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1231.【ハル視点】地図作りと魔物
進んだ道を頭の中で整理しながら、取り出した手帳へと次々に記入していく。
他の場所なら頭の中だけで道を覚えるんだが、さすがにダンジョン内の道は途方も無い量になるからな。
ダンジョンの探索をする冒険者の間では、こうして自分たちのパーティーのための地図を描きながら進んで行くのが一般的だ。その方がパーティーにとって価値のある情報が詰まった、唯一無二の地図ができるからな。
もちろんその地図や情報を売って商売をしているという人も存在しているし、それを信じてダンジョン内を進む探索者もいる。
そういう人はだいたいが、パーティー内に地図を描く技術を持った人がいないとか、その階層にある欲しい素材が手に入らないとかそういう理由のある人ばかりだ。
「すごい…精密だねー」
俺の持つ手帳をひょいっと覗き込んだネルバは、キラキラとした目で俺を見つめてきた。
「ハルってそんな事もできるんだな」
俺の前を歩いているジーラルは、感心した様子でそう声をかけてきた。
本来なら盾使いというのはパーティーの一番前を歩くものなんだが、ノートに記入している俺が一番無防備だからと俺の前を歩いてくれているんだよな。
「これはできたらかなり便利だぞ?」
ダンジョンだけじゃなく採取地や初めての街でも役に立つ技術だと伝えれば、二人は興味を持ったようだ。
「えー俺も勉強しようかなー?」
「良いんじゃないか」
「ハル、これってどうやって距離を決めてるの?」
「歩数で測ってる」
「あ、そういう事か」
わいわいと記入のコツを話しながら歩いていると、ジーラルがバッと盾を構えた。背中に背負っていた筈の盾を構えるまでに、ほんのわずかな時間しかかからなかった。
「前方、ウルフ系二頭!」
俺の気配探知にかかるよりも前に、ジーラルはそう呟いた。
「ジーラル、さすがの気配探知だねー」
「褒めてくれてありがとよ」
ジーラルが照れくさそうにお礼を言った瞬間、俺も気配に気づいた。
「これは…岩石ウルフか」
岩石ウルフは、名前の通り見た目が岩石の塊にしか見えないウルフ種の魔物だ。何も知らない人が見ればゴーレムと間違えるかもしれない。そういわれるぐらいゴツゴツとした見た目で、首以外は人型に近い形をしている。
「岩石ウルフ…そこまで分かるのもすげぇな」
「いや、ジーラルの方が遠くから気付けていただろう」
そう返しながら、俺はもっと気配探知の腕前を磨かなければ駄目だなと考えていた。
「岩石ウルフかーじゃあジーラルは初撃だけ防いでくれる?そこを俺とハルで攻撃するねー」
「分かった」
「ああ、まかせてくれ」
俺はさっと手帳をしまうと、腰の剣を抜き放った。
驚くべき速度で近づいてきた二頭の岩石ウルフは、止まる気配も見せずに全力でこちらに飛び掛かってきた。ゴーレムのような手だが、その鋭い爪だけはウルフ種の特徴を残したものだから余計に質が悪いんだよな。
二頭の全力の攻撃はジーラルの盾にぶつかり、ガキンとものすごい音を立てた。だがジーラルは、一歩も引かずに二頭の攻撃を弾き返した。
俺とウィルが攻撃しやすいようにと考えてか、思いっきり弾き飛ばしてくれたおかげで隙ができたな。
だっと駆け出したウィルは、躊躇なく右の岩石ウルフに向かう。それなら俺は左だな。
一瞬で体勢を戻した魔物がこちらを向く前に、抜いていた剣を振りぬく。岩石ウルフの弱点は胸の辺りにある魔石だ。一瞬だけ光を反射したそこだけを狙った攻撃は、狙いを違わずに魔石を貫いた。
ふうと息を吐いてから振り返れば、ウィルも笑顔でこちらを見ていた。
「うわーはやっ」
「ウィルもハルも、的確な一撃だな」
「すごいすごい!」
「さすがウィル隊長とハロルド様ですね」
口々に褒めてくれる四人に、俺とウィルは笑いながら答えた。
「岩石ウルフはB級だからね。手間取るわけにはいかないよー」
「そうだな。魔石も分かりやすかったし。それより俺はジーラルの隙を作る返し方がすごいと思ったよ」
心からの誉め言葉だったんだが、ジーラルには苦笑されてしまった。
「いや、あの魔石は分かり難いだろ。返し方を褒めてくれたのは嬉しいが、どうやって見分けてるんだ?」
「えー、だって色が違うでしょ?ばっちり色の違いが見えたからそこを狙ったけどー?」
ウィルの言葉に、ネルバとジーラルは顔を見合わせた。
「出たよ、隊…リーダーの目の良さ!」
今一瞬だけ隊長って言いかけてたな。そう思って視線を向ければ、ジーラルはウィルに軽く睨まれていた。ダンジョン内では間違えるなと言いたいんだろうな。言葉にせずに叱られたジーラルは、すみませんと視線だけで謝罪を返している。
「じゃあ、ハルは?」
「一瞬だけ光を反射したからそこを狙ったよ。俺はウィルほど、目が良いってわけじゃないからな」
「いやいや、あの一瞬でそれに気付けたなら、十分目は良いだろ」
