生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1253.今日の予定

 ソファに移動してあれこれと話しながらくつろいでいると、不意にハルが慌てた様子で口を開いた。

「あ!もうこんな時間なのか!」

 そう言うなり、ハルはテーブルに乗せてあった時計の魔道具をパッと手に取った。

 え、こんな時間?とそっとハルの手の中の魔道具を覗き込むと、そこに表示されていた時間に驚いてしまった。そんなに長い間喋ってた感じはしないんだけど、もうこんな時間なのか。

 ハルとのんびり過ごせるのが嬉しくて、ちょっとくつろぎ過ぎたかもしれない。

 たしかウィリアムさんは、今日の報告会は領主城の一室でやるって言ってた。だからまだ間に合うと思うんだけど、これはもしかしたら結構時間ギリギリかもしれない。

 ハルも俺と同じように考えたのか、慌てた様子でパッと立ち上がった。

 俺もさっとソファから立ち上がると、すぐさま魔力を練り始める。こちらを見たハルに向かって、歯磨きと洗顔代わりの浄化魔法をかける。

「ありがとう、アキト。助かるよ」

 服はくつろぐ前にちゃんと着替えてたから、そのままで大丈夫。後はちょっとだけ乱れていた髪の毛を優しく手で撫でつければ、ハルの報告会への出席準備は完了だ。

「これで身だしなみは大丈夫かな?」

 そう尋ねたハルに、俺は笑顔で答えた。

「うん、今日も格好良いよ」

 まさかそう返されるとは思ってなかったのか、ハルはクスリと嬉しそうに笑ってくれた。

「じゃあ、報告会にいってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
「終わったらアキトを探しに行くから、好きな場所にいてね」

 領主城と騎士団本部ならどこでも良いからねと言われた俺は、すぐに分かったよと笑顔で頷いた。わざわざ念を押されなくても、勝手に一人で街に出かけたりはしないけどね。

 でも俺が頷くだけでハルを安心させられるなら、何度でも頷くよ。

 笑顔で部屋から出ていくハルを、俺はひらひらと手を振って見送った。無事に報告会に間に合うと良いんだけど。まあ俺よりも城の中の最短ルートに詳しいハルなら、大丈夫…かな。

 さてこれからどうしようかな。ハルがいなくなっちゃったら、その後の予定がまるっと空いちゃうんだよね。

 まあでも、昨日と違ってハルがいる場所は同じ建物の中、領主城の一室だ。危険な場所に行ってるってわけじゃないから、無事かなって心配はしなくて良い。

 だから今日は、気楽な気分で何をしようかなって考えられる。

 うーん、今俺が一番したい事は何かな。

 あ、そうだ。ラスさんに昨日の報告とお礼が言いたいな。

 俺の作った料理をハルはすっごく喜んでくれましたって報告して、それで改めて料理を教えてくれてありがとうございましたってお礼を伝えたい。

 でもラスさんは…きっと今日は仕事だよね。あれだけ料理が大好きなラスさんが、二日連続でお休みをもらうって事は無いと思うんだ。

 仕事中って事は、きっと厨房にいけばラスさんに会う事はできる。できるだろうけど、厨房に部外者の俺が話をしに行くのは、調理の邪魔になるから却下だ。

 報告とお礼は、今度ラスさんに会えた時にしよう。

 昨日全然集中できなかったジルさんからの借り物の本を読むのも良いけど、今日は何となく外の空気を吸いたい気分だな。

 よし、それならまずはシュリくんの所に行こうかな。

 厩舎に行くまでの道のりは緑も綺麗だし、それなりに距離もあるから散歩にもなる。今日はまだ魔力を渡しに行ってないし、そういう意味でもちょうど良い。

 ささっと身支度を整えた俺は、いそいそと部屋を後にした。



 すっかり通い慣れた森の中を拓いた道を、ゆっくりと歩きながら厩舎を目指す。

 今日は天気も良くて、日が当たる場所を歩いていると少し暑いぐらいだ。でもたまに吹く風が涼しくて、すごく気持ち良い。

 楽しみながら歩いていくと、すぐに厩舎の建物が見えてきた。

「あ、アキト様だ」
「こんにちは」
「こんにちはー」

 厩舎の横にある放牧場にいた世話係の人たちが、口々にそう声をかけてくれる。周りで思い思いに過ごしている馬たちも、興味深そうにじっとこちらを見ている。

 俺は視線を感じつつ、手を振りながら答えた。

「こんにちはー」
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