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1243.食事のお誘い
お出迎えにきてくれた使用人さんたちも、解散となるとすぐにそれぞれの持ち場へと戻っていった。使用人さんたちはみんな真面目だし常に忙しそうだ。
でもそんな忙しいなかでも、わざわざ時間を割いてお出迎えに来てくれたんだろうな。
そんな事を考えていると、ハルの手がきゅっと俺の手を握った。
ただそれだけの触れ合いが嬉しくて、思わずハルを見上げて笑みを浮かべてしまう。
無事で良かったと考えながらきゅっきゅっと何度も握り返していると、不意にウィリアムさんが俺とハルの方をちらっと見た。
あ、手を繋いでるのもばれちゃったな。まあここにいるのはもうウィリアムさんとボルトさんだけだから良いか。
「ハルとアキトくんは…」
「ウィリアム様」
何かを言いかけたウィリアムさんを遮るように、ボルトさんが声をかけた。領主一家の誰かの言葉を遮るようにするボルトさんなんて、初めて見たな。これはきっとうっかりとかじゃなく何か意味があっての行動だと思う。
そんな事を考えながらじっと二人を見守っていると、ボルトさんはウィリアムさんに顔を近づけて耳元で何かを囁いた。俺とハルには何を言ったのか全く分からなかったけど、ウィリアムさんはなるほどとひとつ呟いた。
「…ウィル兄?」
怪訝そうに尋ねたハルに、ウィリアムさんはにっこりと笑って答えた。
「いや、なんでもないよ。俺はこれからジルの所に行くからー二人はのんびりしてねー」
明日の報告会にはハルも参加してねと言い置いて、ウィリアムさんはボルトさんと一緒にすぐに歩き出した。
廊下を進んで背中が見えなくなるまで見守ったハルは、不思議そうに首を傾げた。
「いつもは食事に誘ってくるのに…今日は誘わないんだな?」
アキトと二人きりになれるなら文句は無いけど――珍しいなと呟いたハルの言葉に、俺はボルトさんが何を囁いたのかを何となく理解した。
ラスさんと二人で使わせてもらったあの使用人さん用の厨房は、ボルトさんに使用許可の書類を提出するものだって言ってた気がする。
そこから推理したのか、いやでももしかしたら、ラスさん本人から聞いたっていう可能性もある…かな。ボルトさんとラスさんって、何か仲良しなんだよね。仲良しというか対等に言い合いしてるのを何度か見た事がある。
きっとボルトさんは俺がハルのために料理を用意してるって事に気づいていて、わざとウィリアムさんの言葉を遮ってくれたんだと思う。
このタイミングで、ウィリアムさんがハルと俺を食事に誘うって知ってたから。そして誘われたハルは、当然だけど俺が料理をして待ってるなんて思ってもみないから快諾するもんね。
今度会ったら、ボルトさんにお礼を言わないと駄目だな。ちゃんと覚えておこう。
そう決意してから、俺はハルの手をくいっと引っ張った。
「ハル、お腹空いてる?」
「ああ、そうだな。だいぶ空いてるね」
森の入り口で軽く食べた後は何も食べてないとすぐに答えてくれたハルに、俺は小さな声で話しかける。
「えっと…ラスさんに教えてもらいながら、俺が一人で作った料理があるんだ。作り方はきっちり守ったから、きっとちゃんと美味しいと思うんだけど…でも、ラスさんが作るのほど美味しいとは思えなくて…」
あー駄目だ。ちゃんとした手料理を誰かに食べてもらうのなんか初めてだから、何を言えば良いのか分からなくなってきた。
「でも、よければハルの事を考えながら作ったから、ハルに食べて欲しい!」
両目をきつく瞑ってそう言いきったけど、ハルは何も答えなかった。あれ、手料理とか食べたくないってタイプじゃなかったよね?とそっと目を開けば、ハルは額に手を当てて天井を見上げていた。
「…ハル?」
「あ、ごめん。えっと…感動してた」
「感動?」
感動するような事、今あった?と首を傾げた俺に、ハルはまるで花が綻びるような見事な笑みを浮かべた。すごい、キラキラ度がいつもよりもさらに高い。目が潰れそうだ。
「出迎えに来てくれたのがすごく嬉しかったし、人目も気にせずに抱きしめてくれてさらに幸せでだった。手を繋いでもニコニコ笑顔を返してくれたよね」
「う、うん」
