生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1256.説明を

 じーっとクレットさんを見つめ続けているシュリくんと、今にも魔法を放ちそうなギュームさん。キースくんは何も分からないながらも、背中に庇われている事に緊張した顔をしている。

 そんなぴりぴりとした緊迫感の漂う部屋の中を、俺はぐるりと見回してから口を開いた。

 全員に声をかけるのは当然だけど、やっぱり一番最初に声をかけるべきなのはギュームさんだよね。

「すみません、ギュームさん。後できちんと詳しい説明はしますが…シュリくんの視線の先にいる人は決して俺たちの敵ではありません」

 もし万が一、今すぐギュームさんが魔法を放ったとしても、クレットさんにその攻撃は一切通用しない。そもそも今のクレットさんには、実体が無いからね。だから怪我をする心配はしなくて良い。

 でも、もしかしたら…精神的には傷付くかもしれないよね。

 前から思ってたけど辺境領って、領主城の使用人さんと騎士団の騎士さんの距離が、かなり近いと思うんだ。

 まあ他の領がどうとかそういう詳しい事までは知らないから、ただの俺の予想なんだけど。

 でも少なくともトライプールでは、騎士さんと使用人さんが一緒にいるのをそもそも見た事がない。ハルが目を覚ましたあとしばらく騎士団本部にお世話になってたけど、あの時も本部には騎士さんしかいなかったもんな。

 だからこそ、騎士じゃないのに本部にいる俺に興味を持って、色んな人が見にきてたんだと思うんだよね。

 それと比べると、ここでは使用人さんも騎士さんも一緒にいる事が多い。それにお互いの名前や顔も把握してるのか、普通に名前を呼んで話してる所もよく見かける。

 だからクレットさんとギュームさんも、知り合いの可能性が高いと思うんだ。

 クレットさんはそんな相手に攻撃されたくなんてないだろうし、ギュームさんも知り合いと気づかずに攻撃するなんて嫌だろう。

「どうか攻撃はせずに、まずは俺の説明を聞いてもらえませんか?」

 そう続ければ、ギュームさんはじっとまっすぐに俺の目を見つめ返してきた。俺が本心からそう言ってるのかと、確認するかのような真剣な表情だった。

 こんな一方的な説明ですぐに納得してもらえるとは思えないけど、俺もその目をまっすぐ見返す。

 ひとまず攻撃だけやめてくれれば、それで良い。

 どうかお願いしますと念じながら見つめ合っていると、不意にギュームさんはそっと手を下ろしてくれた。

「分かりました。アキト様がそこまで言うなら…危険は無いと信じます」

 ですが説明はお願いしますねと続けたギュームさんに、俺はもちろんですとすぐに答えた。

「…俺のために必死になってくださり、本当にありがとうございます」

 小さな声でぽつりと感謝の言葉を告げたクレットさんは、俺に向かって深々と頭を下げた。

 ああーそんな顔されるとすっごく声に出して返事したくなっちゃうけど、今はみんなへの説明が先だよね。

 気にしなくて大丈夫ですと視線だけで伝えてから、俺は次にシュリくんに視線を向ける。

「あのね、シュリくん。たしかにこの人は俺の知り合いだよ。それにハルも信頼している相手なんだ」
「え、そうなの?」
「うん、本当だよ。最近もたくさん助けて貰ったし…」
「んー…それって、ハルがアキトにちかづけたくないひとじゃない…ってことだよね」
「そうだね。ハルに頼りになるって紹介されたぐらいだから」
「そっか、わかった」

 ハルがそう言うならと、シュリくんはひとまずクレットさんから視線を反らしてくれた。これでシュリくんも大丈夫そうだな。

「えーっと…アキトくん?」

 最後になってしまったけど、戸惑ってるキースくんにもちゃんと説明しないとな。

「キースくん、待たせてごめんね。とりあえずいますぐに危険な事は無いから、肩の力は抜いてもらって大丈夫だよ」
「ん、分かった」

 素直に頷いてくれたキースくんは、すぐに肩の力を抜いてくれた。

「今からみんなにもちゃんと説明するけど、キースくんは知ってる俺の体質が関係する話なんだ」

 そう短く説明すれば、キースくんはあっと小さく声をあげた。そして次の瞬間には、パッと両手で自分の口を押さえた。

 うっかり俺の体質をばらさないように、したかったんだろうな。真剣な表情で両手で口を押さえるというすごく可愛い方法に、すこしだけ和んでしまった。
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