生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1241.先行部隊の帰還

 窓枠ごしに見える青空が、うっすらと赤く染まっていく。青から紫、ピンク色から赤へのグラデーションだ。綺麗な夕焼けを、俺は一人でぼんやりと眺めていた。

 今俺がいるのは、領主城の俺達の部屋だ。

 ラスさんと料理をしている間は大丈夫だったんだけどね、一人で部屋に戻ったらやっぱりどうしてもハルの事を考えちゃうんだよね。

 とは言っても、ハルが出発したすぐ後みたいに、ソワソワしちゃって心配が止まらないって感じでもないんだよね。

 これはきっと、いや確実にラスさんのおかげだ。

 早く帰って来ないかなーとか、あの料理喜んでくれるかなーとか、そんな風に前向きに考えられるようになってるから。

 気持ちが前向きになってるなら、読書はどうかなとも思ったんだよ。色んな本を取り出してはペラペラと捲ってみたりもしたんだけどね。

 でも、やっぱりどの本にも集中できなかったんだ。

 だから本を読むのはきっぱり諦めて、窓からの景色を眺めてたんだ。

 この部屋の窓からは、綺麗に花の咲いている木や、果物のなっている木なんかが見えるんだよね。その花の蜜や果物目当ての、鳥や小動物がやってきたりもするんだよ。

 さっきまでは名前の分からない鳥が二羽並んで枝に止まっていて、綺麗なさえずりを聞かせてくれてたんだ。

 あまりに綺麗な鳴き声だったから、キースくんから借りてる鳥や小動物の図鑑を隅々まで見たんだけどね。残念ながら種類は分からなかった。

 恋人同士なのか、それとも夫婦なのかなーなんて考えながら二羽のやりとりを眺めてたんだけど、日が暮れる前に二羽揃って帰っていっちゃった。

 もし今度また来てくれたら、その時はハルに何ていう鳥か聞いてみようかな。ハルなら知ってると思うんだよね。

 そんな事を考えていると、不意に部屋のベルが鳴った。防音結界のある部屋にも、内部に音を届けられるというあの魔道具だ。

 だから声に出して答えても聞こえないのは分かってるんだけど、思わずはーいと答えてしまうのはなんでだろう。

 バタバタと小走りで近づいて慌ててドアを開ければ、そこには今日もビシッと背筋を伸ばした執事長のボルトさんの姿があった。

「アキト様、ウィリアム様とハロルド様が参加されている先行部隊がお帰りになったようだと一報が入りました」
「え…?」

 お帰りになったようだって…どういう事?ハルからもうすぐ帰り着くよって連絡があったわけじゃないの?と思わず首を傾げたら、察しの良いボルトさんはすぐに答えを教えてくれた。

「領主城の一番高い場所には、常に見張りを担っている者がおりまして、その者からの報告が入りました。参加者の皆様に目立った怪我は無いご様子だという事と、今は森の入口の辺りだとの事でした」
「っ!もう帰ってきたんですか?」

 思わず勢い込んでそう尋ねれば、ボルトさんはにっこりと優しく微笑んで頷いてくれた。

「はい。もうまもなくお帰りになられます。アキト様、よろしければ玄関までお出迎えにいかれませんか?」
「もちろんっ!行きたいです!」

 考える間もなく即答した俺に、ボルトさんはそれでは私もご一緒してもよろしいでしょうかと笑いかけてくれた。



 ボルトさんの案内で最短ルートを通って辿り着いた玄関前には、既にメイドさんや侍従さんたちを始めとした使用人さんたちがずらりと並んで待機していた。

 おお、圧巻のお出迎え体勢だ。

 圧倒されるぐらいビシッと並んだ列の前へと、ボルトさんは当然のように堂々と進んでいった。一番前にすっと立ったボルトさんは、くるりとこちらを振り返って声をかけてくれた。

「アキト様、どうぞこちらへ」
「はい」

 ボルトさんの隣に並ばせてもらって、俺はその瞬間をじっと待った。

 しばらくすると、玄関の扉がゆっくりと開いていく。どうやら玄関の外には、メイド長のリモさんが待機してくれていたみたいだ。

 リモさんの案内で、先行部隊のみんなが中へと進んでくる。

 ウィリアムさん、ハル、それにジーラルさんと、ネルバさん、それにダンさん。みんな元気そうだし、全員がホッとした様子で笑顔を浮かべていた。

 ああ、良かった。
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