生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1258.クレットさんとギュームさん

 そこにいる幽霊はクレットさんだと俺が認めた瞬間、ギュームさんは一瞬にして明らかにホッとした表情に変わった。見て分かるぐらい肩の力が抜けた上に、顔にはうっすらと笑みまで浮かんでいる。

「アキト様が問題ないと断言した理由が、いまやっと分かりました。クレットなら、うちの領や私たちに害を及ぼす事は、絶対に無いですからね」

 あっさりとそう言いきったギュームさんの、クレットさんへの信頼が厚い。

「信じてもらえて嬉しいよ、ギューム」

 笑顔でそう返したクレットさんの言葉を伝えれば、ギュームさんはすこしだけ切なそうに笑いながら、今でもあなたの事は信じてますからねと言いきった。

 うん。やっぱり俺の予想通り、ギュームさんとクレットさんは知り合いだったね。

 それに会話の感じからして、二人はかなり仲が良かった…のかもしれない。

 さすがに無理に聞き出したりするつもりはないけどね。そう思いながら二人のやりとりを見守っていると、不意にギュームさんがパッとこちらを見た。

「騎士には珍しく、クレットは花を見るのが好きな人なんです」
「え、珍しいんですか?」

 城や騎士団本部の色んな場所にさりげなく植えられている花は、どれもすごく生き生きしていて綺麗なんだよね。それも領主城の庭師の人たちが植えてるって話は、俺も聞いた事があるんだけど。

「あんなに綺麗なのに…」
「ありがとうございます。庭師に代わってお礼を言わせて頂きますね」

 思わずこぼした俺の言葉に、ギュームさんは嬉しそうに笑ってくれた。

「俺以外にも花を好きな人もいましたよ。ただ騎士の間では、花が好きだと言うのが恥ずかしいと隠す人が多かっただけです」

 クレットさんは懐かしそうに遠くを見つめながら、そう教えてくれた。

 ああ、なるほど。花が好きだけどそれを周りに言えない騎士さんもいるのか。そんな中でも、クレットさんは隠さずに花を愛でれる人だったと。隠すよりも堂々としてる方がむしろ格好良い気がするんだけど。

「クレットは、植え替えた花壇の花にもすぐに気づいてくれるんですよ。そして感想を言いに、わざわざぺスカに会いに来てくれていました」

 ぺスカさんってのは、たしかギュームさんの伴侶の庭師さんの名前だよね。そっか、クレットさんとぺスカさんは花好きとして仲良くしてて、ギュームさんはぺスカさんの伴侶だから仲良くなったのか。

「庭園にもよく来ていたので、クレットとは仲良くさせてもらってたんです」
「あ、庭園と言えば…。アキト様…もしよければ、あの庭の植え替えは本当に見事だったと伝えてもらっても?」
「もちろん、ちゃんと伝えますよ」

 クレットさんにそう答えれば、ギュームさんはじっとこちらを見ていた。

「…クレットは何と?」
「庭の植え替えは、本当に見事だったと伝えて欲しいって言ってます」
「それは嬉しいですね…ぺスカにも伝えてあげたいくらいです」

 きっと喜ぶでしょうねと口にしたギュームさんは、俺の体質について話して良いかとは聞いてこなかった。きっと気を使ってくれてるんだろうな。

「あの、ギュームさん。俺の体質については、ぺスカさんにも伝えてもらっても良いですからね?」
「……本当に良いんですか?」
「はい。伴侶に秘密にしてもらうほどの大事では無いですから」
「…ありがとうございます。ではクレットの先ほどの言葉も伝えさせて頂きます」

 もちろんきっちり口止めもしておきますからと、クレットさんはそう続けた。

「特にあの小さな花ばかり集まってる場所が、一番好きだったな。私の好きなコトゥリスの花もあったね…」

 あそこにあった小さな花の中に、そんな名前の花があったんだ。そう思いながらもそのままの言葉を伝えれば、ギュームさんは大きく目を見開いて固まった。

 あれ…?今の言葉にそんなに驚くような所ってあったかな?

「ギューム、大丈夫?」
「どうしたの?」

 静かに俺達の会話を聞いていたキースくんとシュリくんも、思わずそう尋ねるぐらいに驚いた様子だった。

「…大丈夫です。すみません。アキト様の能力を疑っていたわけでは決して無いんですが…クレットは本当にそこにいるんだなと実感してしまって…」

 衝撃を受けたんですと、ギュームさんはそう続けた。

「ギューム…」
「さきほどの会話に出てきたコトゥリスという名前を知ってるのは、俺とぺスカ以外だとクレットだけでしょうから」
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