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1259.コトゥリス
ギュームさんの説明によると、そもそもさっきクレットさんが言ったコトゥリスという名前の植物は図鑑にも載っていないものらしい。
「え、載っていないんですか?」
庭師のぺスカさんが育ててるなら、有名な花なのかなと勝手に思ってたよ。
あ、でもそういえば庭園には珍しいものがたくさん植えられてるし、どんどん増えてるってハルが言ってたな。うちの庭師は危険な品種は植えない筈だって言ってたから、鑑定したものを植えてるとかなのかな。
「ええ、コトゥリスという名前は載っていませんね。トゥリスなら載ってるんですけどね」
なんでもそのトゥリスという名前の植物は、ごく一部の森にだけ自生しているらしい。大振りな赤い花を咲かせるのが特徴で、その華やかさから商人や貴族の間で特に人気があるんだって。
森から採取してくるのすら難しい植物だけど、それを人間の手で育てるとなると難易度がさらにぐっと上がってしまうそうだ。
「水の量はもちろんですが、土の質や肥料の種類、日のあたり具合まで…それはもう次々と問題が起きるんです」
もちろん植物にはそういう細かい好みを持っているものも多いですが、と前置きをしてからギュームさんは続けた。
「そんな好みの細かい植物と比べても、段違いの数の問題が起きるのがそのトゥリスでした」
最初は張り切っていた庭師さんたちもどんどん諦めていって、それでも諦められなかったのがぺスカさんだったらしい。
ひっそりと世話をし続けたおかげで何とか花が咲くところまでは持っていけたらしいけど、咲いたのははあまりにも小さな花で色も違っていたらしい。
「もちろんその花も可愛らしいと私も何度も言いましたが、ぺスカは確かに可愛いがトゥリスとは呼べないと悲しんでいたんです」
なるほど。ぺスカさんからすれば大ぶりな花を咲かせて欲しかったのに、どうやっても小さな花しか咲かなかったって事か。
「そんな時に、偶然クレットさんが来てその花を褒めてくれたんです。鮮やかな空色で爽やかな花じゃないかって」
へぇ、赤い大ぶりな花じゃなくて、鮮やかな空色の小さな花なのか。
ハルとクレットさんと一緒に見たあの小ぶりな花を集めた庭園には、たくさんの花が咲いてた。
だから今の今まで、どの花の話なのか全く分かってなかったんだけど、何となくその説明で分かったよ。
あの可愛らしい空色の花か。曇り空でも青空を思い出させてくれる花だなって思ったから、俺も覚えてるよ。
「ぺスカはありがとうと告げてから、でもそれはトゥリスとは呼べないんだと寂し気に返しました」
花の大きさも色も違うんだから別物だと言うぺスカさんに、クレットさんは笑顔で提案したらしい。
「それなら小さいトゥリスで、コトゥリスと呼ぶのはどうだろう?って言ってくれたんです」
なるほど小さいトゥリスで、コトゥリスか。
「新しい名前を付けてくれたんですね」
「ぺスカはその名前とクレットの気持ちが嬉しかったと、ずっと大事に増やし続けてきたんです」
誇らし気にそう続けたギュームさんに、俺は綺麗な花でしたもんねと返した。
「僕もそのコトゥリスってお花見てみたいなー」
「ぼくもみたい」
楽し気にニコニコと笑い合うキースくんとシュリくんに和んでいると、不意に小さな声が聞こえてきた。
「ああー…」
パッと視線を向けてみれば、クレットさんが恥ずかしそうに呻いていた。
「そんな些細なやり取りを覚えてくれていたのはすごく嬉しいけど…あまりに単純な名づけで申し訳なくなる…」
ただの思いつきだったのにと、片手で顔を隠して照れている姿は何だか可愛らしい。
ハルや領主一家の誰かの近くにいる時のクレットさんは、騎士らしい言動が多くて背筋も伸びていてピシッとしている。
でもギュームさんの前でのクレットさんは、かなり自然体だ。これがクレットさんの友人に見せる顔なんだろうな。
「クレットが何か言っているんですか?」
「えっと…覚えてくれていたことは嬉しいけど、思いつきの単純な名づけすぎて恥ずかしいと言ってます」
「そうですか…申し訳ないけど、今さら名前を変えるのは無理だよ」