呆れ顔のダンの言葉に、ジーラルとネルバ、そしてクレットはうんうんと頷きを返した。
他の場所なら頭の中だけで道を覚えるんだが、さすがにダンジョン内の道は途方も無い量になるからな。
ダンジョンの探索をする冒険者の間では、こうして自分たちのパーティーのための地図を描きながら進んで行くのが一般的だ。その方がパーティーにとって価値のある情報が詰まった、唯一無二の地図ができるからな。
もちろんその地図や情報を売って商売をしているという人も存在しているし、それを信じてダンジョン内を進む探索者もいる。
そういう人はだいたいが、パーティー内に地図を描く技術を持った人がいないとか、その階層にある欲しい素材が手に入らないとかそういう理由のある人ばかりだ。
「すごい…精密だねー」
俺の持つ手帳をひょいっと覗き込んだネルバは、キラキラとした目で俺を見つめてきた。
「ハルってそんな事もできるんだな」
俺の前を歩いているジーラルは、感心した様子でそう声をかけてきた。
本来なら盾使いというのはパーティーの一番前を歩くものなんだが、ノートに記入している俺が一番無防備だからと俺の前を歩いてくれているんだよな。
「これはできたらかなり便利だぞ?」
ダンジョンだけじゃなく採取地や初めての街でも役に立つ技術だと伝えれば、二人は興味を持ったようだ。
「えー俺も勉強しようかなー?」
「良いんじゃないか」
「ハル、これってどうやって距離を決めてるの?」
「歩数で測ってる」
「あ、そういう事か」
わいわいと記入のコツを話しながら歩いていると、ジーラルがバッと盾を構えた。背中に背負っていた筈の盾を構えるまでに、ほんのわずかな時間しかかからなかった。
「前方、ウルフ系二頭!」
俺の気配探知にかかるよりも前に、ジーラルはそう呟いた。
「ジーラル、さすがの気配探知だねー」
「褒めてくれてありがとよ」
ジーラルが照れくさそうにお礼を言った瞬間、俺も気配に気づいた。
「これは…岩石ウルフか」
岩石ウルフは、名前の通り見た目が岩石の塊にしか見えないウルフ種の魔物だ。何も知らない人が見ればゴーレムと間違えるかもしれない。そういわれるぐらいゴツゴツとした見た目で、首以外は人型に近い形をしている。
「岩石ウルフ…そこまで分かるのもすげぇな」
「いや、ジーラルの方が遠くから気付けていただろう」
そう返しながら、俺はもっと気配探知の腕前を磨かなければ駄目だなと考えていた。
「岩石ウルフかーじゃあジーラルは初撃だけ防いでくれる?そこを俺とハルで攻撃するねー」
「分かった」
「ああ、まかせてくれ」
俺はさっと手帳をしまうと、腰の剣を抜き放った。
驚くべき速度で近づいてきた二頭の岩石ウルフは、止まる気配も見せずに全力でこちらに飛び掛かってきた。ゴーレムのような手だが、その鋭い爪だけはウルフ種の特徴を残したものだから余計に質が悪いんだよな。
二頭の全力の攻撃はジーラルの盾にぶつかり、ガキンとものすごい音を立てた。だがジーラルは、一歩も引かずに二頭の攻撃を弾き返した。
俺とウィルが攻撃しやすいようにと考えてか、思いっきり弾き飛ばしてくれたおかげで隙ができたな。
だっと駆け出したウィルは、躊躇なく右の岩石ウルフに向かう。それなら俺は左だな。
一瞬で体勢を戻した魔物がこちらを向く前に、抜いていた剣を振りぬく。岩石ウルフの弱点は胸の辺りにある魔石だ。一瞬だけ光を反射したそこだけを狙った攻撃は、狙いを違わずに魔石を貫いた。
ふうと息を吐いてから振り返れば、ウィルも笑顔でこちらを見ていた。
「うわーはやっ」
「ウィルもハルも、的確な一撃だな」
「すごいすごい!」
「さすがウィル隊長とハロルド様ですね」
口々に褒めてくれる四人に、俺とウィルは笑いながら答えた。
「岩石ウルフはB級だからね。手間取るわけにはいかないよー」
「そうだな。魔石も分かりやすかったし。それより俺はジーラルの隙を作る返し方がすごいと思ったよ」
心からの誉め言葉だったんだが、ジーラルには苦笑されてしまった。
「いや、あの魔石は分かり難いだろ。返し方を褒めてくれたのは嬉しいが、どうやって見分けてるんだ?」
「えー、だって色が違うでしょ?ばっちり色の違いが見えたからそこを狙ったけどー?」
ウィルの言葉に、ネルバとジーラルは顔を見合わせた。
「出たよ、隊…リーダーの目の良さ!」
今一瞬だけ隊長って言いかけてたな。そう思って視線を向ければ、ジーラルはウィルに軽く睨まれていた。ダンジョン内では間違えるなと言いたいんだろうな。言葉にせずに叱られたジーラルは、すみませんと視線だけで謝罪を返している。
「じゃあ、ハルは?」
「一瞬だけ光を反射したからそこを狙ったよ。俺はウィルほど、目が良いってわけじゃないからな」
「いやいや、あの一瞬でそれに気付けたなら、十分目は良いだろ」
呆れ顔のダンの言葉に、ジーラルとネルバ、そしてクレットはうんうんと頷きを返した。
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