生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,256 / 1,561

1255.予想外の展開

 優しい笑みを浮かべたクレットさんの顔を見ていると、ついつい何も考えずにこんにちはと返事を返したくなってしまうな。

 でも…ここでいきなり俺がクレットさんと普通に話し出したら、きっと皆はかなりびっくりするよね。俺以外にはクレットさんの姿は見えてないし、声も聞こえてないんだから。

 どうしようかなと考え込んだ俺の表情を見て、クレットさんは慌てた様子で口を開いた。

「あの、アキト様。無理をして返事をして頂かなくても大丈夫ですからね?」

 人がいる場所では返事が出来ない事もちゃんと分かってますからと、少し申し訳なさそうにクレットさんはそう付け足してくれた。

 俺の表情の変化だけで、そこまで気づいて先回りしてくれるんだ。さすが、気配りのできるクレットさんだな。

「アキトくん、どうしたの?」

 突然立ち止まった俺を不思議そうに見つめてくるキースくんに、考え事してるからちょっとだけ待ってねと声をかける。

 キースくんは分かったとすぐに頷いてくれた。こんな意味の分からない言葉にも素直に頷いてくれるんだ。本当にキースくんは良い子だな。

 うーん、でもよくよく考えてみれば、既に俺の幽霊が見える体質について、キースくんは知ってるんだよね。ハルの家族には体質についても…ああ、それに出身地についても何も隠してないから。

 ということは、今目の前に幽霊がいるんだって説明だけすれば、キースくんは突然俺が虚空を見つめながら話し出しても理解してくれるって事だよね。

 じゃああとは、この部屋にいるギュームさんとシュリくんにだけ説明すれば良いのか。

 さすがに信頼できない人に自分の体質について説明しようとは思わないけど、ギュームさんとシュリくんになら別に知られても問題ないと思う。

 それにね、俺の世界ではあり得ないと言われそうな能力でも、こちらの世界だと親から遺伝したスキルって伝えれば納得してもらえるってのも大きい。そんなスキルがあるんだーって珍しがられる事はあっても、否定はされないと思うんだよね。
 
 俺が異世界人な事はできるだけ隠してって言ってたハルも、幽霊の見える体質については俺が話したいと思う相手には言って良いよって言ってたからね。

 ハル本人に確認した事はないけど、幽霊が見える事自体はスキルだと思われれば問題ない。きっとそう考えてるんだと思う。

 でも、いったいどうやって切り出せば良いんだろう。少しでも驚かせない伝え方はどれだろうと何種類かを考えていると、ふとシュリくんの不自然な動きが目に止まった。

 さっきから静かだなと思っていたシュリくんは、無言のままじーっとクレットさんのいる辺りを見つめている。

 あれ?シュリくん、もしかしてクレットさんを…見てる?これってただの偶然?

 動物とかがじっとどこかを見つめる事がある――って話を聞いた事があるんだけど、あれは猫だったっけ?と考えていると、シュリくんがそっと口を開いた。

「アキト、そのひと、アキトのしりあいなの?」

 明らかに警戒しているシュリくんに、俺はドキドキしながら尋ねた。

「シュリくん、その人って…どんな人?」
「えっと、あかいかみの…そこのおとこのひとだよ」

 うん、これはちゃんとしっかり見えてるね。説明したわけでも無いのに、クレットさんの髪色まで当ててるもんね。

 突然そう言い当てられたクレットさんは、大きく目を見開いて固まっている。びっくりするよね。気持ちは分かる。

 そうだよと答えようとしたけれど、それよりも先にキースくんが答えた。

「シュリくん?ここには僕達以外は、誰もいないよ?」

 不思議そうに首を傾げたキースくんを、ギュームさんはさっと一瞬にして背中に庇った。シュリくんの視線の先を見て、場所を特定したんだろう。今はクレットさんを睨むようにしてギュームさんは立っている。

「魔道具で姿を隠した敵がいるという事ですか?」

 そう尋ねたギュームさんは、すぐに攻撃ができるように片手を前に突き出した状態だ。ハルと違って俺には魔力は見えないから分からないんだけど、これ多分魔力を練ってるよね。ギュームさんって魔法が使えるんだ。

 慌て過ぎて冷静になった頭の中の片隅で、そんな事をついつい考えてしまった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。