ぺスカも私もその名前を気に入っているからねと、クレットさんのいる方向を見ながらギュームさんはにっこりと笑みを浮かべた。
「え、載っていないんですか?」
庭師のぺスカさんが育ててるなら、有名な花なのかなと勝手に思ってたよ。
あ、でもそういえば庭園には珍しいものがたくさん植えられてるし、どんどん増えてるってハルが言ってたな。うちの庭師は危険な品種は植えない筈だって言ってたから、鑑定したものを植えてるとかなのかな。
「ええ、コトゥリスという名前は載っていませんね。トゥリスなら載ってるんですけどね」
なんでもそのトゥリスという名前の植物は、ごく一部の森にだけ自生しているらしい。大振りな赤い花を咲かせるのが特徴で、その華やかさから商人や貴族の間で特に人気があるんだって。
森から採取してくるのすら難しい植物だけど、それを人間の手で育てるとなると難易度がさらにぐっと上がってしまうそうだ。
「水の量はもちろんですが、土の質や肥料の種類、日のあたり具合まで…それはもう次々と問題が起きるんです」
もちろん植物にはそういう細かい好みを持っているものも多いですが、と前置きをしてからギュームさんは続けた。
「そんな好みの細かい植物と比べても、段違いの数の問題が起きるのがそのトゥリスでした」
最初は張り切っていた庭師さんたちもどんどん諦めていって、それでも諦められなかったのがぺスカさんだったらしい。
ひっそりと世話をし続けたおかげで何とか花が咲くところまでは持っていけたらしいけど、咲いたのははあまりにも小さな花で色も違っていたらしい。
「もちろんその花も可愛らしいと私も何度も言いましたが、ぺスカは確かに可愛いがトゥリスとは呼べないと悲しんでいたんです」
なるほど。ぺスカさんからすれば大ぶりな花を咲かせて欲しかったのに、どうやっても小さな花しか咲かなかったって事か。
「そんな時に、偶然クレットさんが来てその花を褒めてくれたんです。鮮やかな空色で爽やかな花じゃないかって」
へぇ、赤い大ぶりな花じゃなくて、鮮やかな空色の小さな花なのか。
ハルとクレットさんと一緒に見たあの小ぶりな花を集めた庭園には、たくさんの花が咲いてた。
だから今の今まで、どの花の話なのか全く分かってなかったんだけど、何となくその説明で分かったよ。
あの可愛らしい空色の花か。曇り空でも青空を思い出させてくれる花だなって思ったから、俺も覚えてるよ。
「ぺスカはありがとうと告げてから、でもそれはトゥリスとは呼べないんだと寂し気に返しました」
花の大きさも色も違うんだから別物だと言うぺスカさんに、クレットさんは笑顔で提案したらしい。
「それなら小さいトゥリスで、コトゥリスと呼ぶのはどうだろう?って言ってくれたんです」
なるほど小さいトゥリスで、コトゥリスか。
「新しい名前を付けてくれたんですね」
「ぺスカはその名前とクレットの気持ちが嬉しかったと、ずっと大事に増やし続けてきたんです」
誇らし気にそう続けたギュームさんに、俺は綺麗な花でしたもんねと返した。
「僕もそのコトゥリスってお花見てみたいなー」
「ぼくもみたい」
楽し気にニコニコと笑い合うキースくんとシュリくんに和んでいると、不意に小さな声が聞こえてきた。
「ああー…」
パッと視線を向けてみれば、クレットさんが恥ずかしそうに呻いていた。
「そんな些細なやり取りを覚えてくれていたのはすごく嬉しいけど…あまりに単純な名づけで申し訳なくなる…」
ただの思いつきだったのにと、片手で顔を隠して照れている姿は何だか可愛らしい。
ハルや領主一家の誰かの近くにいる時のクレットさんは、騎士らしい言動が多くて背筋も伸びていてピシッとしている。
でもギュームさんの前でのクレットさんは、かなり自然体だ。これがクレットさんの友人に見せる顔なんだろうな。
「クレットが何か言っているんですか?」
「えっと…覚えてくれていたことは嬉しいけど、思いつきの単純な名づけすぎて恥ずかしいと言ってます」
「そうですか…申し訳ないけど、今さら名前を変えるのは無理だよ」
ぺスカも私もその名前を気に入っているからねと、クレットさんのいる方向を見ながらギュームさんはにっこりと笑みを浮かべた。
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