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1244.珍しいハル
嬉しそうに笑うハルと手を繋いだまま、俺は今領主城の廊下をゆっくりと歩いている。目的地はひとまず俺達の部屋だ。
帰ってきたばかりだし、まずは一度部屋に戻って荷物とかを置きたいよねって話になったんだ。
隣を歩いているハルは、もしかしたらもうすぐ鼻歌でも歌いだすんじゃないかな。そんな風に思ってしまうぐらいに、楽しそうな表情を浮かべている。
俺がハルのために料理をしたって知っただけで、この反応だもんな。こんなに喜んでくれるなら…もっと早くハルのために何か作れば良かったな。
料理の腕に自信が無さすぎて、ついつい先延ばしにしてたんだよね。でもハルなら、例えそれがどんな簡単な料理でも喜んでくれたのかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、不意に警備の人から声がかけられた。
「おかえりなさいませ、ハロルド様」
領主城内の主要な廊下には、一定間隔で警備の人が立ってるんだ。俺達が普段よく使う廊下にはいないんだけど、今移動中のここは玄関から通じる一番大きな廊下だからね。
警備の人は正装をした騎士さんの時もあれば、侍従さんの時もある。今日はどうやら侍従さんの時間みたいだ。
ハルは一瞬で表情を引き締めると、堂々とした態度で答えた。
「ああ、今帰った」
「ご無事で何よりです」
「ありがとう。他のみんなも、特に怪我もなく全員無事だよ」
「そうですか。それは良かったです。他の使用人たちにも伝えてよろしいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「ごゆっくり体を休めてください」
「そうするよ、ありがとう」
さっきまでの浮かれた様子を一瞬で綺麗に消して、その上これだけの会話ができるハルってやっぱりすごいな。
その後も何度か声をかけられては、ハルが答えるのを繰り返した。その間だけはキリッとした顔をするんだけど、警備の人に背中を向けて歩き出すとホニャッとした笑顔になるんだよね。
あー可愛い。喜んでくれてるハルが本当に可愛い。
密かにトキメキながら廊下の角をいくつか曲がると、警備の人の姿もすっかり無くなった。後はもう少しまっすぐ行ってから、階段をあがれば俺達の部屋だ。
「あ、そうだ。後でボルトにはきちんと礼を言っておかないとな…」
不意にハルがそうつぶやいた。
あ、やっぱりハルも、俺と同じ答えに辿り着いたんだね。
「ボルトさんのさっきのあれって、俺の事を考えてウィリアムさんの言葉を遮ってくれたんだよね」
いや、正しくは俺の料理の事を考えて――かな。
「いや、それは違うだろう」
「違うかな?」
「ああ、俺がアキトの料理を食べさせてもらうためだから、どちらかというと俺のためじゃないか?」
真剣な表情でそう続けるハルに、俺は思わず笑ってしまった。そっか、それを自分のためって言ってくれるんだね、ハルは。
「ボルトの説明があったとはいえ、誘うのを諦めてくれたウィル兄にもちゃんとお礼を言っておきたいし…それに、そうだ!料理をしないかとアキトを誘ってくれた、ラスにもきっちりお礼を言わないと!」
いつもとは違うやけにはしゃいだハルの言動から、本当に喜んでくれているのが伝わってくる。
こんなに喜んでくれてもちろん嬉しいんだけど、でもちょっとだけ俺も緊張してきたな。期待されすぎて、ぐんぐんハードルが上がってる気がする。
ドキドキしながら自分たちの部屋の前まで辿り着くと、そこには二人のメイドさんが待ってくれていた。庭園でご飯をたべる会をした時に、庭園まで案内してくれたメイドさんたちだ。
二人は丁寧にハルの無事の帰還を喜ぶ言葉を告げてから、声を揃えて尋ねてきた。
「「ハロルド様、アキト様。本日はどちらでお食事にされますか?」」
基本的には俺とハルの食事は、家族がくつろぐためだという応接室で取るか、または広々とした――はたしてこの部屋を食堂って呼んで良いのか?って不安になるぐらい豪華な部屋で取るかのどちらかが多い。
その部屋を選ぶ理由は単純で、その二部屋だとハルの家族がたまに食事に参加してくれるんだよね。
忙しい人ばかりだからもちろん毎回ってわけにはいかないんだけど、時間が合うと一緒に食べて良いかなってお誘いが来るんだ。それが嬉しくて、ついつい選んじゃうんだよね。
ハルも家族を受け入れてくれて嬉しいって言って喜んでくれるから余計にね。
でも今日はハルに決めてもらいたい。俺はハルの顔をちらっと見た。
「ハルが決めて?」
「俺は今日は、アキトと二人きりで食べたいな」
「うん、じゃあそうしよう」
