなぁ…俺もボアだ」
「お、さすがに前衛の兄さん二人はよく分かってるなぁ!ありがとよ」
今度はジーラルがパッと笑顔になった。
「なんでいきなり投票し始めてるんだよ」
呆れ顔でぽつりとそう呟いた男に、その場にいた全員の視線が集まる。明らかに後衛だろうその男は、集中した視線に面倒くさそうにしながらも、俺はやきとり派だと答えてくれた。
「だよねー!ありがとう!」
「いや、待て待て、これで三対三じゃないか!」
「えーじゃあハルは?」
すっかり自然に名前を呼べるようになってるな。感心しながら答える。
「俺はやきとりだな」
「やきとり、最高だもんね!」
ニッコニコのネルバに、周りも思わず声をあげて笑い出す。
「うわーじゃあ…緊張するわー……ウィルは、どっちだ?」
「ん?俺は角付きのボアだよーあれ俺の伴侶も好きだからさー!」
「よっっっっっしゃ!」
「喜んでる所悪いけどさ、それだと四対四じゃないか?」
「答えが出ない!よし、ダン、決めてくれ!」
「どっちも美味いんだから決める必要は無くないか?」
わーわーと騒ぐ三人に、冒険者たちは腹減ってきたなと顔を見合わせた。
「よし、それじゃあ俺達は、屋台を目指して急いで帰るよ」
どうやらこのまま屋台に向かう事に決まったらしい。ジーラルとネルバ、それにダンのやりとりを聞いていたら、食べたくてたまらなくなったらしい。
「またどっかで会ったら、声をかけてくれ」
「こちらこそ。情報ありがとう」
「お互い様だ」
美味い串焼きを両方食べ比べるぞと笑い合った男たちは、笑顔で手を振って去って行った。
何でもない事のように、いつも通りを意識しながら声をかける。
冒険者同士は、こういう何気ない会話から情報を交換するものだからな。相手もまだ背後で騒いでいる三人の会話にうっすらと笑いながらも、あっさりと答えてくれた。
「ああ、おはよう。昨日の夜から依頼で出てたからな」
この辺りで夜からの依頼をまかされているなら、かなりの実力者だな。
「そうか、お疲れ」
「ありがとよ。兄ちゃんらのパーティーはこれから向かうのか?」
これは俺がリーダーだと誤解されたかもしれないなと思いつつ、わざわざ訂正したりはしない。
「ああ、ルティルーの森へ寄ってから、ムレングダンジョンに向かう予定なんだ」
「なるほど。それでウマに乗ってるのか」
ムレングダンジョンの外には、ウマの世話を引き受けてくれる場所が設置されている。そのおかげで、目の前の冒険者たちはあっさりと納得してくれたようだ。
「それにしてもルティルーの森か…」
少し後ろに立っていた細身の男が、ぽつりとそう呟いた。
俺の予想ではさっきから俺と話してくれていた男はリーダーでは無いと思っていたんだが、どうやら合っていたようだ。
「何か、あったのか…?」
リーダーなのだろう男に控え目にそう尋ねれば、大した事じゃないんだがと前置きをしてから話し出した。
「十日ほど前に、ルティルーの森の奥の方で牙蛇盗賊団のアジトが見つかったらしいのは知ってるか?」
「ああ、知ってる」
俺はその場にはいなかったが、ウィル兄はまさにそこにいたわけだからな。俺とウィルが揃って頷けば、知ってたかと男は笑みを見せた。
「次期領主様が率いる部隊に盗賊団は捕まったと聞いたが、牙蛇盗賊団ならまだ残党がいるかもしれないと俺は見ているんだ」
男は今までの被害の規模の割りに捕まった人数が少ないと、ぽつりとそう呟いた。
捕まえた人数もおおまかには情報開示しているんだが、そこまでしっかりと確認している冒険者は果たして何人いるだろう。
目の前の男の優秀さを感じつつ、俺はこくりと頷いた。
「たしかに、その可能性はあるよな…」
「まあムレングダンジョンに潜れる奴らなら、言わなくても分かってるだろうがな」
一応気をつけろよと続けた男に、俺は笑って頷いた。
「教えてくれてありがとう」
「いや、勝手に警戒した詫びだとでも思ってくれ。ちなみに、俺はやきとりに一票入れたいね」
何故か男は笑顔でそう続けた。気になっていたのか、さっきの話。
「やった!ありがとう!」
不意に現れた味方に、ネルバが満面の笑みで返す。
「ええーリーダーはそっちかー俺は角付きのボアの方が好きだなー」
「ああ、酒に合うからなぁ…俺もボアだ」
「お、さすがに前衛の兄さん二人はよく分かってるなぁ!ありがとよ」
今度はジーラルがパッと笑顔になった。
「なんでいきなり投票し始めてるんだよ」
呆れ顔でぽつりとそう呟いた男に、その場にいた全員の視線が集まる。明らかに後衛だろうその男は、集中した視線に面倒くさそうにしながらも、俺はやきとり派だと答えてくれた。
「だよねー!ありがとう!」
「いや、待て待て、これで三対三じゃないか!」
「えーじゃあハルは?」
すっかり自然に名前を呼べるようになってるな。感心しながら答える。
「俺はやきとりだな」
「やきとり、最高だもんね!」
ニッコニコのネルバに、周りも思わず声をあげて笑い出す。
「うわーじゃあ…緊張するわー……ウィルは、どっちだ?」
「ん?俺は角付きのボアだよーあれ俺の伴侶も好きだからさー!」
「よっっっっっしゃ!」
「喜んでる所悪いけどさ、それだと四対四じゃないか?」
「答えが出ない!よし、ダン、決めてくれ!」
「どっちも美味いんだから決める必要は無くないか?」
わーわーと騒ぐ三人に、冒険者たちは腹減ってきたなと顔を見合わせた。
「よし、それじゃあ俺達は、屋台を目指して急いで帰るよ」
どうやらこのまま屋台に向かう事に決まったらしい。ジーラルとネルバ、それにダンのやりとりを聞いていたら、食べたくてたまらなくなったらしい。
「またどっかで会ったら、声をかけてくれ」
「こちらこそ。情報ありがとう」
「お互い様だ」
美味い串焼きを両方食べ比べるぞと笑い合った男たちは、笑顔で手を振って去って行った。
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