人目も気にせずには思い出させないで欲しかったけど、それは確かに事実だと頷けばハルは本当に幸せそうに続けた。
「さらに俺がいない間に、俺の事を考えて俺のために料理を作ってくれてたなんて…嬉しいに決まってるでしょう?」
でもそんな忙しいなかでも、わざわざ時間を割いてお出迎えに来てくれたんだろうな。
そんな事を考えていると、ハルの手がきゅっと俺の手を握った。
ただそれだけの触れ合いが嬉しくて、思わずハルを見上げて笑みを浮かべてしまう。
無事で良かったと考えながらきゅっきゅっと何度も握り返していると、不意にウィリアムさんが俺とハルの方をちらっと見た。
あ、手を繋いでるのもばれちゃったな。まあここにいるのはもうウィリアムさんとボルトさんだけだから良いか。
「ハルとアキトくんは…」
「ウィリアム様」
何かを言いかけたウィリアムさんを遮るように、ボルトさんが声をかけた。領主一家の誰かの言葉を遮るようにするボルトさんなんて、初めて見たな。これはきっとうっかりとかじゃなく何か意味があっての行動だと思う。
そんな事を考えながらじっと二人を見守っていると、ボルトさんはウィリアムさんに顔を近づけて耳元で何かを囁いた。俺とハルには何を言ったのか全く分からなかったけど、ウィリアムさんはなるほどとひとつ呟いた。
「…ウィル兄?」
怪訝そうに尋ねたハルに、ウィリアムさんはにっこりと笑って答えた。
「いや、なんでもないよ。俺はこれからジルの所に行くからー二人はのんびりしてねー」
明日の報告会にはハルも参加してねと言い置いて、ウィリアムさんはボルトさんと一緒にすぐに歩き出した。
廊下を進んで背中が見えなくなるまで見守ったハルは、不思議そうに首を傾げた。
「いつもは食事に誘ってくるのに…今日は誘わないんだな?」
アキトと二人きりになれるなら文句は無いけど――珍しいなと呟いたハルの言葉に、俺はボルトさんが何を囁いたのかを何となく理解した。
ラスさんと二人で使わせてもらったあの使用人さん用の厨房は、ボルトさんに使用許可の書類を提出するものだって言ってた気がする。
そこから推理したのか、いやでももしかしたら、ラスさん本人から聞いたっていう可能性もある…かな。ボルトさんとラスさんって、何か仲良しなんだよね。仲良しというか対等に言い合いしてるのを何度か見た事がある。
きっとボルトさんは俺がハルのために料理を用意してるって事に気づいていて、わざとウィリアムさんの言葉を遮ってくれたんだと思う。
このタイミングで、ウィリアムさんがハルと俺を食事に誘うって知ってたから。そして誘われたハルは、当然だけど俺が料理をして待ってるなんて思ってもみないから快諾するもんね。
今度会ったら、ボルトさんにお礼を言わないと駄目だな。ちゃんと覚えておこう。
そう決意してから、俺はハルの手をくいっと引っ張った。
「ハル、お腹空いてる?」
「ああ、そうだな。だいぶ空いてるね」
森の入り口で軽く食べた後は何も食べてないとすぐに答えてくれたハルに、俺は小さな声で話しかける。
「えっと…ラスさんに教えてもらいながら、俺が一人で作った料理があるんだ。作り方はきっちり守ったから、きっとちゃんと美味しいと思うんだけど…でも、ラスさんが作るのほど美味しいとは思えなくて…」
あー駄目だ。ちゃんとした手料理を誰かに食べてもらうのなんか初めてだから、何を言えば良いのか分からなくなってきた。
「でも、よければハルの事を考えながら作ったから、ハルに食べて欲しい!」
両目をきつく瞑ってそう言いきったけど、ハルは何も答えなかった。あれ、手料理とか食べたくないってタイプじゃなかったよね?とそっと目を開けば、ハルは額に手を当てて天井を見上げていた。
「…ハル?」
「あ、ごめん。えっと…感動してた」
「感動?」
感動するような事、今あった?と首を傾げた俺に、ハルはまるで花が綻びるような見事な笑みを浮かべた。すごい、キラキラ度がいつもよりもさらに高い。目が潰れそうだ。
「出迎えに来てくれたのがすごく嬉しかったし、人目も気にせずに抱きしめてくれてさらに幸せでだった。手を繋いでもニコニコ笑顔を返してくれたよね」
「う、うん」
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