俺達の答えに、二人のメイドさんはぴったりと重なるようにしてお辞儀をしてくれた。
帰ってきたばかりだし、まずは一度部屋に戻って荷物とかを置きたいよねって話になったんだ。
隣を歩いているハルは、もしかしたらもうすぐ鼻歌でも歌いだすんじゃないかな。そんな風に思ってしまうぐらいに、楽しそうな表情を浮かべている。
俺がハルのために料理をしたって知っただけで、この反応だもんな。こんなに喜んでくれるなら…もっと早くハルのために何か作れば良かったな。
料理の腕に自信が無さすぎて、ついつい先延ばしにしてたんだよね。でもハルなら、例えそれがどんな簡単な料理でも喜んでくれたのかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、不意に警備の人から声がかけられた。
「おかえりなさいませ、ハロルド様」
領主城内の主要な廊下には、一定間隔で警備の人が立ってるんだ。俺達が普段よく使う廊下にはいないんだけど、今移動中のここは玄関から通じる一番大きな廊下だからね。
警備の人は正装をした騎士さんの時もあれば、侍従さんの時もある。今日はどうやら侍従さんの時間みたいだ。
ハルは一瞬で表情を引き締めると、堂々とした態度で答えた。
「ああ、今帰った」
「ご無事で何よりです」
「ありがとう。他のみんなも、特に怪我もなく全員無事だよ」
「そうですか。それは良かったです。他の使用人たちにも伝えてよろしいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「ごゆっくり体を休めてください」
「そうするよ、ありがとう」
さっきまでの浮かれた様子を一瞬で綺麗に消して、その上これだけの会話ができるハルってやっぱりすごいな。
その後も何度か声をかけられては、ハルが答えるのを繰り返した。その間だけはキリッとした顔をするんだけど、警備の人に背中を向けて歩き出すとホニャッとした笑顔になるんだよね。
あー可愛い。喜んでくれてるハルが本当に可愛い。
密かにトキメキながら廊下の角をいくつか曲がると、警備の人の姿もすっかり無くなった。後はもう少しまっすぐ行ってから、階段をあがれば俺達の部屋だ。
「あ、そうだ。後でボルトにはきちんと礼を言っておかないとな…」
不意にハルがそうつぶやいた。
あ、やっぱりハルも、俺と同じ答えに辿り着いたんだね。
「ボルトさんのさっきのあれって、俺の事を考えてウィリアムさんの言葉を遮ってくれたんだよね」
いや、正しくは俺の料理の事を考えて――かな。
「いや、それは違うだろう」
「違うかな?」
「ああ、俺がアキトの料理を食べさせてもらうためだから、どちらかというと俺のためじゃないか?」
真剣な表情でそう続けるハルに、俺は思わず笑ってしまった。そっか、それを自分のためって言ってくれるんだね、ハルは。
「ボルトの説明があったとはいえ、誘うのを諦めてくれたウィル兄にもちゃんとお礼を言っておきたいし…それに、そうだ!料理をしないかとアキトを誘ってくれた、ラスにもきっちりお礼を言わないと!」
いつもとは違うやけにはしゃいだハルの言動から、本当に喜んでくれているのが伝わってくる。
こんなに喜んでくれてもちろん嬉しいんだけど、でもちょっとだけ俺も緊張してきたな。期待されすぎて、ぐんぐんハードルが上がってる気がする。
ドキドキしながら自分たちの部屋の前まで辿り着くと、そこには二人のメイドさんが待ってくれていた。庭園でご飯をたべる会をした時に、庭園まで案内してくれたメイドさんたちだ。
二人は丁寧にハルの無事の帰還を喜ぶ言葉を告げてから、声を揃えて尋ねてきた。
「「ハロルド様、アキト様。本日はどちらでお食事にされますか?」」
基本的には俺とハルの食事は、家族がくつろぐためだという応接室で取るか、または広々とした――はたしてこの部屋を食堂って呼んで良いのか?って不安になるぐらい豪華な部屋で取るかのどちらかが多い。
その部屋を選ぶ理由は単純で、その二部屋だとハルの家族がたまに食事に参加してくれるんだよね。
忙しい人ばかりだからもちろん毎回ってわけにはいかないんだけど、時間が合うと一緒に食べて良いかなってお誘いが来るんだ。それが嬉しくて、ついつい選んじゃうんだよね。
ハルも家族を受け入れてくれて嬉しいって言って喜んでくれるから余計にね。
でも今日はハルに決めてもらいたい。俺はハルの顔をちらっと見た。
「ハルが決めて?」
「俺は今日は、アキトと二人きりで食べたいな」
「うん、じゃあそうしよう」
俺達の答えに、二人のメイドさんはぴったりと重なるようにしてお辞儀をしてくれた。
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